ネ バ ー エ ン  #5






(パン買った、パスタ買った、缶詰買った、小麦粉買った、バター買った、牛乳買った、ホウレン草買った、トマトがオマケでついてきた。あと何だっけ)
 ガサガサと大きな紙袋抱えて購入した物を頭の中で反芻する。『黒髪ツンツン頭の日本人の少年』はこの辺りの商店街ではすでに顔馴染みとなっており、年齢の事も踏まえて随分と嬉しいオマケもしてもらえるようになっていた。ちなみに本日は缶詰購入時にもう一缶ついてきたし、またホウレン草購入時には量が1.2倍で更にトマトが一個サービスだった。
 黒髪ツンツン頭の日本人の少年こと『必要悪の教会ネセサリウス』所属の非魔術師・上条当麻は週一、二回のペースで実施するこの買い出しに忘れ物がないか、紙袋の中身を覗きこみながらチェックする。(本日使用しない物ならば)別に買い忘れがあってもまた来ればいいだけなのだが、職場たる聖ジョージ大聖堂とランベス宮近辺にはこういった庶民的な商店街などというものが存在しないため、それはそれで面倒臭いと思ってしまうのだ。
「なぁ。パン、パスタ、缶詰、小麦粉、バター、牛乳、ホウレン草、あとオマケでトマト。……これで全部だったっけ?」
「カミやん、カミやん。本日のメインたるサーモンをお忘れですぜい」
「! そうだった!」
 あっぶねーあっぶねー、と呟く当麻の傍らを歩いていたのは同じ年頃の日本人。ただしこちらは髪を金色に染め、青色のサングラスを掛けている。そして当麻よりも頭一つ分背が高い。
「それと土御門さんからもう一個付け足し。卵もまだ買ってねーから忘れずに。チーズは家にあったはずだよにゃ?」
「卵も忘れてたな……うん。チーズはまだある」
 金髪サングラスこと当麻の同僚・土御門元春の問いに首を縦に振り、足を鮮魚取り扱いの店へと向ける。卵は割れる危険性を考えて最後にした方がいいだろう。
「魚は……まぁいいとして、卵は土御門が持ってくれよな。なんとなーくなんだけど、俺が持つととても不幸な事件が起こりそうなんだよ……」
「にゃー。カミやんならフツーに卵割っちまいそうだにゃ。つか、それどころか何故か人相の悪い人にぶつかって卵が割れて難癖付けられるって展開になりかねない」
「うう。マジで想像出来るから嫌だ」
 土御門の軽い笑い声に頭を抱える気配(両手がふさがっているため)を出し、当麻は呻いた。
「それにサケのクリームパスタがいいって言ったのはオレだからにゃー。手伝うのは当たり前ぜよ」
 少し大きめのフライパンが入ったビニール袋を掲げて土御門がサングラスの奥の目を眇める。このフライパンもまた当麻の本日の買い出し予定物だ。土御門はこのまま買い物終了と共に上条宅を訪ね、夕飯に与る予定なのである。
 お互いに一人暮らしであるため、こうやって共に食事を取る事はさして珍しくない。光熱費や材料費等々、色々助かるのだ。あとは一人きりだとついつい手抜きの料理になりがちなので、それを防ぐ事にもなる。ただし当麻はともかく土御門は全くと言っていい程普段から自炊しないため、食事は外食・インスタント・上条当麻お手製料理(仕事で極東の島国に滞在中の場合は彼の愛すべき義妹お手製料理となる)のサイクルに陥っているのが現状であるのだが。尚、説得しようにも全く改善される気配がないので当麻はすでに土御門の自炊を諦めている。今はもう自分が食事を作る時くらいは野菜を多く摂らせようと心がけるくらいだ。(であるからして、本日もパスタのソースにホウレン草をめいっぱいぶち込む予定。)
「……ん? なぁカミやん、」
 歩きながら何か思い出したように土御門が当麻の名を呼んだ。
「どうした?」
「こっちは魚屋の方向だよな?」
「おう。それがどうかしたか」
「オレの記憶が確かなら卵売ってんのはアッチですたい?」
 と言って土御門は自分達から見て右の方角を指差す。非自炊派の土御門がこのような商店街に来る事はあまり無いのだろうが、確かに指差した方向には卵を取り扱っている店がある。と言う訳で、当麻は首を縦に振った。
 ちなみに、更に付け加えると、当麻の家はその反対側。つまり左の方角にあり、サーモン購入後に卵を買いに行くならば遠回りになる。
「だったらオレがアッチ行くからカミやんはコッチ。手分けして買った方が効率良いんだぜい」
「オッケー、んじゃ俺ん家で待ち合わせな。合鍵の場所は前と一緒だから、先に着いたら勝手に入っといてくれ」
「了解。カミやんまた後でにゃー」
 言って、土御門はすぐそこの角を曲がって姿を消した。当麻も歩みを再開して目的地へと向かう。少し離れた所にあるのでやや歩調が速い。
 行き交う人の波を器用に避けながら土御門と別れたのとは別の十字路を通過しようとすると―――
「ひゃあ!」
「っと…………あれ、インデックス? と、ステイル」
 小柄な人影とぶつかったのだが、その相手は銀髪碧眼のシスターと赤髪の少年神父だった。
「と、とうま?」
「久しぶりだね、上条当麻」
 片や驚きつつも知り合いに会えた事で嬉しそうに瞳を輝かせ、片や不機嫌そうな顔で咥えた煙草(ただし火はついていない)を上下させている。なんとも分かりやすい態度だ。煙草に火がついていないのは少女の身体を慮っての事か、それともただ単に少女が五月蝿く言うからだろうか。
「久しぶり。ここんとこ聖ジョージ大聖堂に顔出してなかったもんなぁ。ってか、お前らはここで何してんの?」
 俺は買い出しだけど、と当麻は自身が抱える大きな紙袋をがさりと揺らした。
「私達は今日の午前中までイタリアに行ってたんだよ。って、とうまの立場なら知ってるかな」
「ああ。魔道書の件だろ」
「うん。それでね、お仕事が無事に終了したからここまで息抜きに来たんだよ」
 はて、息抜き? と一瞬首を傾げた当麻だったが、彼女らが現れた方向に何があるのか思い出して納得したような顔付きになる。そのまま少女の隣に立つステイル=マグヌスへ視線を移すと面白がるように顔を歪めて問い掛けた。
「まさか、また?」
「……まぁね」
 あまり上条当麻という人間とは関わりたくないのか、ステイルの返答は必要最低限だ。しかし問い掛けの内容は理解してくれたらしい。
 そっか、と答える当麻の表情は苦笑。思い出されるのは禁書目録の少女と外出し、ステイルとは初めて言葉を交わしたあの日の事。目の前に広がる冗談のような光景―――山ほどのケーキ達。
 インデックス達がやって来た方向には、あの日訪れたのとはまた別の少しばかり有名な菓子店がある。きっと彼女ら――と言うより『彼女』――はそこで満足するまで胃袋に甘味を納めたに違いない。心なしか銀髪シスターの表情も常日頃の二割増しで幸せそうに見えた。
 今はステイル=マグヌスが禁書目録を寮まで送り届けているといった所だろうか。
 尚、少女の隣に神裂火織の姿が見えないのは、彼女が別件に当たっているためである。ローラ=スチュアートの傍にいる当麻の耳には当たり前のように届いていた事柄であり、特に彼女の姿が無いのを疑問に思う事はない。ただし帰国した禁書目録と共にいられない事を神裂が悔しがっているのは想像に難くなく、当麻は内心苦笑する。
「そっかそっか……インデックスも満足してるみたいだし、よかったな。俺はまだ買い物続行中だけど、お前らはもう帰るのか?」
「神裂がいれば話は別だが、僕だけじゃ移動中の守護に少々不安があるからね。あまり遅くまで外出している訳にもいかない」
 魔術の特性上しょうがない事なのだが、ステイルはそう言って悔しそうに眉を寄せた。
「だよな……じゃ、インデックスもステイルも気をつけて帰れよ」
「うん。とうまも遅くまでフラついてちゃダメだからね」
「あははっ、りょーかい」
 一番その台詞を受けるべき人間から真剣な表情でそう言われ、当麻は声を上げて笑う。しかしそのまま少女を不機嫌にさせるつもりも、またこの場を長引かせて土御門を待たせるつもりもなく、会話を切り上げて「それじゃまたな」と別れを告げた。
 ステイルは無言だったが、その分を補うようにインデックスが応えようと手を振る―――その時。
「あ……」
「いつの間に」
「人払いか」
 禁書目録の少女は幼い表情に真剣みを加え、ルーンの魔術師は警戒度を急激に高めて人気の無くなった辺りを見渡し、上条当麻はこの近辺に使用された魔術の種類を呟く。
 魔術を一般人の前に晒さないよう普段からよく使われている人払いの魔術。それが当麻達三人の周りに展開されていた。発動されるまで三人のうち誰一人として気づけなかった事からも術者の能力の高さが窺える。そしておそらくその魔術師の狙いは一〇万三〇〇〇冊の魔道書を記憶するこの少女。自然、ステイルと当麻の立ち位置はインデックスを守るような形になっていた。
「君は魔術師じゃないだろう。無理はせずその辺に隠れていろ」
「ばーか。女の子の盾にもならず突っ立ってる男なんて滅茶苦茶格好悪ィじゃねーか」
 ステイルの咥えていた煙草に火が灯るのを見ながら当麻は口の端を持ち上げる。インデックスも当麻の態度に何か言いたげではあったが、自分と同じく『必要悪の教会』所属で魔術が使えない事、また少女のように数多くの魔道書の知識を持っていないとしても代わりに最大主教ローラ=スチュアートの側近である事を思い出して口を噤んだ。
 それでも視線では自分を庇うような真似は止めてくれと訴えてくる禁書目録の少女の姿に、当麻は眉尻を下げる事で答える。
 ―――が、内心はその表情と少々趣を異にしていた。
(あーもう、面倒な事になっちまって……。これで素直に隠れるなり逃げるなりしてみろ。ステイル=マグヌスどころか聖人・神裂火織にまで睨まれるのは必至だろうが)
 自分の『力』を見せる事になるかも知れない状況を厭いつつも、そんな情けない態度を取るのはプライドと“後の事”を考えてできる訳がない。今、上条当麻が考えるべきは如何に『力』を露わにせず、ステイルと共に敵の魔術師を撃退するかだ。
 禁書目録が奪われるのを避けるのはイギリス清教の人間として当然の事ではあるが、それと同じか(個人的には)より重要なものとして、当麻は己の力を知られる訳にはいかなかった。この『力』は魔術を始めとする異能の力を頼りにしている人間にとってひどく受け入れ難いものであるはず。そんなものの存在を知られれば、上条当麻がどういった扱いを受けるのか……。誰もがローラ=スチュアートや土御門元春のような態度を取ってくれる訳ではない。むしろ彼らは少数派で、大多数は彼らと正反対の態度を取るようになるだろう。それは上条当麻という人間一人にとって多大なる害を与える事になるだろうし、また異能を知る人々全体としても穏やかならぬ状況に陥る可能性がある。
 たかが可能性、されど可能性。こうなるかも知れない、という想像はそれだけで当麻に内心で悪態をつかせた。
(本当に毎度毎度毎度毎度毎度! 不幸にも程があるってんだ!)
 少女の手を引いて当麻は右に跳ぶ。直後、インデックスの左脚があった場所へ紫電の球体が突っ込んできた。それはバチィ!と音を立てて弾け、閃光を撒き散らした。こんな物が少女の頭部に当たったら―――。相手は禁書目録という人間の価値をきちんと考えているのだろうか。
(いや、考えているからわざわざ脚を狙ったんだ。っンとにろくでもねぇ相手だよ。頭が無事ならそれでいいってか!)
 視線をやれば、同じ考えに至ったらしいステイルが眉を吊り上げて攻撃が飛んできた方向を睨みつけている。そして口早に言葉を紡ぎ、右手に炎剣を生み出した。
「とうま、下がって! ステイルの炎剣は爆風が凄いから巻き込まれちゃうかも!」
「わかった」
 インデックスの声に従い、彼女を庇う格好のまま後退する。ステイルがちらりと視線を送ってこちらを確認した。その目は不本意ながら少女の事は任せたと告げている。
 当麻は一度だけ首を縦に振り、更にもう一歩後ろへ下がった。
(土御門は……たぶん間に合わねえな。そもそもあいつのいる場所からここまではちょっとばかり距離がありすぎる。いくらあいつでも人払いの魔術に気づけるかどうか)
 禁書目録の少女達と出会う前に二手に別れた友人の事を思い出す。が、かつて天才陰陽博士として名を馳せていた彼の少年の援護は期待出来そうにない。まさにルーンの魔術師ステイル=マグヌスと“一般人”上条当麻でこの状況を切り抜けなければいけない訳だ。
 目まぐるしく思考を働かせる間にも、まずは一番の障害であるだろうステイルを排除すべく正体不明の魔術師から彼に向かって光弾がいくつも飛来する。それを避け、あるいは炎剣で切り裂き、ステイルが前方へと走った。当麻とインデックスは敵魔術師とステイルを結ぶ射線上に出ないよう、彼らから目を離さずに時折場所を変える(攻防の余波がやってくるため)。
 敵の姿は未だ視認出来ないが攻撃は一方からしか来ず、加えてステイルが徐々に相手を追い詰めているように思えた。故に油断していたのだろう。敵は一人でしかもこちらが優勢だと。

 そして、その油断が決して抱いてはいけなかったものだと気づいた時には遅かった。

 ヒュンッと空を切る音が、ステイルを見守っていた当麻達の後方から襲いかかってきた。
「……ッ!」
 異常を察知した当麻が咄嗟にインデックスを押し倒す格好で身を伏せる。飛来した何かは黒髪を僅かに掠ってすぐ傍の小さな店舗に激突した。大きな爆発音に身を竦ませながら背後を振り返ると、商品を並べていたはずの棚が跡形も無く木っ端微塵になっていた。
「これは―――!」
 どういう魔術で攻撃されたのか理解したらしい禁書目録の少女が息を呑む。
「とうまっ早く動かなきゃ! 刺されるよ・・・・・!!」
 少女が声を発するのと同時かそれよりもやや早く当麻の身体が動いていた。姿勢はなるべく低くしたまま立ち上がり、インデックスの手を引いて走り出す。その脇を何かが再び通過し、二人の伏せていた場所に大穴を明ける。が、今度は当麻にもその攻撃がどういったものか視認する事が出来た。
 形は細長く、薄い。何の変哲もない紙だ。ただし長い紙の表面にはびっしりと細かな文字が書かれており、表面は黒くなっている。おそらく魔術を用いて強化し、速度と攻撃性を持たせているのだろう。
 二人を攻撃したそれは暗い路地裏の奥へと続いていた。こちらもステイルと戦っている魔術師同様、姿を見せる気はないようだ。
 シュルシュルと路地の奥へ引っ込んでいく紙を見据えながらインデックスが告げる。
「あれは魔道書の出来損ないみたいな物って言えるかも。ちゃんと見る事は出来なかったけど、暗号化もせずに攻撃性を増すための魔術が記述されてるね。しかも先端には爆砕の効果まで付加されてる。刺されたらあのお店みたいになっちゃうんだよ」
 ちらりとインデックスが視線をやった先には一発目の攻撃を受けて棚が木っ端微塵になった小さな店舗。ぎりぎり目で追えるか否かの攻撃が残した跡を見て当麻はごくりと喉を鳴らした。
 三発目はまだ来ない。建物と建物の隙間に出来た真っ暗な空間に身を潜めてこちらを窺っているように思える。ともすれば、獲物が恐怖に怯えている姿を暗がりから眺めて楽しむかの如く。
「ステイルと戦っている方もこっちも、どちらも隠密性の高い魔術師だね。たぶん……ううん、きっと二人とも仲間だよ。敵は一人だと思わせてこっちの隙をつく作戦だったんだね」
 その作戦は上手く行き、ステイルは当麻達の異変を察知しながらもこちらへ来る事が出来ずにいる。それどころか今までステイルが優勢だったにも拘らず、急に敵からの攻撃が勢いを増して一進一退の状態に陥ってしまっていた。
「……かなりヤバい感じだな」
「ステイルも今すぐ駆けつけてはくれなさそうだし。かと言ってあれは詠唱よりも道具を重視した魔術みたいだから、強制詠唱スペルインターセプトじゃ上手くいかないんだよ」
 当麻の呟きにインデックスが悔しげに答える。
「紙に書かれた文字をもうちょっと確認出来れば何か判るかも知れないけど……」
 だが高速で飛んでくる物体を魔術も使わずに素手で捕まえられるはずもなく、こうなればひたすら逃げ続けるしかない。当麻達がそう結果を出すと同時に暗がりから三撃目が襲いかかってきた。
「ッ!」
「とうま!?」
 慌てて横に跳ぶ。しかしインデックスの安全を優先させた結果、鋭い一撃は当麻の左腕を掠るようにして背後の壁へと突き刺さった。そして小爆発。コンクリート片が飛び散る中、裂けた布地と傷口から溢れ出す赤色に少女が悲鳴に似た声を上げる。
「心配すんな! こんなの掠り傷だ!」
「ちっとも掠り傷なんかじゃないよ! もういいから、とうまは隠れて! 私が着てる修道服は歩く教会。ちょっとやそっとじゃ傷なんて受けないんだよ!?」
 と言われても、自分より小さな女の子を盾にする男がいるならば、そいつは世界中からタコ殴りにされて当然ではないだろうか。緑色の瞳を潤ませながら必至に告げる少女を見て当麻はそう思う。確かに上条当麻という人間は自身の力を他人に知られる事を厭っているが、それ以前に人としての常識と男のプライドというやつはそれなりに持っているのだから。
 当麻はステイルを見、そしてインデックスを見て口の端を持ち上げた。
「んな事やってみろ。あとでステイルに炎剣ぶち込まれんのは確実だぜ?」
「とうま!」
「いいんだ。お前はちゃんと俺に守られといてくれよ。ステイルがあっちを片付けてくるまでの時間稼ぎくらいならやってやるからさ」
 そう言って、少女の腕を左手で握りながら横に走る。二人の後を追いかけるように一度暗がりに引っ込んだ長い紙が再び突っ込んできた。攻撃が突き刺さった箇所で起こる爆発が木材やコンクリートの破片を撒き散らし、当麻は空いた右手でインデックスに向かったそれらを払う。
 攻撃そのものは直線だったりカーブを描いていたりするが、一度決めたコースを途中から変更する事は不可能らしい。おかげで細かく移動すれば避けられなくもないが、代わりに突っ込んでくる速度が恐ろしく速い。余裕などあるはずもなく、自然と当麻達の意識はステイル=マグヌスが戦っている方向から直接自分達を対象とした攻撃へと向けられる。それでもステイルに襲いかかる攻撃の射線上には出ないようにしていたのだが、
「避けろっ!!」
 ステイルの切羽詰った声が聞こえてそちらを振り返った当麻の眼前に紫電を纏った球体があった。
「ぁ……」
「とうまっ!」
 インデックスの焦った声がする。
 しかし魔術が使えない彼女に出来る事はなく、ステイルから外れた敵魔術師の攻撃が上条当麻に直撃した。








(2009.05.06up)



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