「アタシの愛を受け止めてくださいよ。こんなにも君が好きなのに」

 穏やかなままの笑みで。
 俺もつい口元に笑みが浮かんでしまって、口元を笑ませたまま、瞼を閉じた。

「虫唾が走るな」
「走らせといてください。それは君にとって決して快いものではないけれど、不快なも
のではあるはずだ。その不快なものを背負って生きていくことこそ、厳しい人生の事無
きよなかれ、ですよ」
「そうか、お前は結局馬鹿なんだな浦原」
「おや、今頃気がついたんですか」

 くすくすと声を漏らして笑っている浦原。表情は先ほどと同じままの穏やかな笑みな
んだろう。俺は今瞼を閉じているからわからないけれど。

「死ね」

 呟いた。それは二人きりの静かな部屋に存外響いていくらか重みを増す。
 俺の口元は笑んだまま。浦原の気配も一向に変わる気配はない。穏やかなままだ。

「じゃあアタシが死んだら、アタシのこの想いをあなたは受け取ってくれますか?」

 あ、なんか胸の底がむかむかしてきた。

「あーあ、お前の肉体が腐食して、ぐずぐずのただの肉の塊になってこの世から果てた
ら俺は何も言うことはねーんだけどな」

 むかむか、むかむか。
 ああ、本当に腹が立ってきた。何なんだろうこれは。

「いつかそうなりますよ。ただ多少お時間がかかりますけど。それをお望みなら、気長
に待ってくださいね」

 相手の気配は穏やかなままだ。何も変わらない。
 俺は畳に後ろ手に手をついて、首を上に向けて瞼をぱかりと開けた。

「俺は愛が嫌いだ。恋も嫌いだ。だからそれにあやかろうとするアンタも嫌いだ、浦原」

 木目の天井だけが目に映る。
 わー、キレー天井だなあと日本家屋の素晴らしさに感動するも、むかむかは収まらな
い。
 むかむか、むかむか、むかむか。


「ふられちゃいましたね。でもアタシの気持ちはあなたが愛や恋を嫌う感情より強くて
しつこくて汚いですから、あなたをずっと追い回しますよ」

「愛や恋はあなたが悲観して嫌うほど綺麗なものじゃない。どろどろした、汚くて醜い
感情を生み出す、不の原因的な感情でもある」


 むかむかむか、むかむかむかむかむか。


「アタシがそれを教えてあげますよ。憎くて汚くて肉欲にまみれた、本当の愛と恋って
やつをね」
























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