むかむかが最高潮に達した。 俺は浮べていた小さな笑みをそのままに、笑顔で浦原を見る。 「ちょっと過信が過ぎるんじゃねえのか。あんたに本当の愛や恋がわかるわけねえだろ、 人の心を忘れた化け物がよ」 「そう、アタシはどこからどう見ても化け物だ。でも、化け物には化け物なりの愛があ るんスよ。人の心は忘れたけれど化け物の心を忘れたわけではない。化け物の愛を、こ れからゆーっくり教えてあげますからね」 怖いほどの穏やかな雰囲気を身にまとったまま、緩い笑みを浮かべっぱなしのそいつ に、もう目もくれず、俺はゆるりとした足取りで部屋を出た。 「真実を知らない哀れなあの子にアナタからご加護を」 そう小さく呟いた浦原が数分後のその部屋にいたことを俺は知らない。 そうして、その日の夜から俺の部屋に毎夜浦原が訪れることになることも俺は知らな かった。 −END− |