俺は未成年だから、そっち系のチョコは全部浦原行き。本人も何か喜んで食ってるし。 「しかし、チョコなんてどれも同じ味だなあと思ってたら、違うもんっスねえ」 「だから言ったろ。高級なもんは機械製造されたのとは違うから美味いんだっつーの」 「それって機械業者とかお菓子業者に失礼じゃありません？」 「いーから黙って食え」 　自身もフォークでチョコを刺し、口の中に放り込んだ。一口サイズのそれは甘みがあっ て苦味もあり、子供の俺でも楽しめる味だ。 　口の中に広がる様々な味につい頬が緩んでしまい、頬を緩めたまま口ももぐつかせていると。 「黒崎サン、よっぽど好きなんっスね、チョコ」 　優しく微笑みながら言われて、小さくこくりと頷いた。笑い声と共に吐き出された息が 首にかかってくすぐったい。 　もぐもぐさせていたのをごくんと飲み込んで、後ろを振り返った。 「辛子明太子も好きだから、明太子とチョコが好物っていうと両極端だなってよく言われる」 「でも味としてはつながってるからいいんじゃないっスかねえ」 「だろ？」 　甘すぎると辛く感じるからな。まあ辛さの種類が違うけど。 「…んー…アーモンドとかも食うか？」 　フォークに刺して浦原にまた差し出した。 　いつの間にか腰に腕を回されていて身動きがしづらい。 「あ、アタシは後でいただきます」 「ん、わかった」 　刺したアーモンドチョコを自分の口に入れ、もごもごとほおばった。 　チョコの中にアーモンドがまるまる一粒入っていて、香ばしい味と甘い味が混ざって 不思議な感覚だ。それでも甘いと思ったけれど。 　とりあえずまわりのチョコを全て舐めてからアーモンドを噛み砕こうと決めて、チョ コに舌を絡めると。 「黒崎サン」 「んぁ？　…んっ！？」 　返事をした途端にいきなり顎をつかまれ、浦原のほうを向かされた。何事かと思って 目を見張るとそのまま顔を近づけられて、思わず目を堅く瞑ってしまう。 　気がついたら、濃厚なキス。 「…っ…んんっ…ぅん…！」 　歯列を舐めあげられて背筋にぞくりと電気が走った。 　チョコに絡めていた舌を舐め取られて、そのまま絡められる。 　甘い。 　もう何が甘いのかわからないけれど、甘い。チョコが甘いのか、それともキスが甘いのか。 　恐らく、両方だと思うけれど。 　霞がかり始めた目と頭では思考がよくまわらない。 　抱き上げられて体は前を向いているのに顔は後ろを向いているから苦しいし。しかもやばい。 　こんな体制なのに、快感を感じてしまっている自分が居る。 　このままではまずい、そう思っていると、不意に舌と唇が両方離れていった。 「ふぁっ…」 　入り込んでくる酸素に思わず声を漏らしてしまうと、くすりと側で笑う気配。 　口の中には甘い痺れと小さな違和感だけが残っている。 「確かにいただきましたよ」 　呆とする頭では何を言われたのかわからない。 　しばらくしてようやく気がついた。顔が赤くなってしまうことなど今更どうでもいい。 　問題はそこではなく、それは… 「アーモンドと少しのチョコと黒崎サンの甘い蜜。良いもんっスねえ」 「…お、おまっ…」 「アーモンドチョコ、もらうって言ったでしょ？」 　にこりと微笑まれて言われても。