赤くなった顔は隠しようがないし隠しても意味がない。

 とりあえず悔しいので呻けるだけ呻いて、無言で浦原をにらみつけた。



「後でもらうって言ったのに」

「…〜っ、後で、の意味が違うだろーがっ!」

「後は後っスよ。それに、アーモンドチョコならまだあるんだから」



 だから問題はそこではないのだけれど、小さく優しく笑まれては言葉の返しようがない。

 うう、ともう一回だけ呻いて、熱くなった頬を誤魔化すように俯いた。

 浦原はまたくすりと笑って、俺の腰に回していた腕を俺の脇の下に差し込む。



「うわっ…!」



 あっという間。

 ひょいと抱き上げられて正面には嬉しそうな男の顔。ちなみに帽子はない。いつ外し

たのだろうとぼんやり脳の片隅で考えるが、とりあえずそれはどうでもいい。

 この体制は。



「美味しそうにチョコを食べてる黒崎サンの顔、見せてくださいよ」



 いつも帽子に隠されている目元は優しげに眇められていて、俺を見る目は濃く蕩けている。

 その目に思わず心臓が跳ねてしまって、体が小さく震えた。



「ね?」



 後ろを向いてフォークにとびきり甘い種類のチョコを刺し、有無を言わさずその口に

押し込んでやった。



「む」



 小さく声をあげて押し込まれるそれ。

 噛んだらじんわりと口に広がるあれら特有の甘さ。



「蜂蜜と餡子と生クリームとメイプルシロップ入りのチョコだ。存分に味わえ」

「………」



 もぐもぐと口を動かして黙って咀嚼しているが、少し辛そうな顔だ。

 それはそうだろう、浦原は甘いものは嫌いではないが好きでもない。むしろ甘すぎる

ものは好きではないくらいなのだから、甘いもの尽くしなこの種のチョコレートはきついだろう。

 嫌がらせが成功したことに満足し、チョコの箱を自分の膝の上においた。



「…水が欲しいっスね」

「なんだ、もう食っちまったのかよ」

「………」

「そんなしょげんなって、ほら、口直し」



 さすがにげんなりした様があまりに哀れに思えたので、愛しさも込めて唇に軽くキスをした。

 触れるだけですぐ離して、けれどびっくりした様の浦原を見てもう一回口付けた。

 そうして今度は幸せそうな顔の浦原が居て、また赤くなってしまった。

 そしてそうとは思えない口ぶりで言う。



「まったく、あなたには適いませんよ」

「トーゼンだろ? 俺だって何時までもお前の思うとおりになってるわけじゃねぇんだからな」

「コワイコワイ」



 言い合って、二人で小さく噴出した。

 互いに声をあげて笑いあって、チョコを食べさせられつつ食べつつ食べさせつつ、その日を過ごした。

 もちろん夜には、俺自身も喰われてしまったけれど。

 気分の良い一日だったと思う。



 浦原とチョコと、自分のほんの少ししかない素直な気持ちに感謝した。

















−END−

























い、頂いてきてしまいました。

キャハーv素敵です!素敵過ぎます!

「A定食」の双間暁様、

この度はこんなに素敵なフリー小説の掲載を許可してくださって

本当にありがとうございましたv

どうぞこれからもよろしくお願いします!












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