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■キョン妹→キョン(黒注意。むしろヤンデレ。古泉転入後)



 あたしは神様がキライ。キライキライ、大キライ。
 でもしっかり演技はするの。だってそれがあたしの仕事で、キョンくんの望みだから。
 野球大会に助っ人として呼ばれた時だって、笑顔で対応してたでしょ?
 あたしはキョンくんの"無邪気な"妹だから、どんなことに対してだって、いつも笑って笑って笑って、どんな人にでもじゃれついて、瞳を輝かせて、みんな大好き!ってオーラを振りまいて。ね?
 でもさ、だからって本当に好きなわけないじゃん。むしろ大キライだよ。みんながキョンくんをいじめてるみたいに見えてくるから。
 神様、神様が好きな人、神様が好きな人を神様だと思って近づいて来た人、それにあたしからキョンくんを奪う人はみんな。
 キョンくんの何を知ってるっていうの?キョンくんの痛みがあなたたちに解るの?本当は何も知らないくせに、知ろうともしないくせに。
 ああ。一人、一応わかっちゃう人はいたのかな。確か。でもキョンくんを助けてくれないなら他の人と一緒だよ。学校の先生も言ってたもん。いじめは、いじめている人とそれを見ているだけの人、両方がいじめのカガイシャなんだって。だから一緒。
 大っキライ。
 神様も、世界も。


 ・・・でも、ね。


「何やってんだ、お前は。」
 勝手に人の部屋入って・・・と小言を口にするキョンくんに向かって、あたしはベッドの上からお得意の「てへっ☆」をお見舞いする。
「だってキョンくんのベッド気持ち良いんだもーん。」
「素材はそんなに変わらんと思うぞ・・・?」
「そーかなぁ?」
 素材とか関係ないよ。このベッドが気持ち良いのは、これがキョンくんのベッドだからだよ。あたしの大好きなお兄ちゃんのベッドだから。ねえ、絶対口にしたりしないけど、そうなんだよ?本当に。
「全く・・・いいからとにかくそこを退け。」
「はぁ〜い。」
 ぴょんと飛び跳ねて床に着地。キョンくんの大きな手のひらにちょっとだけ触って、「ばいばーい」と部屋を出る。
 何なんだあいつは・・・とキョンくんの呟きが聞こえてきたけど、それでもキョンくんがあたしのことを言ってるんだと思えば嬉しくて仕方が無かった。
 あたしは神様が大キライだよ。
 でもね、キョンくんと会わせてくれたことには感謝してもいいと思ってる。
 神様がキョンくんに力を与えなければ、あたしはキョンくんと出会えてなかった。そんなの、ちょっと考えるだけでぎゅっと胸が痛くなる。コケて足を擦り剥いた時よりもずっと痛いの。もしかして死んじゃうんじゃないかって思うくらい痛いんだよ。
 だからキョンくんがいない生活なんて、今のあたしには考えられない。あたしはキョンくんの妹なんだ。家族なんだ。一緒にいていい存在なんだよ。抱きついたって許されるし、キョンくんは優しく笑ってくれるし、あったかいし、最近は無いけど一緒にお風呂にだって入れるし。
 こんな世界と神様のおかげで、あたしはキョンくんの特別だ。家族っていう特別な人間なの。
 だからね。えへへ。キライだけど、神様、ありがとうって言ってあげる。



* * *



 神なんて死ねばいい。
 世界?安定?そんなもの知らないよ。

死んじゃえ死んじゃえ死んじゃえ死んじゃえ死んじゃえ死んじゃえ死んじゃえ死んじゃえ死んじゃえ死んじゃえ死んじゃえ死んじゃえ死んじゃえ死んじゃえ死んじゃえ死んじゃえ死んじゃえ死んじゃえ死んじゃえ死んじゃえ死んじゃえ死んじゃえ死んじゃえ死んじゃえ死んじゃえ死んじゃえ死んじゃえ死んじゃえ死んじゃえ死んじゃえ死んじゃえ死んじゃえ死んじゃえ死んじゃえ死んじゃえ死んじゃえ死んじゃえ死んじゃえ死んじゃえ死んじゃえ死んじゃえ死んじゃえ死んじゃえ死んじゃえ死んじゃえ死んじゃえ死んじゃえ死んじゃえ死んじゃえ死んじゃえ死んじゃえ死んじゃえ死んじゃえ死んじゃえ死んじゃえ死んじゃえ死んじゃえ死んじゃえ死んじゃえ死んじゃえ死んじゃえ死んじゃえ死んじゃえ死んじゃえ死んじゃえ死んじゃえ死んじゃえ死んじゃえ死んじゃえ死んじゃえ死んじゃえ死んじゃえ死んじゃえ死んじゃえ死んじゃえ死んじゃえ死んじゃえ死んじゃえ死んじゃえ死んじゃえ死んじゃえ死んじゃえ死んじゃえ死んじゃえ死んじゃえ死んじゃえ死んじゃえ死んじゃえ死んじゃえ死んじゃえ死んじゃえ死んじゃえ死んじゃえ死んじゃえ死んじゃえ死んじゃえ死んじゃえ死んじゃえ死んじゃえ死んじゃえ死んじゃえ死んじゃえ死んじゃえ死んじゃえ死んじゃえ死んじゃえ死んじゃえ死んじゃえ死んじゃえ死んじゃえ死んじゃえ死んじゃえ死んじゃえ死んじゃえ死んじゃえ死んじゃえ死んじゃえ死んじゃえ死んじゃえ死んじゃえ死んじゃえ死んじゃえ死んじゃえ死んじゃえ死んじゃえ死んじゃえ死んじゃえ死んじゃえ死んじゃえ死んじゃえ死んじゃえ死んじゃえ死んじゃえ死んじゃえ死んじゃえ死んじゃえ死んじゃえ死んじゃえ死んじゃえ死んじゃえ死んじゃえ死んじゃえ死んじゃえ死んじゃえ死んじゃえ死んじゃえ死んじゃえ死んじゃえ死んじゃえ死んじゃえ死んじゃえ死んじゃえ死んじゃえ死んじゃえ死んじゃえ死んじゃえ死んじゃえ死んじゃえ死んじゃえ死んじゃえ死んじゃえ死んじゃえ死んじゃえ死んじゃえ死んじゃえ死んじゃえ死んじゃえ死んじゃえ死んじゃえ死んじゃえ死んじゃえ死んじゃえ死んじゃえ死んじゃえ死んじゃえ死んじゃえ死んじゃえ死んじゃえ死んじゃえ死んじゃえ死んじゃえ死んじゃえ死んじゃえ死んじゃえ死んじゃえ死んじゃえ死んじゃえ死んじゃえ死んじゃえ死んじゃえ死んじゃえ死んじゃえ死んじゃえ死んじゃえ死んじゃえ死んじゃえ死んじゃえ死んじゃえ死んじゃえ死んじゃえ死んじゃえ死んじゃえ死んじゃえ死んじゃえ死んじゃえ死んじゃえ死んじゃえ死んじゃえ死んじゃえ死んじゃえ死んじゃえ死んじゃえ死んじゃえ死んじゃえ死んじゃえ死んじゃえ死んじゃえ死んじゃえ死んじゃえ死んじゃえ死んじゃえ死んじゃえ死んじゃえ死んじゃえ死んじゃえ死んじゃえ死んじゃえ死んじゃえ死んじゃえ死んじゃえ死んじゃえ死んじゃえ死んじゃえ死んじゃえ死んじゃえ死んじゃえ死んじゃえ死んじゃえ死んじゃえ死んじゃえ死んじゃえ死んじゃえ死んじゃえ死んじゃえ死んじゃえ死んじゃえ死んじゃえ死んじゃえ死んじゃえ死んじゃえ死んじゃえ死んじゃえ死んじゃえ死んじゃえ死んじゃえ死んじゃえ死んじゃえ死んじゃえ死んじゃえ死んじゃえ死んじゃえ死んじゃえ死んじゃえ死んじゃえ死んじゃえ死んじゃえ死んじゃえ死んじゃえ死んじゃえ死んじゃえ

 キョンくんは今、真っ白な部屋で真っ白なベッドの上に横たわっている。
 眠ってる顔は、いつもよりずっと青白い。これで息してるのがわかんなきゃ、死んでるんじゃないかって思ってしまう。
 閉鎖空間で神人にやられたんだって。
 キョンくん、一番強いのに。キョンくん、一番強いから。
 仲間を庇って頭を打って気絶して。
 お医者さんがね、異常は無いんだって。だからきっとすぐに目を覚ますよって。そう言ってあたしの頭を撫でたの。
 ・・・気持ち悪かった。
 あたしはあたしだから、キョンくんの妹だから、泣きそうな顔して「ありがとうございます。」って言ったよ。でもやっぱり撫でられるのは気持ち悪くて、すぐにキョンくんのベッドの傍を陣取ってキョンくんだけを見ていた。
 様子を見に来た"キョンくんの仲間"にはたぶんあいさつくらいはしたんだろうけど、はっきりとは覚えてない。どうでもいいよ、そんなの。憎まれてないだけマシでしょ?「どうしてキョンくんだけがこんなになっちゃってるの?」って訊かないだけマシじゃん。あたしだって解ってるんだから。この人たちもヒガイシャなんだって。だから責めちゃいけないんだって。キョンくん、そう言ってたし。
 だからね、神様が全部悪いの。
 だからね、死んじゃえばいいんだ。
 キョンくんをこんな目に合わせる神様なんか。
「死んじゃえばいいんだよ・・・。ねえ、キョンくん。キョンくんもそう思うでしょ?だからねえ、起きて?目を開けて。そうだねって言ってよ。起きてよ。あたしの頭、撫でてよ。・・・キョンくんっ・・・!」
 泣きそう。でも泣かない。だって世界に負けるから。
 本気の涙を流さないことがこの世界への、神への抵抗だと言ったら、あなたは笑いますか?キョンくん。
 いいえ、きっと「ばかだなぁ。」と苦しそうに微笑んでくれるのでしょう。だから言わないんだけれど。
 あたしも意味の無いことだってわかってる。でもあたしに出来ることはこれくらいしかないから、だから泣かないよ。泣きたくても泣かない。泣くっていう自然の摂理に、神様の中の常識に、あたしは抵抗する。
 キライだから。キライなものに負けたくないから。
 ああ、でも泣きそうだよ。大変なんだよ。ねえ、キョンくんってばぁ・・・!
「キョンくん、あたしがんばってるよ。泣かないよ。頭撫でられて気持ち悪かったけどガマンしたし、キョンくんのこと聞いても耐えたんだよ。だからねえ、だから・・・。起きてよ。あたしを撫でてよ。目を開けてよ・・・っ!」


「・・・んっ、」
「キョンくん!?」
「っ・・・う、・・・・・・ぁれ?お前だけか?」
「キョンくん!!」
 お前だけか、とかちょっと引っかかる言い方だけど、まあいいよ!
 キョンくんが起きてくれただけであたしは十分だから。
 ホント、起きるの遅いよキョンくん。キョンくんキョンくんキョンくん!キョンくん!!
「おはようじゃなくて"おそよう"だね!あ、みんなも呼ばなくちゃ。」
 ベッドの脇のナースコールをポチッと。これで良し。
 すぐに看護士さんが来てくれるよ。そしたら検査して家に帰れるね。きっと。
「・・・心配かけた、な?」
「なんで疑問系なのー?心配したんだからっ!」
「おう。ごめん・・・。」
「そんなの言われてもうれしくなーい!」
「・・・・・・そうか、よし。」
 ぷいっとそっぽを向いて言えば、キョンくんはそう呟いて身体を起こした。
 そして。
 ぽん。
「はにゃ!?」
 なでなでなでなで。
「ありがとな。心配してくれて。」
「うん!だってあたしはキョンくんの妹だもんっ!」
「そうか。」
「そうだよ!!」
 頭を撫でてもらいながらあたしは精一杯そう返事をした。





 恋、愛、独占欲、依存。それとも他の何か。さあ、この想いを何と言おう?








途中、少し大人びた言い方になってる部分が妹ちゃんの本来の顔だったりそうじゃなかったり。

(2007.07.14 up)



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