シロキウツロ 2
具象化するや否や、すぐさま始められた一護と“斬月”の闘い。
既に三十分近く続けられたそれは今も全く勢いに衰えを見せない。 どこまでも激しく、そして鮮やか。 砂塵の舞う中、打ち合わされる白と黒はもう何度目になるのか。 圧倒的な力のぶつかり合いを伴って、さながら剣舞のように斬撃が続いた。 少し離れた所でそれを見守る夜一は驚きに目を見開くばかり。 この闘いも、それを成している者達も、自分の予想を遙かに超えている。 転神体に霊力を送るための縄。それを握る手にも無意識に力がこもった。 「喜助・・・黒崎一護とは何者じゃ?」 此処には居ない旧友に問いかける。 正直、夜一は浦原の話――しかもほろ酔い状態の時の――を鵜呑みにするつもりなど無かった。 しかし例えそれが真実であったとしても、この状況は本分を逸脱しすぎている。 尸魂界に来てからの僅かな期間でさらに成長したのか、それともこれこそが本来の力なのか。 どちらにせよ、夜一には嬉しくもあり、そして恐ろしくもあった。 ひときわ大きな音を立て、岩山が一つ崩れ去る。 もうもうと巻き上がる土煙が二人の影を隠し、けれどもその霊圧は途切れることなく。 再び剣戟の音が響き始めた。 白刃を紙一重で躱し、漆黒の刃を振り抜く。 だが。 「ヘタクソ。」 「―――っ!」 一瞬前までは確かに正面に立っていた筈の白い影が気づいたときには真横に。 慌てて一護は刀を戻そうとするが間に合わず、黒い爪の白い手に勢い良く弾き飛ばされた。 「っ、くそ!」 受け身を取って着地の衝撃をなるべく軽減する。 それからすぐに起き上がり、容赦なく叩き込まれた一撃を天鎖斬月で受け止めた。 ギィイン 「おお。止めたか。」 「ったりめーだろ。」 自分と色違いの相貌にそう応え、一護は白い刀を弾き返すと同時に後方へと飛ぶ。 攻撃を受け止めた手はじんじんと痺れてその凄まじさを物語っていた。 ちょうど良い暇潰しとして始めたこの修行。 どうせなら本当に「鍛える」ために使おうとしだしたのは目の前の白い彼からだった。 卍解は既に修得済み。けれども俺には勝てるのか?と問われれば、今の一護は「否」と答えるしかない。 どうせ三日じゃ無理だろうと二人共々結果は見えていたが、それでもやるに越したことはなく。 手の痺れと共に相手の本気具合を窺い知って、一護は改めてこの三日間を存分に楽しんでやろうと決めた。 「来いよ、相棒。まだまだ可愛がってやんぜ?」 前方では掠り傷一つ無い白い存在が愉しそうに笑っている。 その彼から目を逸らすことなく一護は顔の切り傷から滲み出る血を親指で拭い、そのまま自ら舐め取った。 ニイッと口端を吊り上げ、笑い返す。 「言ってろ。仕舞いに噛みつかれて大怪我しても知らねーからな。」 そしてまた、轟音と共に二つの大きな霊圧がぶつかり合った。 |