ヨソウガイノデキゴト 3











「些細、ね・・・」

一護が呟く。
そうしてルキアに背を向け、一歩踏み出した。
白哉へと向けられた顔に浮かぶのは小さな笑み。

口端を緩く上げるだけのそれが、今の白哉には酷く気に触ったのだろう。
白哉は眉を顰める。

「何がおかしい。」
「いや、何も?」

今此処で崩玉のことを話しても、突拍子無さ過ぎて受け居られる筈が無い。
だから・と一護は先刻の呟きに含まれていたものについてそれ以上告げるのを避けた。
そして話題を変えるように「それにしても・・・」と続ける。

「随分と悠長に構えてるじゃねえか。ルキア達と喋ってても斬りかかって来ねぇなんてな。」
「・・・誰に向かって口を利いている。私に貴様如きの隙を衝けと言うのか?」

両目を細め、白哉は静かに告げる。

「大層な口を利くな、小僧。」



ズッ・・・



その静かな口調に反して辺りを満たす霊圧が跳ね上がった。
ルキアや花太郎はその強大さに身動きとれずに膝をつく。
しかしそんな中、一護は平然とその場に佇み、やがてゆっくりと斬月を構えた。

(流石は隊長。)

剣八には及ばずとも、やはり他と比べて霊圧の桁が違う。
背後の二人にはさぞ辛いだろう。

「・・・ほう。この霊圧の中で顔色一つ変えぬか。随分と腕を上げた様だな。」
「・・・・・・。」
「死んだ筈の貴様が生きていたのも疑問ではあるが・・・まぁ良い。その拾った命、再度捨てさせれば良いだけだ。」
「・・・ハッ、」

白哉の台詞を聞き、一護の口から嘲笑が漏れた。

「生憎、アンタに捨ててもらうような命は持ち合わせちゃいないんでね。」
「―――大層な口を利くなと言った筈だぞ、小僧。」

瞬間、白哉の姿が消える。

(余裕だっつの。)

胸中で呟き、一護の姿も掻き消えた。
そして―――


「何処見てんだ?」

瞬歩によって一護の背後に回った筈の白哉の、更にその後ろ。
一護がニヤリと笑った。



ガンッ



斬月と千本桜が切り結ばれる。
一瞬の交錯。
白哉が剣を横に薙ぎ、一護はそれに逆らうことなく後方に跳んで距離を取った。

対峙する一護を見据え、白哉が漏らすのは嘲りを含んだ感嘆の吐息。
こんな事も出来る様になっていたのか・・・しかし所詮この程度、と相手を己より遥か下に見ている者の仕草だった。

「・・・瞬歩とは。どうやら思っていた以上に腕を上げたと見える。 仕方ない。ならば貴様がその力に自惚れる前に見せておいてやろう。」

そう言って白哉は顔の前で剣を縦に構える。

「―――千年足掻いても埋めようのない決定的な力の差というやつを。」
「だめだ一護!!逃げ――・・・」

この後、何が起こるのか嫌と言うほど理解していたルキアはハッとなって叫んだ。
しかし平然とその場に立ったまま、一護は動こうとしない。

焦りと恐怖に支配されたルキアの目の前で白哉が口を開く。

「散れ、」

その時、一護の口元が小さく弧を描いた。

(―――来た。)

始解の言霊を述べようとした白哉の眼前で、突如として斬魄刀が布に覆われた。
霊絡を思わせるその長細い布は刀身をすっぽり覆い隠し・・・そして、その布を持つのは小柄な人影。
すくっと立ち上がり、伏せていた顔が五人の前に晒される。
驚く気配は四つ。
ルキアと花太郎は突然の乱入に目を見開き、白哉と浮竹はその乱入者の正体に息を呑んだ。

「貴様は、」
「あれは、」

「「夜一!!!」」

一護が感じ取った気配の通り。
その場に現れたのは、先代隠密機動総司令官及び同第一分隊『刑軍』総括軍団長。
そして四大貴族の当主が一人―――四楓院夜一。






















・・・あれ?一護ってば夜一さんを「使って」る・・・?











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