頬をなぶる強風。
目の前の漆黒。
煌く長大な刃。

「これは一体・・・」
「そんな間抜けな顔してんじゃねーよ。ホラ、さっさと始めようぜ。センセイ。」

斬月を掲げて一護が笑った。












ヨユウトユダン 2











「ち、ちょっと待って下さいなっ!一体どういうことです!? キミは、朽木白哉によって死神の力を失ったはずだっ!!それなのに、その姿は・・・!」

全く予想していなかった、そして理解不能の事態に浦原が声を荒げる。

「え?あぁ・・・別に俺は鎖結も魄睡も、アイツに壊されちゃァいねーよ。 だから、人間の魂魄に戻ってもいない。ただ・・・そう、ただそれだけだぜ?」

流石に刺されたあとは気を失ったけどな・と続けて一護が苦笑し肩をすくめた。

「まぁ霊圧の方も無理矢理抑え込んでたから普通の人間みたいになってたし。 うまく騙されてくれたよ。ルキアもあの死神たちも・・・・・・そして、アンタも。」

でも俺だって好きでこんな事してたんじゃないんだけどな。

そう小さく付け足すように言った一護を見て浦原が驚愕の表情を和らげる。
そしてその代わりという様にやわらかな苦笑を浮かべた。

「ははっ・・・キミは本当に手厳く手強い子供だ。まんまとしてやられましたね。」
「あはは。まぁね。・・・でさ、他に訊きたい事は?答えられる範囲ならちゃんと言うぜ。」
「そうっスか?」

一護の言葉に浦原の瞳がやや真剣みを帯びる。

(元局長の血でも騒ぐのか?)
『かもな。』

クスリ・・・と相棒が笑うのを感じながら一護は浦原の問いを待つ。
おそらく訊きたい事は山ほどあるのだろう。

何故朽木白哉の攻撃を外せたのか。
一体どうやって魂魄体になれたのか。
どうしてこんな事をしているのか。








浦原が口を開いた。

「キミは一体・・・何?」

その問いに一護は少し困ったように笑って見せた。
自分すらはっきりとは分っていない質問にどう答えるべきか少しばかり思案。
そして。

「・・・ちょっと変わった死神の力を持った人間、なんじゃねーの?」

当たり障りの無い、そしておそらく確かなことだけ答えて、それ以上のことは口に出さず留める。
もしかすると“仮面の軍勢ヴァイザード”の亜種くらいには当たるかも知んねぇけど・と、
ふと、実は出し入れ可能な白い仮面のことを思い出してそんなことを思うが、確証が全く無いので却下。
それにその辺りは自身にとって特に問題にすることでもないので気にはならない。
ただ、護りたいと思うものをしっかり護れるだけの力があれば良いのだから。

「ふーん・・・ま、今はコレだけで止めておきます。また、そのうち質問させていただきますよ。」

浦原の納得していないと言う声に「そうか?」と返して一護は剣を構え直した。

「それじゃァそろそろ、センセイに稽古つけていただこうかな?」
「そうっスね。じゃ、行きますよ黒崎サン。」

そうして一息吸って、

「起きろ『紅姫』」

声と同時。
浦原が構えた杖に亀裂が走る。
甲高い音を立てながら現れたその刃が「キィィン・・・」さらに声高く啼いた。
まるで歓喜するかのように。

「オヤ、随分とご機嫌みたいっスねぇ。」

微笑み、浦原が帽子の影から一護を見つめる。
紅姫から最後に落ちた杖の欠片が地面に着き、それと同時に二人は地を蹴った。






















先に謝っときます。

浦原スキー様、ゴメンナサイ・・・!












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