後から追いついてきた雨竜を見て一護が叫んだ。

「なんでテメーはこんなことすんだよ!滅却師が死神に滅ぼされたのがそんなに憎いのか!?」

雨竜は近くにいた虚へと矢を放って一護に叫び返した。

「違う!そんな事はどうでも良いんだ!」

もう一度矢を放ち、それが対象を貫くのを確認して雨竜は続ける。

「僕の師匠せんせいは死神達のせいで死んだ・・・! 両者は力をあわせるべきだという師匠の言葉に耳を傾けることなく、死神たちは師匠を監視するだけ監視して、 巨大な虚が現れた時だってちっとも助けに来なかった!来たのは師匠が死んでから1時間もあとのことさ!!」
「・・・・・・・・・」
「だから僕は君の・・・死神の目の前で、絶対に滅却師の力を証明しなければならないんだ!」












ウゴキダシタモノ 4











「違うだろ?」

雨竜の近くにやって来て、一護が静かに告げた。

「テメーのセンセイの望みってのは、死神に滅却師の力を認めさせることじゃなくて、 死神と力合わせて戦うことだったんじゃねえのか?」
「それは・・・」

一護がニッと笑う。

「死神と滅却師は正反対!結構じゃねぇか! 大人数相手の喧嘩なんてのは背中合わせの方が上手くやれるモンだぜ?」
「黒崎!?」

一護が雨竜の肩を借りて飛び上がり、その背後にいた虚を斬りつけた。

「やらなきゃやられる。でも一人じゃキツい。だから仕方なく力を合わせる! ・・・そんなモンでいいんじゃねえのか?力を合わせる理由なんてのはよ!!!」
「・・・・・・なるほどね。」

呟いて雨竜は目の前の虚に矢を放つ。
それは直撃し、虚がぼろぼろと白い破片となって崩れ去った。
そうして場所を入れ替えるように立ち位置を変え、二人は背中合わせの態勢をとる。

「死神とか滅却師だとか、俺はそんなのどうでもいい。ただ俺は虚を倒してぇだけなんだ。」
「―――・・・なぜ?」

背中越しに一護を見つめ、雨竜が問うた。

「俺のおふくろは、虚に殺された。」
「―――ッ」

その返答に息を呑む。

「それが理由で虚を倒したいのか?そう訊かれりゃもちろんそうだ。 だけど、それだけじゃねぇ・・・なんて言うか、俺は、俺の同類を作りたくねぇんだ。」
「・・・・・・・・・」
「虚におふくろが殺されて、ウチの親父も妹達もキツい目に遭った。そんなのは、もういらねぇって思うんだ。」

一護が斬魄刀を一閃し、二体の虚を同時に屠る。
そしてどこか遠くを見つめるような表情で一護が口を開いた。

「そんなのは、もう見たくねぇ・・・そう思うんだよ。」

“人でも死神でも・・・悲しむ顔を見るのは、わしゃつらい。”
幼い頃、雨竜が聞いた師匠の言葉と一護の言葉が重なる。

「黒崎、君は・・・」
「世界中の人を守りたい・・・そんな夢みたいなこと言わねぇけど、 両手で抱えられるだけの人を守ればそれでいい・なんて言えるほど、俺は控えめな人間でもねぇ・・・」

一護は強い視線で前を見据える。

「―――俺は、山ほどの人を護りてぇんだ。」





「そう・・・・・・それじゃあ君が僕を許すはず無いね。」

話が終わるのを待って雨竜は口を開いた。
一護も視線だけ後ろに戻し、雨竜に告げる。

「当たり前だ。その山ほどの人間を巻き込むやり方をしたテメーを俺は許さねぇ。 けど、こんなことをグダグダ言ってる暇なんてないからな。 今は仕方ねぇけどテメーと手を組む。けど全部終わったら絶対一発殴らせろ!」
「上等だ!言っとくけど、タダで殴られたりはしないからな!」
「言ってろ!ゼッテー泣かしてやるっ!」
「出来るものなら!」

背中合わせで一護は斬魄刀を、雨竜は弓を構えた。
しかし虚達は空を見上げたまま一向に攻撃してこない。
その様子を見て一護は視線を上にやり、小さく呟いた。

「随分とお早いお着きで。」

空に出来たひび割れがひときは大きな音を立てて広がっていく。
まず最初に現れたのは巨大な爪。そして指。
手を差し込んで出来た隙間を広げながら次に現れたのは白い仮面。

「やっぱデケーな・・・大虚。」

メノスを見上げ、一護は微かに口を歪めて笑う。

『倒す?』
(いや・・・あの下駄帽子達の気配がする・・・チャドと井上もいるな。それにさっき小型の偵察機みたいなのも見かけた。)
『隠密機動か。』
(そうじゃねぇの?)
『じゃあどうするつもりだ?』
(ちょっと相手してから追い払う。)
『そ。・・・周りの雑魚は?』
(あいつらが何とかしてくれるだろ。)
『妙なところで他人任せだな。』
(利用できるものは何でも利用するだけさ・・・それが例え“浦原喜助”でも。)
『ははっ!随分ヤな性格だねぇ。』

「どうとでも。」
「黒崎?」

一護の言葉を聞き取って雨竜が不思議そうな顔をした。

「何でもねぇよ・・・さぁ!やってやろうじゃねぇか!」

一護が剣を構える。
それを見て雨竜は慌てて叫んだ。

「なっ!?作戦もなしにどうするつもりだ! この数とあのデカいのを相手にただ突っ込んで勝てるわけが無いだろう!」

それを聞き、一護が雨竜に目を合わせて微かに笑った。
そして雨竜だけが辛うじて聞き取れる音量で告げる。

「大丈夫さ。」
「は?何を根拠に・・・」

雨竜の言葉を遮るように突然「ガガガガガッ!!」という連射音があたりを満たした。
倒れる虚。その陰から現れたのは小さな黒髪の少女―――紬屋ウルル。

「・・・こ、こんにちは・・・・・・」

そう言ってぺこりと頭を下げる。
見た目か弱そうな少女が自分の身長以上ある巨大な武器を持っている姿はなんとも奇妙な光景だが、 その後ろに立っている人物をみれば納得できるかもしれない。
右手に持った扇子を掲げ、その人物―――浦原喜助は明るいのんきな声で言ってみせた。

「黒崎サーン!助けに来てあげましたよーン♪」






















一護が黒い(汗)











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