「お前は・・・ッ!」
そう口にした後、一護は飴玉のようなものを飲み込み体をコンに預けて死神となった。 改造魂魄を使って「普通 」に死神化した一護はきつく雨竜を睨みつけ、その場から走り出す。 (誰も傷つけさせやしねー!でも、こんなことゼッテー・・・) 「許さねーからなっ!」 そう言い残して。 ウゴキダシタモノ 2
一護は大刀を背負って街を駆けていた。
(この町で霊力が高いヤツと言えば・・・) 『夏梨、茶渡、井上。それから有沢にルキア。』 (マジ?) 『ああ。お前の霊圧に周りのヤツラも随分と影響されてるからな。』 (ぐぅの音も出ねぇよ・・・) そう返して、一護は角を右に曲がる。 「まずは家までの虚を一掃しとくか。」 生まれつき霊力の高い夏梨だが、虚に対する力は全く持っていない。 逆に一護の力に影響されて目覚め始めている者達は、何かの弾みで特別な能力が備わる可能性が高い。 つまり虚を撃退するための力を。 なので、初めに夏梨の安全を確保しようと一護は斬月を構えた。 「質より量で来られるのが一番厄介かもしんねぇ・・・」 そう言って、目の前の虚をすれ違いざまに切り伏せる。 『体は一つしかないからな。』 「ホントホント。ちょっと本気出さねぇといけねぇかも。」 呟きが残り、その場に黒い残像が生まれた。 「・・・よし!」 家と小学校、そして夏梨がよく遊んでいる空き地までにいた虚を片付け、一護は呼気と共に呟く。 そのまま走って階段を駆け上がり、空き地に足を踏み入れた。 感じるのは僅かに残った虚の気配。 それと――― 「やっぱ夏梨は此処にいたみてぇだ。それにこれは・・・」 『茶渡が目覚めたようだな。』 この場に最も強く残っていたのは一護がよく知っているチャドの気配。 どうやら此処で虚に襲われて何かの能力に目覚めたらしい。 地面が一箇所大きく抉れていることから推測すれば、おそらく打撃系の力か。 「とにかく二人は大丈夫だろ。・・・って、あの下駄帽子、此処に来てたのか・・・」 かなり気を付けなくては見過ごしてしまいそうなほどうっすらとしか残っていない浦原の気配を感じて、 一護はそう付け足した。 『何だろ・・・』 「さぁ?」 何故こんな所にいたのかわからないが、今はそれを考えるよりも先にしなくてはいけないことがある。 ―――守るべき者を護る。 「とにかくちゃっちゃとやるか!」 一護は踵を返し、今度はその足を空座第一高校へと向けた。 「次は井上たちか・・・たつきが部活やってるから、まだ学校にいるだろ。」 そう言って走り出そうとするが、突然一護は足を止めて空を見上げた。 突き抜けるような夏の青空に小さなヒビ。 それが徐々に大きくなっていく。 「これが“空紋が収斂を始める”ってことか・・・?」 呟き、一護はそのヒビの真下へ足を向け直した。 「井上ンとこも何とかなるかな。」 『ああ。茶渡もが目覚めたんだから井上だって大丈夫だろ・・・彼女は茶渡より多く死神姿のお前と接触してるし。』 「だよな。それじゃ、お迎えに上がりますか。」 『大虚の、な・・・』 虚達がそのヒビを目指して集まっていくのを見つめ、一護は空を蹴った。 |