バキンッ!
胸の孔を広げられた男の霊に無数のひび割れが走った。 叫び声をあげて、その体が爆散する。 スイヨウビノダイメイワク 3
(間に合え・・・!)
一護が地を蹴って疾走する。 男の地縛霊の脇をすり抜け、その体に杖を突き立てている人物の襟首を掴んだ。 そのまま勢いに任せて引っ張り、自分より大きな体を抱え込むようにして庇う。 同時に、大きな破裂音と重い衝撃。 「・・・ッ」 一護は背を丸めてそれに耐える。 (やっぱり爆散しやがった・・・何処に出てくる?) 塵となった霊が虚として何処に出現するのか。 浮遊霊ならばその場所はランダム。 この場で再構成されるとは限らない。 しかし地縛霊のように何かに心を捕らわれた者の場合は・・・ (この近くに必ず現れる。) 虚の出現に備え、神経を研ぎ澄ます。 「YEAHHHHH!!ミッション!コンプリィィィィッ!!」 その直後、一護の隣で叫び声が上がった。 ドン・観音寺が浄霊成功の合図を出したのだ。 広場に集まった一般人にしてみれば、突如として観音寺が弾き飛ばされたように見えたため、 一同唖然とした表情であったが、その声を聞き一斉に歓声が起こる。 「あんた・・・ホントにあれで成仏したと思ってんの?」 観客の“カーンオーンジ!”というコールに答えていた観音寺が一護の方に向き直った。 「オフコース!!私の浄霊にミスなどないのさ! ボーイも浮遊霊なんだろう?安心しな!あとでバッチリ浄霊してやるから!」 そう言ってビシッと親指を立てる。 「別に俺は浮遊霊じゃないんだけどねぇ・・・」 再び観客の方を向いて手を振っている観音寺に一護はポツリとこぼした。 その間も虚の出現場所を探りつつこの場所でどう戦うのが良いか策をめぐらせる。 一般人を傷つけるわけにはいかない・と。 突如、一護は頭上にその気配を感じた。 (屋上か・・・!) 廃病院の上方を睨みつける。 そこには徐々に集まりつつある白い何か。 一護の様子に気づいた観音寺も同じ方向に視線を移す。 「な、何だ!?あの怪物は!!」 やはりこの男、霊は見えても虚については何も知らないらしい。 白いものが集まって形成されたもの―――それはどこか人型に似ており、白く横長な仮面をかぶっていた――― を見て、その顔に冷や汗を浮かばせている。 しかしそうであっても、 「感じるぞ・・・!スーパーデンジャーな霊の匂いがビンビンとォ!!」 観音寺は虚を見て「さては仇討ちに現れた悪霊の親玉か!!」と拳を固めて叫んでいる。 「ゴタゴタ言うのはいいからっ!さっさとココから逃げてくれ!!」 一護が観音寺の腕を掴んで引っ張る。 虚を知らぬ者がそれと戦えるはずも無い。 此処にいてはただ危険なだけだ。 そう思って一護は叫ぶが観音寺はそれを突っぱねた。 虚が屋上から飛び降りる。 「逃げるんだボーイ!ここは私に任せておけ!!」 「・・・な・・・」 「カモン悪霊!新世紀のカリスマ霊媒師、このドン・観音寺が相手だ!!」 観音寺がステッキを掲げる。 (こぉのバカ野郎が!何考えてやがんだ!?) 一護が大きく舌打ちし、観音寺の前に出た。 斬魄刀を両手で支え、虚から与えられる衝撃に耐える。 そのまま力いっぱい刀を振るって虚の体を弾き飛ばした。 「なんで逃げねぇんだよ!あんたにアイツの相手は無理だって判んないのか!?」 後ろを振り向き一護が叫ぶ。 「何を言う!!私は逃げんよ!私は逃げるわけにはいかないんだ!!」 「・・・どういう意味だ?」 怪訝そうに一護が問い返す。 しかし答えが返る前に一護の背中めがけて虚が飛び掛ってきた。 すぐさま反応し、それを斬月で防ぐ。 (くそっ・・・鬱陶しい野郎だ!) このまま本気を出して倒してしまっても良いのだが、 ドン・観音寺の「逃げるわけにはいかない」理由が頭に引っかかってそれは少し躊躇われた。 (とりあえず他の奴らは巻き込まないように・・・) そう思い、一護は観音寺を捕まえ、ガラスを突き破って廃病院の中へと入って行った。 |