虚を倒した後、一護とルキアは急いで学校に向かう。
どうにもこうにも、イヤーな予感がするためだ。

(何事も無けりゃいいんだけど・・・)
『お前、アレで結構イメージ作りとかやってるしな。
自分の体で変なことさせるのだけは避けたいわなぁ。』

一護の中でクスクスと笑い声が響く。

(くそっ、他人事だと思いやがって・・・)
『だって他人事だしな。』

一護とその相棒は二重人格というわけではないので、実際に彼の言う通りではある。
言う通りではあるが、やはり同じ体に在る者として些か腹が立つというか何と言うか・・・

相棒に何か言い返す代わりに、一護はチッと舌打ちして先を急いだ。












トウソウトツイセキ 3











ガシャン



一護たちが校舎に着いたとき、ちょうどガラスの割れる音が聞こえた。
一護は校舎の3階を見上げる。

「ありゃウチのクラスじゃねぇか!」
「は、早く行かねば・・・ッ」

ルキアが走り出そうとしたとき、窓から飛び出してくる人影が・・・

「・・・!そんなトコから飛び・・・誰のカラダだと思ってんだァ!?」

一護が顔を青くする中、3階から飛び降りて無事着地した体は 二人の姿を確認するなり凄まじい速さで走り出した。

「なっ!?」

驚く二人の脳裏によぎった言葉はただ一つ。

(改造魂魄か・・・!)














「ああ!ちくしょう!!」

改造魂魄を追って街に出た一護が叫ぶ。

「見失っちまったじゃねぇか!!俺を!!」

『モラトリアムか。』
「モラトリアムだな。」

頭の中からは相棒の声。
横からはルキアの声。

「そんなわかりづらいツッコミしてる場合か!!」
(お前もだぞ!)

一護はとにかく両方に突っ込み返して頭を掻く。

「ちゃんと俺・・・っていうかアイツをつかまえねーと・・・」
「ややこしいな。」

ごもっとも。















そして改造魂魄が入った体を探してしばらく進んだ後。

「・・・なぁルキア。」

一護がルキアに背を向けたまま声をかけた。

「何だ?」
「改造魂魄って尸魂界の尖兵計画用に作られた擬似魂魄だろ?」

ルキアは一護がそこまで知っていたことに少々驚く。

「ああ。計画は完全成立する前に廃案になったがな。」

そして廃案と同時に開発途中のものも含む全ての改造魂魄の廃棄命令が出された。

「・・・そうか。」

一護は止まっていた足を再び動かしだす。

(尸魂界の都合で勝手に生み出されて、勝手に殺されることになって・・・。 何とかソコから生き残ってやっと体を手に入れたけど、それでも逃げ回んなきゃいけねぇ・・・)

一護は蒼く晴れた空を見上げ、眉間の皴をさらに増やす。

(・・・それって、どんな気分なんだよ・・・・・・)



ザワ・・・ッ



一護にとってある種感じ慣れた気配。

「・・・!ルキア、虚が出た。それもかなり近い。」

一護のセリフに僅かに遅れて、ピピピッとルキアの携帯電話から電子音が聞こえてくる。
「くそっ・・・指令を伝えるのが遅いわっ!」

ルキアは軽く毒づき、一護について走り出す。
少し走ると巨大ないもむしの様な虚の姿が視認できた。

「見えた!・・・?もう既に誰か戦ってんじゃねえ・・・」

一護の言葉は途中で切れる。
虚と戦っているのが自分の体だと気づいたためだ。
改造魂魄が入った一護の体は左肩から血を流し、虚と対峙している。

「あのボケェ・・・!!」

わなわなと怒りに震えて一護が走り出す。
そして跳躍。
落下速度も利用して、

「はぁっ!!」

改造魂魄に攻撃しようとしていた虚の腕を切り落とし、そのまま勢いを殺さずに頭まで一気に切りつける。

「ったく。こんなザコ相手にケガすんなよ!ってオイ!」
「あっ・・・」

改造魂魄は何かに気づいたようにそれを無視し、一護に斬られた勢いで飛んで行く虚へと走り出す。
追いつき、ドンッと鈍い音を立てて虚を蹴り上げる改造魂魄。
そのまま柵の外に落下しそうになった体を死神姿の一護が掴み上げる。

「何つームチャすんだテメェは!?あいつがココに落ちたら困るみてーに・・・」

怒鳴る一護だが、自分の足元にあるものに気づいて言葉を切る。

「アリの行列・・・?オマエまさか、これをツブさねーようにあんな事を?」
―――まるで全ての生物の生を願う聖者の様に。

「そ、そうだよ!悪ィかよ!俺は何も殺さねぇんだ!!」

それは生まれた瞬間に死ぬ日付が決まっていた彼だから言える言葉か。

「毎日脅える中で、ずっと考えてた。 命なんて他人が勝手に奪っていいモンじゃねぇんだ・って・・・」

彼は一護を見て叫ぶ。

「こうして生まれてきたんだよ! オレたちだって、自由に生きて自由に死ぬ権利ぐらいあるハズじゃねぇか!!」



『自由に、ね・・・』

それは白い彼の皮肉の言葉か。



「だからオレは殺さねぇ・・・何も、殺さねぇんだ・・・!」






















白一護、なにやら意味深な発言をかましております。

って、まあ、自由に生きて自由に死ぬ権利ってコンが言ってますが、

それに対して自分が一護にさせていることは・・・って考えてるんですけどね。

確かに白一護によって一護は力を得ましたが、

その代わりいつ死ぬとも分からない生活を送る羽目になってしまったんですから。

普通に高校生活を送っていればありえなかったことです。

・・・この物語の白一護ってかなりイイヒトですね・・・












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