自らの力で死神になることが出来た俺は、それから本格的な修行に入った。 斬術はもちろん、今回は夜一さんも先生になってるから残り三つの戦闘方法である白打・歩法・鬼道もな。 けどまぁ、元の才能と言うか何と言うか、斬術・白打・歩法はそれなりに成長も見られたのだが、鬼道はもう・・・笑うしかない。 たまに成功することもあるが、殆どは不発か大爆発。 両極端すぎるぞ俺。 どうやら元々持っている霊力の大きさに、それを操る技術が全く追いついていないらしい。 よって、まともな鬼道を使えるようになるには、もっともっと修練が必要なのだとか。(それでも怪しいと言われたことには耳を塞ぎたい。) 霊力が無いよりはマシかもしれないが、何だかなァだ。 しかしそんな状態ながらも俺は修行をする傍ら、井上のこと(井上の兄貴が虚になって井上を襲ったやつ)やらチャドのことやらを順調に片付けていった。 ちゃんと井上と井上の兄貴に話もさせたし、チャドに怪我を負わせないようにもしたぜ。 特に後者。 井上のことは『二周目』通りにやるだけで良かったが、チャドに関して『今回』は『前回』の反省を踏まえて少し前からアイツの周りに気を配り、チャドに鉄骨を落とそうと虚が現れたところで昇華、そしてインコのシバタを尸魂界に魂送してやった。 シバタには(チャドの代わりとでも言うように)俺のことを「オレンジのお兄ちゃん」と覚えられてしまったわけだが・・・ここは『一周目』のチャドのように「おじちゃん」とならなかったことに胸を撫で下ろしておくべきだろうか。 はい。 そしてやって来ました6月7日。 おふくろの命日。 そして彼女の仇―――グランドフィッシャーが俺達の前に現れる日だ。 おっと忘れるところだった。 コンのことだが、あいつなら今まで通りだ。 『一周目』『二周目』と同様に、ルキアの手には粗悪品のソウル・キャンディが渡って(浦原さん、ちょっと気を抜いてたんだろうか・・・まぁいいけど)、俺達と浦原さん達の間でひと悶着。 その時の俺と浦原さん(達)は、ルキアがいる手前、一応初対面のフリをしておいた。 何故かと問われれば「何となく」としか答えようが無い。 けれどそういった所をあまり大きく変えてしまうのは少々躊躇われたから、なんだろうな、たぶん。 あらかじめ打ち合わせをしていたわけではない俺達は、コンを追って鉢合わせたビルの屋上でアイコンタクト(って言っていいのか・・・?)を交わしただけだったし。 あ、知り合いであることの説明が面倒だったから、かな? まぁいいや。 とにかくそんなわけで、コンはまさしく「今まで通り」。 ヌイグルミの身体を与えて日常を騒がしくするのに一役も二役もかってくれている。 もちろん6月6日の朝だってそれは変わらずだった。 「ウルァ!!起きろ一護!!朝だぞ!!モーニン!だ。モーニン!」 「・・・・・・・・・。」 思わず眉間の皺を深めちまうくらいにな。 それはさておき。 冒頭に戻って6月7日。 俺と家族は学校(と仕事)を休んで墓参りにやって来た。 一緒ではないが、ルキアもついて来ている。 虚が現れた時のためなのか(コンがいるけどな)、それとも前夜の俺の「おふくろの命日」発言が気になったのか。 ・・・どっちも、だろうな。 『今回』は墓地での自由時間中にルキアと合流し、隠しておく必要も無かったので彼女に俺のおふくろのことを話してみた。 『前回』『前々回』と比べてその時の俺の心情が随分安らかになっていたのには自分でも驚いたが、まぁそういうものなのかもしれない。 マヒしちまったのか。 それとも今度こそ仇を取ってやると思っているからだろうか。 自由時間の終わりを告げる珍妙な笛の音が聞こえ、俺はルキアと別れて親父の元へ向かった。 で、妹達が来ないのでそれを探すためにもう一度その場を離れる。 グランドフィッシャーの気配を感じながら。 「・・・コン、頼むぞ。」 義魂丸を飲み込んで(『今回』も丸薬のまま連れて来た)死神化し、相手の返答を聞く前に走る速度を上げる。 背中の斬魄刀はもちろん斬月。 最初、ルキアに見られた時は不審な顔をされたが、「他人に力を譲渡すればこういうことも起こり得るだろう」と(少々無理やりに)納得してくれた。 よって現在は何の問題も無い。 『前回』は記憶があっても能力不足の所為でグランドフィッシャーを倒すことが出来なかった。 でも『今回』は違う。 記憶も力も過去二周分、きっちり持っている。 だから―――。 |