燬鷇王との戦いは『前回』の白哉戦とは違い、(当たり前だが)何の会話も無く単純に終了した。 俺が卍解して黒い月牙天衝を数発お見舞いしただけだ。 相手は、力は強いが動きはそれ程速くないし、スピード系の俺にとって奴の突撃を躱すのはかなり簡単だった。 折角の卍解も素早さを上げるためではなく通常よりも強力な月牙を撃つためにやっただけだったしな。 ・・・で、今は後から来た井上達と合流し、双極の丘を下りたところだ。 『前回』通りならもうそろそろ黒幕は藍染達でしたっていう連絡が来るはずなんだが・・・。 「どうしたの黒崎くん。なんかそわそわしてるみたいだけど。」 「ん?いや、何でもねえよ。」 井上の心配そうな顔に笑い返して、オプションとばかりにパタパタと手を振る。 いやしかし。 この後の展開を知っている身としては、四番隊からの連絡が来る前であっても双極の丘に戻りたいと思っちまうな。 『前回』は、あと少しでも遅れていたら恋次が藍染に斬り殺されていただろうから。 『今回』も、そろそろ黒幕の三人と恋次・ルキア達があの場所に集まっている頃だ。 立ち止まりそうになる足をのろのろと進めて双極から離れて行く。 と、その時。 ようやく待っていた連絡が脳内に届いた。 「俺は双極に戻る!」 「黒崎くん!?」 「黒崎!」 「一護っ!」 何事かと皆のように足を止める時間すら今は惜しいんだ。 石田の解説を聞くこともなく、俺は皆に背を向けてもと来た道を走る。 見据えた双極の丘では大きな土煙とそこから突き出た蛇のようなもの。 霊圧の振れも伝わってくる。 これは・・・恋次の卍解か。 ルキアを助けに来るまでの道のりであまり力を消耗せずに済んだおかげか、『今回』の恋次は藍染相手に卍解をすることが出来たらしい。 これで前よりは更に余裕があると思う。 しかしアイツだけで藍染を倒すことはまず不可能だ。 そうそう気楽に行けはしないだろう。 卍解をしたままだった俺は天鎖斬月を握り締め、スピードを上げた。 |