海燕。姓は志波。 その人は空鶴さんと岩鷲の兄であり、現在は空席となっている十三番隊の副隊長だった。 俺とはタレ目気味な顔や笑った時の表情、そして時折その言動すら似る所(もしくは思い出させる所)があるらしい。 兄弟という血の繋がりを持つ岩鷲達が何も言わなかったのは、家族が他人と自分に近い血族を間違えないというやつの所為だろう。 誰からも慕われていた志波海燕はある日、一匹の虚と戦った。 それが原因で彼は死亡したわけだが、問題はその虚。 そいつは触れるだけで斬魄刀を消すことが出来、死神と融合する能力を持っていたらしい。 ―――かつて藍染が作った虚だ。 まさかそんな所で繋がっていたなんて。 志波海燕が死んだのもルキア達が心に傷を負ったのも、全ての原因はあの男に収束していたのか。 話を聞き終えた後、俺は無意識の内に考えを声に出していた。 「じゃあ俺がしようとしていることは海燕って人の仇討ちにもなるってことか・・・」 「っ!?どういうことだ一護!!」 呟きを聞いたルキアが掴みかかってくる。 牢に入れられていた所為で体力も消耗しているはずなのに物凄い力だ。 それに白哉や浮竹さんの気配も変わった。 驚愕、訝しみ、戸惑い。 色んな感情が混ざった目をしている。 ・・・・・・。 これは話すべきなんだろうか。俺が知り得た藍染惣右介のことを。 その男は何者かに殺されたと、未だ騙されている彼らに。 信じてもらえるのか? それを言うことで何かが変わるのか? わからない。 でも必死な表情を浮かべて縋ってくるルキアを見ながら口を噤むなんてことは、今の俺には到底出来そうになかった。 「その虚を作った人物を、俺は知っている。」 「教えてくれ!海燕を、あいつの妻を、沢山の死神達を殺したのは誰なんだ!!」 叫ぶ浮竹さんを視界に入れ、俺は告げた。 「藍染惣右介。死を装い、中央四十六室に成り済まして今回のルキアの不当な処分を決定したのもそいつだ。」 |