「久しぶりじゃねーか、一護。」 「なん・・・で、お前が・・・」 足の下には高層ビルの壁面。 横手に見えるのは青い空。 そして、正面で嗤う白い影。 ―――俺の中に居る虚。 「“なんで”とは御挨拶だな。お前がいるなら俺もいるに決まってンだろう?俺と初対面ってわけでもあるまいに、それくらい察しやがれ。」 「っ!お前、俺が繰り返してること知ってるのか!?」 「知ってるも何も、お前と一緒に戻ってきただけさ。俺も、斬月さんもな。」 なんだよそれ。 つまり目の前の奴だけじゃなく斬月もこの状況に気付いてるってことなのか? じゃあなんでずっと現れてくれなかったんだ。それに、今も―――・・・ 「一護。」 「斬月・・・?」 白い影の隣にいつの間にか黒い影が立っていた。 「ようやく会うことが出来たな。」 「どういうことだよ。」 「私はずっとお前に再会したかった。しかし今の今までそう出来なかったのだ。」 「何故、」 黒い影は首を振る。 「わからない。お前の本来の力はすでに『前回』で目覚めていたというのに、気がついた時にはまた私の声がお前に届かなくなっていた。」 「気がついた時には・・・?それっていつ頃なんだ。」 「お前が朽木ルキアから死神の力を渡された時だ。」 となると、斬月が戻ってきたのは俺よりも少し後ってことになるのか。 ルキアから力を貰うことが斬月帰還のスイッチになってた可能性もあるな。 「じゃあなんで今、こうして再会することが出来たのかわかるか?」 「お前が危機に瀕したから、と考えることが出来る。」 「それと浦原喜助につけられた胸の傷だな。」 斬月の声にそう続けたのは隣に立つ白い虚。 俺と同じ顔でニヤニヤ笑いながら胸の中心を拳で叩いていた。 「グランドフィッシャーや阿散井恋次とは比べモンにならねえ殺気と霊力で魄睡ギリギリの所をぶっ刺されたんだ。マジで死ぬと思って覚醒したんだろうよ。」 「・・・嫌な覚醒方法だな。」 「だが、この前の時と似たようなモンだろ?」 「『前回』のレッスン2、か・・・確かに。」 後頭部を掻きながらそう返す。 しかし俺、なんでこんな奴と普通に会話してるんだ。 虚なのに。 尸魂界で色々助けられたからか? 白哉と戦ってた時も一応、助けてもらったことにならないわけでもないんだし。 「ま、とにかく。これでお前は“仮”じゃなくて本当の死神になれたわけだ。前みたいに会話も出来るようになったことだし、よろしく頼むぜ相棒。」 「斬月ならともかく、お前と相棒になったつもりはない。」 「つれないねえ。」 白い影はそう言って肩を竦ませるが、わざとらしすぎて腹が立つ。 「つれなくて結構。」 「はっ!別にいいけどな。斬月さんがお前の相棒だって言うんなら俺もそうなんだってこと、そのうち解らせてやるよ。」 「あっそ。・・・んじゃ、俺は帰るぜ。」 「おう。また来いよ。」 「また来てやるよ。“斬月に会うため”にな。」 そう言えば、白い顔が少しばかり面白くなさそうに歪む。 隣で斬月が苦笑してから俺を見た。 「また会おう、一護。」 「ああ。」 斬月に別れを告げると視界がホワイトアウトして、気がつくとビルの壁面ではなく乾いた地面の上に立っていた。 戻ってきたのか・・・。でもなんで立ち上がってるんだ? 俺は一応、浦原さんに刺されて倒れてたはずなんだけどな。 周りには砂埃が舞っていた。 その向こうに、こちらを見ている浦原さん達。 なんだ?すっげえ警戒されてるように見えるのは気のせいか? しかも紅姫が始解状態になってる。 ・・・つーか、視界が狭いことに今気付いた。 目を半開きにしているわけでもないのに普段より視界が狭まっている。 まさかと思って顔に手をやってみると皮膚には有り得ない硬質な感触。 おいおいマジかよ。そりゃ警戒されるわけだ。 「なんつー土産を寄越してくれたんだよ、アイツは。」 呟き、俺は顔に張り付いた“仮面”に手を掛けた。 案外簡単に外れたそれを懐に収納して(じゃないと今度あっちの世界に行った時、なんだか白い方に詰られそうな気がしたのだ)、もう平気だと言うように手を振る。 背中には記憶通りの斬月の重み。 近づいてきた浦原さんにその斬月を見せながら、本当の意味で死神になれたこと、そして斬魄刀の名前を知ることが出来たというのを話し、勉強会が再開された。 既に月牙天衝を撃てるようになっていた俺が『前回』と似たような感じで浦原さんの帽子を落としたのは、それからすぐ後のことだったりする。 あ、ちなみに。 俺も斬月も白いのも『前回』のことを覚えていたお陰か、本当の意味で死神になった俺はもう卍解も出来るらしい。(斬月談) となると、これからの時間は『前回』よりも強くなるために当てることが可能なので、かなりありがたいと言える。 ―――今度こそ、藍染を倒すためにも。 |