今回、浦原商店の地下勉強部屋で学んだこと。 地下に初めて降りた時、叫ばなくてもいいから「すげえ・・・!」といった風にハッキリ声に出して驚いて見せると浦原さんが横で「どっひゃー!以下略」と叫ばなくなる&テッサイさんとの友好度が早々にプラス1される。 これは中々ありがたい。 少なくとも俺の鼓膜と精神には。 そしておそらく(近い)将来的には夕飯かその辺りに何か良いことが起こるかも知れない。・・・起こると良いな。これでも食べ盛り・育ち盛りの高校生なんで。 さて、ここで行なわれる肝心のレッスンについてだが、『今回』はどうも一種類だけになるらしい。 魄睡と鎖結を破壊されたわけでもないので、当然と言えば当然か。 でもって俺が一体どんなレッスンを受けるのかと言うと、それはいきなり「VS浦原さん」だった。 つまり『前回』のレッスン3、帽子落としだ。 ただし今の俺は自身の力による死神化は出来ておらず、また斬魄刀は折れていない。 だからなのか、例の杖で死神化させられて早々、浦原さんにパキンと、それはもう呆気なく素手で斬魄刀を折られてしまった。 「これでキミはまともに戦えなくなった。まあ、元々どうしようもなく脆い刀ではありましたけどね・・・。」 「つーことは俺が自分自身の力で死神化して斬魄刀を出さねえと、俺は一生アンタに勝てない・・・それどころかサクッとやられちまうってことだな。」 「よくお分かりで。」 そう告げて目の前の大人は剣を抜く。 「これ、ちゃんと霊も斬れますんで。気ィ抜いてると本当に死にますよ。」 「了解。」 「なら結構。それじゃ、頑張ってくださいね。」 言い終わるのと同時、どちらともなく駆け出してレッスンがスタートした。 「早く自分の斬魄刀を出しなさいな。でなきゃアタシに殺されますよ?」 「解ってるっての!」 叫びながら上からの一閃をギリギリで躱す。あ、髪の毛が・・・。 浦原さんの言っていることはこの場合正論で、俺もさっさと斬月を出したいのだが、肝心のその出し方が解らない。 『前回』のレッスン2で死神化した時は本当に無我夢中だったし、レッスン3で斬月の名を呼んだ時も追い掛けて来る浦原さんが恐くて堪らなかったから、今のこの条件でどうやって斬月を出せばいいのか全くもって不明だ。 戦っていればそのうち何とかなるんじゃないかと思ってみたが、それもどうやら駄目らしい。 なんだかちょっと焦ってきたぞ。 このまま斬月が出せずにいると確実に俺は死ぬだろう。 そう感じるくらい相手からは殺気がビンビン出ているし、そうでなくても経験から考えて、このままだと尸魂界の奴らには絶対に勝てない。 苦し紛れに繰り出す折れた斬魄刀も始解前の紅姫にいとも容易く刀身を破壊されてしまって、もう柄の部分しか残っていなかった。 頼む、斬月。 俺の声が聞こえているなら応えてくれ。 アンタは言ったよな。 “朽木ルキアの力によって目覚め始めていたお前の力は、朽木白哉の攻撃の寸前に魂の奥底へと身を潜めた”って。 でも『今回』は魄睡も鎖結も壊されなかった。 だから俺自身の死神の力も奥に隠れたわけじゃないんだろ? その力を引き出すために、ほんの少しでいい。俺を手伝ってくれ。 今度は待たせない。すぐに名前を呼んでやれるから・・・! 「・・・言ったでしょ?気を抜いていると死にますよって。」 「なッ・・・、」 紅姫が俺の胸に刺さっていた。 「大丈夫。魄睡も鎖結も外しましたから今すぐには死にません。しかしキミ・・・本当にやる気あるんスか?こんな時にまで上の空になられると流石のアタシもキミの本気を疑ってしまいますよ。」 その台詞には色々反論したいのだが、胸の激痛とせり上がってきた血に邪魔されて全く何も出来ない。 ズルリと刀が引き抜かれ、身体は重力に従って地面に倒れた。 胸の中心が痛い。熱い。 傷口からは拍動に合わせて血が溢れだしてくる。 遠くからテッサイさん達が慌てて駆け寄ってくるのが見えた。 と、その時。 ・・・よぉ、一護。 目の前が真っ白に染まった。 |