チャドとインコのコトが済んだ翌日、学校では制服が冬服から夏服に変わった。
そして今朝、いつも通りルキアに朝食を運んでいくと彼女の姿は既になかった。 これから予想できる事が一つ。 「あー・・・ついに来たか。」 もし『前回』と同じ通りなら。 おそらく今日、『コン』と初めて出会うことになるのだろう。 学校に行けば、シバタユウイチの魂が抜けたためにボキャブラリーの極端に減ったインコを囲んで、それなりに話が盛り上がっていた。 おかしくなったインコ(いや、これが普通なんだが)を不思議がって水色がチャドに訊いてみても、チャド自身は「今朝起きたらこうなってた」とだけ。 記憶置換が無事に済んでいるらしいことを確認して俺はほっと安堵の息をつく。 さて、そんな所に現れたのは、浦原商店帰りの朽木ルキア嬢。 「みなさん、おはよう!」 と素敵笑顔で・・・・・・あ、冬服じゃねーか。 更衣期間を過ぎてもそのまま・ってのはなぁ・・・ つーか義骸って暑さ寒さは関係ねーのか? きちんと後で言っておかなければ・と思っていると、突然、鈍い衝撃。 そして俺の意識は途切れた。 目覚めてみれば、そこは校舎裏。 どうやらあの衝撃はルキアのパンチによるものらしい。 俺が考え事をしている間、結果として彼女の声を無視してしまったのが原因だとか。 何も殴る必要はなかろうと怒るべきか、それとも保健室に行くと言って俺を引きずって来た彼女を凄いと思うべきか・・・ 微妙な所で悩んでみたりしたが、ひょいっと投げられた物を受け取り、意識をそちらに戻す。 「ほれ!」と渡されたのはSOUL*CANDYと書かれたアヒルの顔つきのケース。 彼女曰く、いつもいつも俺がルキアのグローブを持っている訳にもいかないため、この前のチャドのときのように俺一人で死神化する必要があったときにはこれを使えばいい・とのこと。 さぁ、ここで問題だ。 俺がこのままコレを所持していても、『粗悪品』を回収に来た浦原さん達に持って行かれるのは必至。 ルキアもコンがどういったものか知っているだけでは簡単に良品と交換してしまうだろう。もし代わりに渡された義魂丸がウサギのチャッピーだったりした場合には100%の確率で。 つまりコンが辿る道は廃棄処分、ただ一つ。 まだ『今回』では俺が一方的に知っている身でしかないけれど、やっぱりそんなのは嫌だ。せっかく生まれてきた命がそうやってみすみす殺されて良いわけない。 ・・・ってのは、キレイ事かもしんねーけど。 まぁ・・・コンだから死なせなくないんだろうな。口も態度も悪ィけど仲間だったし。 それじゃあ、コンの廃棄処分を免れるためにはどうすれば良いか? これは『前回』同様、コンをこっちの仲間にしてしまえば大丈夫だろう。浦原さんは何か言ってたみてーだけど、結局上手くいった。 そういえばこの時、あの人と交渉してたのはルキアだったよな・・・『今回』はどうしよう。 コンが俺の体で色々騒ぐ ↓ 途中、虚を発見。コンVS芋虫型の虚 ↓ 俺の体はズタボロ&近所の皆様の記憶やテレビ局の映像をどうにかしないとマズいことに ってのは正直ご勘弁願いたい。 記憶の操作とかは浦原さん達がやってくれたけど、精神的な疲労が溜まるというか・・・ できることなら『前回』のような騒動は避けたいと思いつつ案を練っていると、ルキアの携帯からピピピッと電子音。 「むっ!?指令だ! 丁度いい!今回はそれで死神化してから現場へ向かうぞ!」 「・・・はい?」 「何を呆けておる!さっさと飲まんか!」 こちらを指差して言い切ったルキアに少々焦る。 どうやら今度も時間切れらしい。後はどうにでもなれ・と? 彼女は義魂丸で死神化させる気満々で、虚がもうすぐこの地区に現れる。 もう、迷ってる暇も考えてる暇も在りはしない。 仕方ないかと諦め、俺はアヒルの顔を押した。 飛び出たキャンディーを飲み込み、一瞬の間が空いて体から引き剥がされる感じ。 俺はそのまま体が倒れこまないように抱え込んで、ルキアに気づかれぬよう耳元で囁く。 「お前のこと、廃棄されないようにするから此処で大人しくしとけよ。」 それを聞いてコンがギョッとするが、俺は構わずルキアと共に虚の出現場所へと向かった。 だがまぁ、俺の考えは甘かったらしい。 「コン」はやっぱり「コン」だったのだから。 虚を片付け、学校に戻ってみれば――― 「キャー!」 ガシャン 女子の悲鳴とガラスの破砕音。 ウチのクラスだった。 |