朝。
親父のハイテンションな蹴りで起こされ、ぼんやりとした頭に活を入れる。 そうだ。 俺はなぜか"戻って"しまっていて、昨夜はルキアと"初めて"の出会いだったのだ。 ほぼ反射で押さえつけた親父は記憶どおり無傷。 そのことに安堵しながらも、俺は遅刻決定な今日という日にこっそり溜息をついた。 学校に着いたのは午前10時45分よりも少し前。 教室のドアの前に立つと、たつきが「トラックぅ!?」なんて叫び声を上げている。 そういやそんなこともあったなぁなんて思いながら、俺は教室に入り、失礼なことを言っているたつきの後頭部めがけて軽く鞄をお見舞いした。 「ウチの連中は無キズだ。ったく・・・縁起でもねぇこと言うなよ・・・それと、オハヨ。たつき。」 「痛いでしょーが、一護。・・・まぁ無事でよかったよ。・・・・・・あと、おはよう。」 「黒崎くん!」 たつきの声の後に井上。 「お・・・ッおおおおはよう!」 「お・・・?おうっ。オハヨ。」 (俺の記憶的には)最近、笑っていてもどこか思いつめたような表情とか・・・泣きそうだったり真剣な顔ばかりだったから、こうして幸せそうな顔の井上を見ているとなんだか嬉しく思った。 それと同時にこれから彼女を巻き込むであろう事態に憂う。 井上の兄貴が虚として彼女を襲うのはおそらく決定事項。 そして、俺には記憶は有れども充分な力が無い。 きっと彼女に影響を及ぼし、そして――― それはチャドにも言えることだろう。 もう何度目になるか分からない遣る瀬無さに襲われ、俺は小さく溜息をつきながら席についた。 水色と軽く会話し、それが終わると隣の席からやはりあの声。 「貴様・・・あなたが黒崎くん?」 またあの喋り方なのか・・・内心そう苦笑して声のした方に顔を向ける。 声をかけてきた少女――ルキアはそれはもう立派な猫をかぶって笑った。 「よろしく!」 もちろん、差し出された手には"さわいだら殺す。"の文字。 「・・・あ、あぁ。こちらこそ、よろしく。」 その後、教科書を見せて欲しいという彼女に、俺は笑って「死神の力も貸すぜ」と一言余分に追加。 それを聞き、授業中焦って俺を連れ出す彼女は、それはそれは見ものだった。 ルキアに連れ出されてすぐ、尸魂界からの指令が届いた。 中庭の辺りで伝令神機に目をやっていた彼女はそのまま俺を死神化させ、近くの公園へと向かう。 そうして弓沢児童公園に着きしばらく雑談していれば、やはり現れた一匹の虚。 『今回』は俺も死神業代行を断ったりしなかったので彼女ともめることもなくすんなりと決着がついた。 蜘蛛型の――それでも足は6本だった――虚が消え行く中、俺はルキアと向かい合う。 「あんたに助けてもらった俺と俺の家族の命。どんだけ恩返ししても足りねぇけど・・・ それでも、少しでも返していけたらと思う。・・・だから、これからも手伝わせて欲しい。死神の仕事を。」 「―――ああ。こちらこそ、頼む。」 笑った彼女の髪を風が優しく梳いていった。 ・・・あ。俺の体、保健室に取りに行かねぇと・・・ |