「たつきちゃん!」
「たつき!」 「有沢っ!」 「有沢さん!」 四人が振り返り、顔を蒼白にする。 「だから早く逃げなきゃいけなかったんスけどねぇ・・・屍はしぶといから。」 鋭い目でその様子を睨みながら呟いたのは浦原。 しかしそんな彼も今の状態では何も出来ない・・・人質を取られては、この場から動くことさえも。 「さぁて・・・どうしてやろうかしら・・・あいにく私は女の顔が欲しくてね? いくら若くキレイであっても男のものはいらないのよ・・・・・・それが屍姫ならなおさら。 だってあなた達は『生きて』いないのだもの・・・・・・」 フフフとカオハギが笑う。 「そうねぇ・・・・・・私を・・・『屍』を狩る鬱陶しい屍姫・・・ 前も一度突っかかってきたわ。女の子が。・・・まぁこの手で四肢をもいであげたけど。」 「てめぇ・・・!」 「あらあら。お仲間が殺されるのがそんなに嫌?あなた達はもう既に一度死んでいる身なのに。」 ギリッと奥歯を噛み締める一護をカオハギが嘲った。 「やっぱり前の屍姫と同じように四肢をもいであげましょう。」 その台詞の直後。 一護の右腕が宙を舞った。 「・・・っ!」 襲う激痛。 しかし悲鳴は喉の奥で殺す。 「一護サンっ!」 「一護!!」 後ろからは浦原の声。 そして前方では竜貴が目を見開く。 「・・・ってよ・・・」 右腕が繋がっていた所から大量の血を流失していく一護の姿。 それを見つめながら竜貴が呟いた。 開かれた両目からは熱を持った水。 「撃って一護!もうアンタの死は見たくないんだから!!」 「ムダだよ、娘。屍姫は生者を何としてでも助けようとする。人間を生かし、屍を殺すのが仕事だからねぇ・・・」 笑って、カオハギは竜貴を捕らえているのとは逆の手を振り上げ、そして次の瞬間、手刀で一護の右足を奪った。 バランスを失って崩れ落ちる一護。 「そ・・・んな・・・」 目を見開いたままの竜貴を引きずりながらカオハギが一護に近づく。 血溜まりに沈む少年の体を見下ろして彼女は笑った。 「あと二本・・・次はどちらにしようかしら・・・・・・・・・あ゛?」 カオハギの疑問符と同時にその右手――竜貴を捕らえている方――が体から吹き飛んだ。 その顔が向けられた先にはニヤリと笑みを浮かべた一護の姿。 残った左手にいつの間にか銃を掲げて。 「こんだけ近づいてくれりゃァいくら何でも撃てるっつーの。」 そう言ってたて続けに三発の銃声。 銃弾を受けたカオハギはそのまま数メートル先の向かいの壁にぶち当たった。 「一護!!」 カオハギの手から脱した竜貴が一護に駆け寄る。 「たつき・・・悪ィけどそこにある俺の右足、取ってくれね?・・・・・・浦原!ちょっとこっちに!」 前半は竜貴に向けて、後半は少し離れた所にいる浦原に。 一護の言葉に頷いて竜貴は近くに転がっていた右足を躊躇いなく掴む。 一方浦原は、背負っていた少年を残りの四人に預け、この場を動かないように言うと、一護の傍に駆け寄った。 その途中、千切れた右腕を拾って。 右腕と右足をそれぞれ受け取ると、一護はそれらを千切れた箇所に押し付ける。 すると――― 「傷が・・・!」 服は破れ、血がこびりついているものの、傷一つなく腕も足も元に戻った。 「屍姫は契約僧の近くにいればいるほどその回復能力が上がるんだよ・・・それじゃあ今度はこっちの番だぜ。」 立ち上がり、一護は左右両の手に銃を構える。 そして数え切れぬほどの銃声が鳴り響いた。 |