目が覚めて一番最初に見えたのが、ボクに泣きながら縋りつく黒髪の少女。
この子には見覚えがある。
・・・そう、雨だ。紬屋雨。ボクが作った人形。
でも、こんなに感情表現できたっけ?

少し引っかかることがあったが、ボクは仰向けの体勢のまま首をめぐらせ、
大柄の男と生意気そうな男の子の姿を捉えた。

彼らのことも知ってる。テッサイにジン太だ。
テッサイはボクが尸魂界を去るときについてきた男で、ジン太は雨と同様、ボクが現世こちらで作った人形。
先に作った雨があまりにも引っ込み思案だったから思い切り逆の性格にしたんだっけ・・・と、そう考えてから、
ボクは周りの三人が――雨は初めから泣いていたのには気づいたけれど――沈んだ表情をしているのに気づいた。

・・・・・・それにしても、起きた時からずっと頭がズキズキするのだが。

そう思いながらボクはテッサイに顔を向けて口を開く。

「テッサイ・・・何かあったのか?」

言いながら体を起こし、それに気づいた雨がぱっと顔を上げてこちらを見た。
嬉しそうな表情をしたのだが、それはたった一瞬。
ボクの言葉を聞いてすぐ、雨は困惑の表情へ。
訊かれたテッサイもなんだか驚いてる?

「テッサイ?」
「・・・っ、はい。それですが、店長・・・店長?」

今度はこっちが困惑する番だ。
店長?何だそれは。
確かにボクはもう隊長でも局長でもなくなったが、それにしても店長だと?

「店長って・・・ボクのこと?一体急に何?本気?」
「は?」

おや。テッサイには珍しく気の抜けた返事だこと。
それにジン太も間抜けな顔になって、雨はまた泣き出す。

「てん・・・いえ、浦原様。今の現世の・・・日本の元号はご存知で?」
「いきなり何を・・・明治に決まってるじゃないか。」

馬鹿な質問だと思いながら答えると、テッサイは下を向き大きく深く息を吐いた。

「浦原様・・・貴方は記憶の混乱、又はそれを失くされたようです。
今は平成。貴方が現世に降りられてから100年以上経っております。」

その言葉は覚醒したてのボクの脳を揺さぶるのに充分な威力を持っていた。
この後、ボクは近づいてくる巨大な霊圧に興味を惹かれて外に出ることとなる。






















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