目覚めてから俺は浦原商店を訪れた。
角を曲がって見えた先にいつもと変わりないその様子。
そして――どうせ俺の霊圧に気がついたんだろう――ちょうど商店から出てきた男が一人。


・・・・・・って、オイ。
何がいつも通りだ。ぜんっぜん違うじゃねーか。

立っていたのは浦原喜助。
それは間違いない。
ただし問題はその格好だ。
下駄も履いてるし、深緑の上下に黒の羽織だって着ている。
ただ・・・


「帽子が無ぇ。」

ゲタ帽子、ではない。
あれじゃぁただの『ゲタ』だ。
自分でも結構失礼なこと考えてるなぁとは思うが、そう感じてしまったのだから仕方ない。
俺はいつの間にか止まってしまった歩みを再開し、商店の前まで行く。


「よっ、うらは「オレンジ頭っ!!」

ガラッと勢い良く扉が開き、俺の声を掻き消してガキ――ジン太が大声で俺を呼んだ。

「ジン太・・・なんだよ。今日も威勢がいいな。」

俺は笑って言うが、ジン太はどうも様子がおかしい。
沈んでいるような、焦っているような。

「あ、あの・・・黒崎さん。」
「ウルルか、おはよう。」

ジン太の後ろから顔を出したのはウルル。
いつも随分と大人しそうな感じの少女だが今日はそれプラス今にも泣き出しそうな表情になっている。
二人ともどうしたんだ?
と思ったら次に出てきたのはテッサイさん。

「テッサイさん、おはようございます。」
「黒崎殿・・・・・おはようございます。」

テッサイさんまで様子がおかしい。
本当に一体何なんだ?
俺はその質問を横にいた浦原に尋ねようとして口を開いた。

「なぁ浦原一体何が「ねぇ。」

ジン太に続いて今度は浦原かよ。
俺の声を遮って浦原は不思議そうな表情で俺を見つめてくる。

「浦原?」

なんだ?何か違和感が・・・


「浦原様!」

・・・・・・・・・・・・え?
今、浦原のこと呼んだのってテッサイさんだよな。
あれ?様付け?
『店長』じゃねぇの?
なにこれ。
俺、からかわれてたりすンの?


「・・・テッサイ?」

浦原がテッサイさんを不思議そうに呼ぶ。
しかし当のテッサイさんは一言も発することなく俯いてしまって。
浦原は「何なの。」と呟いて再び俺を見た。
そして、ねぇ・ともう一度繰り返す。

「なんだよ。」

俺は少しばかりこの状況に不機嫌気味で、つい荒っぽく答えてしまった。
でも浦原の目は少しも変わりなく、俺は呑気にも帽子が無いと目が良く見えるなぁなんて思ったりして。
だけど、次の瞬間俺は凍りついた。



「キミ、誰?」



冷たい声と。
冷たい瞳と。
俺の知らない浦原喜助。
お前こそ誰だよ。

「は?」

俺はただ、思考の停止した頭でそう発する事しか出来なかった。






















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