「浦原様、彼は黒崎一護と言いましてこの地区の担当死神にございます。」
「・・・へぇ。でもまだ生きてるよね。」
「彼は特例でして。」

浦原が訊いて、テッサイさんが答える。
俺のことなのに。
なんで?なんでそんな風になってるんだよ。


「な、にが・・・」

カラカラに乾いた舌で言葉を紡ごうとしてもきちんと音にならず、目の前で会話する二人には届かない。


「それに・・・」

テッサイさんはチラリと俺を見て再び浦原に顔を向けた。

「それに、彼は貴方様と仲の良いお知り合いなのです。」
「・・・あっそう。」


止めてくれ。
もうここには居たくない!
なんで・・・!なんでこんな事になってるんだ!?
誰か説明してくれよ!!


「おい。」

浦原でもテッサイさんでもない声。

「おい。ちょっとコッチ来い、オレンジ頭。」

呆然としたまま、服を引っ張られて俺はただその通りについて行った。





「おい、オレンジ頭。しっかりしろよ。これから俺が話してやるんだから。」
「黒崎さん。お話、聞いて下さい。」

店の陰に連れてこられた俺はくいっと再び服を引っ張られて意識をこちらに引き上げた。
見れば、子供たちは沈んだ顔で、しかもウルルなんか目に涙まで溜めてしまっている。

「お、おい。どうしたんだ?ちゃんと聞くから。な?」

しゃがんでウルルの頭を撫でてやれば、とうとう彼女は泣き出して俺にすがり付いてきた。
ジン太も辛そうな表情で俺を見る。

「話して・・・くれるんだよな。この状況の理由を。」
「ああ。」

ジン太は深く息をついてウルルを見やり、そうして俺と視線を合わせて口を開いた。

「店長・・・昨日さ、怪我したんだ。傷はオレらだからすぐに治せたけど、意識が戻らなくて。」

「なっ!?」

「あたしが悪いんです!あたしがのろまなばっかりに、落ちて来た商品を避けられなくて・・・!
それで、あたしを庇ってキスケさんが代わりに・・・!」

ジン太に続けるようにウルルが叫ぶ。
その痛そうな響きは彼女の後悔を知るには充分なものだ。
どういう言葉をかければ良いのかわからないまま俺はウルルの頭を撫でてやって、
そうして静かにジン太の言葉を待った。

「で、目覚めたのがついさっき。
それからあんたの霊圧が近づいてくるのに気づいて店の外に出たんだ。
まぁ普通に動けるみたいだから身体機能に異常は無いとして。でも、それは良かったんだけど。
・・・だけど、現世に降りてすぐまでの記憶しかない――ここ百年ほどの記憶が無いんだ。今の店長には。」

「う・・・そ、だろ?」

そんなバカな話があってたまるか。


「うそじゃねぇ。」
―――あの人、今が『明治』だって言ったんだぜ?

「・・・記憶は、戻るのか?」

「わかんねーよ。店長の作った義骸はオレらには到底理解できねぇモンだ。
そんなモンの不調なんざ、オレたちにわかるわけねーだろーが。」
―――大体なんで義骸と魂魄のくせに頭打って記憶喪失なんだ?こっちが知りてぇよ。

そう言い捨てたジン太に俺は小さく溜息をついた。
出来ることは・・・なし?
記憶が戻らなければ、もうずっとあのまま。
あの、冷たい瞳のまま。

「そっか・・・」

オレは目を閉じて、ただそれだけを呟いた。






















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