「お前、どうすんだよ。」
―――店長の恋人なんだろ?

そう訊いてきたジン太に俺は苦笑しか返せず、また来るよと言って歩き出した。
とにかく、今はこの場から早く去りたかったんだ。
きっと考える時間が必要で、混乱したこの頭じゃ何も考えられないと思ったし。


「あれ?帰るの?」

話し方もその態度も俺の知らないもの。
でも同じ声だったから、俺はそんな風に話しかけられてもつい顔を上げて目を合わせてしまった。
浦原じゃない浦原喜助に。

「ああ。なんか、大変そうだしな。」

早く帰らせて欲しい。
アンタが大変な目にあってるのは分かってるはずなんだけど。
だけど、こんな痛いところには長居したくないのも事実なんだ。

「黒崎殿・・・」

テッサイさんも俺を見てそんな悲しそうな顔しないでくれよ。
傍にいた人の記憶が失われて辛いのはあんた達も同じじゃないか。
一緒にいた100年分の記憶が一気に飛んじまったんだぜ?
もしかしたら、出会って1年程度しか経ってない俺よりも、もっとずっと・・・・・・

「ありがとうございます、テッサイさん。じゃあ、俺はこれで。」

そう言って足早にここを去ろうとする。
しかし―――

「ちょっと待って。」

ぐいっと腕を引かれ、反転させられた。
そして目の前には―――

「なんだよ、浦原・・・さん。」

帽子に隠れていないくすんだ金と冷たい翠。
俺を見るそれがなんだかとても・・・・・・痛い、なぁ。

「ちょっと寄っていかない?キミに訊きたいこともあるしね。」
―――ボクとキミ、仲が良かったんでしょ?

『知り合い』の義務ってとこか?
そんなの無しだろ。
なんで、この状態でやらなくちゃいけねぇんだよ。
正直言って断りたい。
この目で見続けられるのは辛いんだ。
でも、もしここで本当に断ったら?
・・・今の浦原なら「あっそう。」で済ますんじゃないだろうか。
そして、たぶん俺はその意識から除外される。
他人から仲が良かったと言われてハイそうですかと仲良くする人間じゃない・・・この瞳は。
だから、俺は―――

「わかった。俺の話で良いなら。」

承諾するしか、ないじゃないか。






















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