「単刀直入に訊くけど、まず、ボクとキミってどういう関係だったの?」

居間に通されてすぐ。
まさに直球ど真ん中のストライクバッターアウト。
何もよりによってその質問からしなくてもいいじゃねぇか。
本当に、アンタの一言一言が心臓に突き刺さる。

右手がついつい胸を押さえそうになって、慌てて俺はその手を左手で押さえつけた。

・・・浦原の問いに俺はどう答えるべきなんだろう。
まさか馬鹿正直に恋人だったと答えろとでも?
そんなこと出来るわけねぇよ・・・!
相手は浦原喜助だけど・・・でも、浦原喜助じゃねーんだ。
それこそ奇跡みたいな、同性のはずの俺のことを好きになってくれたヤツじゃない。
なのにどう見たって男の俺とコイツが恋人だったって、言えるわけが無い。
そんなの、言われた方は気持ち悪いに決まってる。
今みたいに興味が無いだけじゃない。
言えば、あの瞳に拒絶されてしまうんだ。

・・・・・・考えてることが矛盾してるな。
目の前の浦原は俺の知ってる浦原じゃないから「恋人でした」なんて言えずに、
その理由が浦原のあの目に拒絶されたくないからだなんて。

・・・馬鹿みたいだ。
「どうしたの?」
「いや、なんでもねぇよ。」

呟きが聞こえたらしい。
浦原がこちらを伺ってくる。
ぐずぐずと答えないのもおかしいから、答えを言うため俺は口を開いた。

「剣の師弟、だ。」

カチャン。

俺が答えると、丁度お茶を運んできたウルルがその湯飲みを倒してしまった。
ちゃぶ台にお茶が流れ出してそのまま畳にシミを作り出す。
畳のシミはどんどん大きくなり、暗い色を広げていって・・・

「ご、ごめんなさいっ!」
「あ、ああ。大丈夫だって。ホラ、誰にもかかってねぇし。何か拭くもの持ってきてくれるか?」
「はいっ!・・・あ、あの。黒崎さん。いいんですか・・・?」

俺の目をしっかりと見てウルルが心配そうな表情を作った。
そうか・・・お茶を零したのは俺が嘘をついたからなのか。
こんな子にまで心配させて、俺は一体何をやっているのだろう。

「大丈夫だって。な?」
「・・・あい。」

八の字眉毛をさらに八の字にして、ウルルはトテトテと部屋を出て行った。



「はぁ・・・」

横から聞こえてきたのは結構大きな溜息。

「浦原さん・・・?」

振り返ってみると、浦原はウルルの出て行った襖を見つめてもう一度溜息をついた。


「我ながら、本当に使えないものを作ったもんだ。」

おい、ちょっと待てよ。
何だよその言い方。

「浦原・・・さん、そこまで言う必要はないんじゃねぇの?」

怒りよりも先になんだかすっごく悲しくなった。
ウルルは俺を心配してお茶を零しちまったんだ。
それに・・・その前に、浦原がそんなこと言うなんて・・・!
ずっと暮らしてきた大切な仲間・・・家族じゃねぇか!

「そう?ならもう言わないよ。」
「・・・ッ!」

一体何を・・・・・・そんなに、軽く・・・


「ねぇキミ。」

そう言って、ちゃぶ台の向かい側に座っていた浦原が顔を近づけてくる。

「な、なんだよ。」

その顔は丁度10センチの距離を開けて停止。
そして浦原はじっとこちらを見て―――

「なんでそんなに悲しそうな顔してんの?」
「う、うるさいっ!!」

悲しいのはアンタのせいだ!
アンタがアンタじゃねーから、俺はこんなに苦しくて!痛くて!

「いきなり何?」

浦原が急に癇癪を起こした俺に怪訝そうな顔をする。

「・・・ッ帰る!お邪魔しましたっ!」

ゴメン。
もう嫌だよ浦原。

勝手に怒って勝手に悲しんで、そうして俺は浦原商店から立ち去った。






















<<  >>