くたりと力なく横たわる体。
その首に手をかけたまま、ボクはただぼんやりと、痛いくらい鮮やかなそのオレンジ色に視線を落としていた。

今、この子供はなんと言った?

こちらも首を絞める手を緩めなかったから、途切れ途切れにしか発せなかった単語のつながり。
その中で、この子供はボクになんと言った?

―――好きだと。そして、ボクになら殺されてもよいのだと。

魂の死を、ボクになら許すというのか?
いきなり何を。
一度だってそんな素振り、見せたりしなかったではないか。
逆に拒絶してばかりじゃなかったか?
それともキミは感情を隠すのがそんなに上手いとでも?確かに天邪鬼な所はあったが・・・・・・



あ、れ・・・?
どうしてそう思うんだ。ボクは。
まさか、また『記憶』か?



・・・ズキンッ!



「・・・ッ!!」

痛い!頭が割れそうだ!


ズキン、ズキン、ズキン・・・!


「・・・っう・・・・・・あ・・・」

まだまだ生暖かさを感じる首から手を離し、これまで以上の痛みを訴え続ける頭を押さえつけた。

「いいかげん、治まれば・・・っ良いものを。」

そう苛立たしげに呟いてボクは両目を閉じる。
途端、瞼の裏を流れるもの。
まるで日常生活の場面をそのまま切取った写真のようなものがいくつも現れては消えていく。
いつの間にか頭痛は治まり、そしてその中でも特に目に付く一つの色彩があるのに気がついた。
これは・・・・・・この子供の色彩だ。

子供のはにかむような笑顔があった。
決して本気ではないと分かる怒りの表情があった。
色を纏って朱に染まる顔があった。
前を見据えた強い瞳があった。
どこまでもどこまでも、強くてまっすぐな瞳が。

知らない。こんなの知らない。
知らない知らない知らない知らない知らない。
こんな彼は―――・・・







「くろ・・・さき、サン。」


―――思い出した。


「アタシは・・・」

そうだ。

この子は大切な子供で。
愛しくて仕方がなくて。
他人を護るために自分を投げ出せるような子で。
だからアタシが護ると決めた・・・恋人、で。

なのに、目の前にいるのは。




黒い死覇装。
オレンジ色の髪。
力の抜けた体。





「は、はは。・・・・・・はははははは・・・」


これは何だ?
これは黒崎サンだ。

死神の、黒崎一護サン。
魂魄の、黒崎一護サン。




「そんな・・・」


黒い死覇装。
オレンジ色の髪。
力の抜けた体。



「・・・死・・・・・・?」


























トクン・・・

「!?」

トクン・・・

「く、黒崎サン!?」



魄動だ!
弱いけれど、まだ黒崎サンの魄動がある!
黒崎サンは・・・黒崎サンの魂は、まだ死んでいない!

「テッサイ!!今すぐ黒崎サンの体こっちに持ってきて!早く!!」

襖の向こうに叫んでアタシは黒崎サンの体に手を翳した。
そして全力で力を注ぎ込む。

「生きて・・・!死なないでください。アタシを叱って下さいよ、何するんだって。」

泣きそうな声だ。
いや、泣いているのかも知れない。

「ね、黒崎サン。絶対死なないでくださいよ。キミは護るんでしょう?
それに、アタシはキミを護ると決めたんだから・・・!」






















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