俺は何をされている?
それは愚問だ。首を絞められているに決まっている。 首にかけられた両手の力が徐々に強まっていくのを感じながら、俺は一度だけゆっくりと瞬いた。 俺は、浦原に、首を、絞められている。 浦原は、こうすることで、頭痛から、開放、されるという。 「浦原・・・さんは、俺が憎いのか?」 自分で言っておきながら、酷く心臓が冷たくなったように感じた。 「憎い・・・?そうだね。そうかもしれない。キミの存在はボクに負のものしか与えていないから。」 ―――キミのことを考えれば酷い痛みを。キミの表情を視界に捉えれば内面のざわつきを。 「・・・そう。」 それだけを搾り出すのがやっとだ。 これ以上は声に感情が出てしまう。 この人を浦原とはっきりと認識してしまった故の、俺が持ってる弱い部分が。 「だから、このまま死んでくれない?ボクのために。」 そして、一気に強まった力。 ギリギリと締め上げられ、きっと今の俺の顔は酸欠で真っ赤になっていることだろう。 「・・・くっ・・・ぁ。」 苦しみによる喘ぎ声しか出せない。 今さっき、コイツに伝えたい言葉が形をとったというのに。 「っら、は・・・・・・っ」 頼むから、これだけは言わせてもらえないだろうか。 これが俺の愚かで未熟で浅ましい本心だから。 山ほどの人を護りたいと言ったけれど、それでもやっぱりこの恋は悲しいくらい大切だから。 たとえアンタに記憶がなくたって、それでも目の前のアンタは浦原喜助だから。 だから――― 「・・・っら・・・はら、が・・・・・・好き・・・だよ。」 ピクリと手が動いた。 でも力は弱まらず、逆にさらに強い力がかかった。 「・・・っ!」 酸欠の俺は視界が暗くて、アイツの顔すらまともに見ることが叶わない。 ワガママを言うと最後くらいアンタの目を見たかったな。とても綺麗な翠を。 そう、最後くらいは。 < 「だか、ら・・・お・・・れ・・・・・・アンタ・・・・・・なら、」 ―――殺されたっていいんだ。 いいよ。アンタがそう望むなら。 俺を殺したいなら殺せばいい。魂すらも消滅させてくれたって構わない。 今は死神の姿だから、きっと『全部』消せるだろう。 伝えたいことがきちんと伝わったのかどうか分からないまま、俺の意識は暗闇の中へと落ちて行った。 |