これほどまでに言葉は人を抉るものだなんて、初めて知った。

好きな人に、大切な人に。
好きだと言ってくれた人に、大切にしてくれた人に。
言われた言葉がこれほど威力を持っているなんて・・・・・・知りたくもなかった。


「なんでそんな顔してるの?」

浦原が話しかけてくる。
こちらの目を覗きこんで反応を楽しむように。

「ねぇ、始めちゃうよ?」

クスリと笑った声に、俺はハッとして再び抵抗を始めた。

「はいはい。無駄な抵抗はしない。どうせキミは・・・」

そこでいったん言葉を切って浦原はぞっとするような笑みを浮かべた。
嗤いながら顔を寄せてくる。

「やめ・・・」

「キミは初めてじゃないんだろう?浦原喜助とこういうことをするのは。」


やめろっ!!

体が冷え、頭が熱くなり、気づけば口内にぬるりとしたもの。
目の前の男と同一の人物に慣らされた体は、けれどすぐに熱を取り戻して少しでも強く快楽を得ようとする。
俺の躯の反応に気を良くした浦原は至近距離で笑い、むさぼる様に深くなる口付け。

「ふ・・・ぅ・・・・・・やっ・・・」

嫌だっ!
止めてくれ!!

「い、やだ!」
「っ!」

浦原が離れた。
遅れて感じたのは鉄の――血の味。


「やってくれる。」

口唇に自らの血液を滲ませて嗤う浦原。
キスしてる間に相手の舌を噛むなんてボクなら教えないよ?と、冷気さえ感じられそうな目でこちらを射抜く。


「来るな・・・」

寒気に襲われ、俺はそう呟いた。
しかし先程も俺が何を言おうがこちらの抵抗などあっさりと躱してしまった相手だ。
俺の反応を楽しんでまるっきり遊んでやがる。

「そう脅えないでよ。ね、黒崎サン・・・・。」

・・・あ。
無意識だろうか。今、俺のこと・・・
浦原だ。
浦原が俺を呼んだ。
目の前にいるの、浦原じゃん。



「・・・っ!またか!!」

突然、浦原が眉をしかめて唸った。
右手で額を押さえてる。頭が痛いのか?

「浦原・・・?」
「さわるなっ!!」

ぱしっと俺の伸ばした手が払い除けられる。

「くそっ!鬱陶しい!!」
「おい、浦原大丈夫か?」

それでも声をかければ、前髪の間から覗くイラついた瞳。

「う、うらは・・・」
「お前のせいだぞ。」

・・・え?

いきなりの言い様に俺は言葉も出ぬまま見返すのみ。

「こ、の・・・頭痛は、お前が原因なんだよ。」
「は?・・・わけ、わかんね・・・」
「わけが分らなくて結構。・・・っ、今ので確信したよ。やっぱり、原因はキミのようだ。」

そして俺はギラついた瞳のままの浦原に押し倒された。

「っくぁ・・・!」
「このまま力を入れれば、きっとボクはこの頭痛から開放されるだろうね。」
―――あと、この内面のざわつきからも。


そう言った浦原の両手はぴたりと俺の首に触れていた。






















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