子供が倒れ、ボクは何かに急かされるように紅姫を持って駆け出した。
虚を両断し、そのまま子供の治療に当たりながら自嘲する。

「なーにやってるんだろうねぇ。」

他人を助けるなんて。
この子供が絡むと、全くもって、らしくなくなる。
いくらあの三人に言われたからってわざわざ謝りに行ったり、今みたいに助けたり。

「謎だねぇ。」


・・・ズキンッ


「っもういい加減にして欲しいよ。」

またまた襲ってきた鋭い痛みに眉をしかめた。

この頭痛は一体何なんだ。
はっきり言って非常に不愉快なんだが。

「そう言えば、この頭痛ってこの子の事を考えると起きてるような・・・?」

・・・・・・まさかね。
ただの偶然だろう。

そうこうしてる内に頭痛もすっかり治まって、ボクは「よっ」という掛け声と共に子供を担ぎ上げた。

「ボクにここまでしてもらえるなんて、キミって幸せ者だよ?」

なんてふざけてみたが笑ってくれる誰かがいるはずもなく、ただ自分だけが苦笑して商店へと足を向ける。
軽い足取りで家々の屋根を渡りながら子供が落ちないようにもう一度担ぎ直し、そうしてボクは笑った。

「それにしても軽いねぇ。もう少し食べた方がいいんじゃない?」

気を失っている子供に言っても意味の無いことを吐き出して時間を潰す。
別に何も言わなくたっていいんだけど、そうしてなきゃいけない様な、そうしたい様な気がしたから。


「もしもさぁ・・・キミがボクの頭痛の原因だったら、その時は死んでもらうよ?
だって、この頭痛ちょっと酷すぎるんだよね。治るならキミ一人の命くらい安いモンでしょ?」

自分でも本気なのか冗談なのか分からない戯言を言って、またボクは一人で笑う。

でも、キミのその悲しそうな表情はいただけないから、もしかすると現実になるかもね。
キミはボクの内面を乱しすぎる。
ボクは静かなのが好きなんだよ。
外は五月蝿くても自分の中が静かなら良い。でも中が騒がしいと外がどれだけ静かでもねぇ・・・

クスクスと笑いながらボクは商店の前に降り立った。
扉を開け、肩に担がれた人物に目を丸くする三人をそのままにして自室へと向かう。

・・・あぁ、これもなんだか知っているよ。
ボクに担がれながら真っ赤になって喚くキミ。
でもそんな事に関係なくボクの足は自室へと向かって・・・


「剣の師弟とはよく言ったものだ。どうやらボクは少しばかりキミとのことを覚えているらしい。」

きっと他人から見ればボクは凶悪な笑みを浮かべていることだろう。
だって、楽しそうなおもちゃが見つかったんだ。
そりゃあ、笑うっきゃないでしょ?

今朝起きたままにしてあった布団の上に子供を寝かせてボクは嗤う。

早く起きてくれないかな。
キミで遊ぶのが待ち遠しいよ。






















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