一体何なんだ。あの表情は・・・!


少年の家から去ったあと、ボクはふらりと散歩をすることにした。
たぶん今のこの状態じゃァ店に帰ってもいいこと無いだろうし。

だって、落ち着かない。
あの子供の表情を見てからちっとも落ち着いていられないんだ。
ボクが一体何をした?なんて、ボクも自分を解っているつもりだから言ったりしないけど。

すごく悲しそうに笑う、子供。
先刻も、今も。

今朝からの記憶に残るのはずっとずっと、あの笑顔しかなかった。

「違う表情って言ったら最初に顔を見たときくらい?」
―――あんなに感情の豊かそうな子供が。

特に先刻のは自分が急にやって来た為だろうか、今迄で一番悲しい笑顔を形作っていた。

「本当に、キミはボクにとってどんな人間だったんだろうねぇ・・・?」

大切な人?
キミにそういう表情をさせることが出来る人?


・・・ズキンッ


「っ・・・またか。」

また、頭に鋭い痛み。
針に刺されるような、じゃない。
ナイフで貫かれたような痛みだ。

「くそっ・・・イライラする。」

ギリ・・・と歯を食いしばってそれに耐えた。
痛みが治まったあと、ボクは覚えているのとは全く違う町並みの家々の屋根を
足の向くまま気の向くまま、ひょいと飛び移っていく。

「あー・・・ホント、違うんだね。・・・・・・100年、かぁ。」

この100年、自分は一体何を体験して何を思ったのだろう。
尸魂界は面白いこともあったし暇ではなかったけれど、こちらに来てからの方が満たされたりしたのだろうか。
自分の全てを賭けてみたくなる様な事とか。

「まさか、ね。」

呟いて、とある家の屋根の上で足を止めた。
ザワ・・・と肌を撫でる不穏な気配。
虚が出たようだ。
どうせあれくらいの雑魚一匹、あの少年だけで充分だとは思うが。

「ちょっと見学でもしてこようかな。」

何となく傍に行かなくてはならないような気がしてボクは踵を返した。






















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