「お久しぶりスね。黒崎サン。」 百年の時を超えて再会した人物は、憎らしいほど昔のままだった。 夢の残滓6
「何故アンタが此処にいる!?」
かつての主を睨みつけ、一護が叫ぶ。 何故此処にいる? 何故今になって顔を見せる? 何故・・・! 「何故と言われましても、アタシは永久追放になった身。現世にいるのは当たり前でしょ?」 飄々として答える姿すら昔となんら変わらぬもの。 それが余計に一護の神経を逆なでする。 チリチリと高まる霊圧が肌をあぶり、それに共鳴するかのごとく斬月が震えた。 「俺と戦え。アンタに勝って、俺は過去を清算する。」 「黒崎サン・・・」 「剣を・・・紅姫を構えろ、浦原喜助!」 叫び、一護が剣を構える。 「仕方ありませんね。」 浦原は杖を構え、眠る彼女の名を呼んだ。 「起きろ、紅姫。」 杖が高い音を立てて崩れ、現れたのは直線的な形の美しい刀。 久しぶりの目覚めに彼女は甲高い声を上げる。 それは戦うことへの歓喜か。 それともこの結末への嘆きか。 両者同時に駆け出し、剣が打ち合わされた。 金属同士を打ち鳴らしたとき特有の音があたりに響き渡る。 「随分と腕を上げたようスね。」 剣を挟んで浦原が零す。 「うるさいっ!」 声と同時に離れ、再度構えを取った。 一護の脳裏をよぎるのは明かりのない主の部屋。 きれいに片付けられた机。 人がいた形跡のない冷たい空気。 “捨てられた”記憶。 「俺はアンタに失望した! アンタは俺の尊敬と信頼を裏切り、俺を絶望の淵に叩き込んだ!!」 一護は声を嗄らして叫ぶ。 「俺はアンタを憎む!!アンタを絶対に許さねぇ!!!俺は―――!」 そして神経を研ぎ澄まし、刀を振るった。 「月牙天衝!!!」 刃から黒い月牙が放たれた。 「紅姫っ!」 斬魄刀の名を呼び、浦原も攻撃を放つ。 二つはぶつかり、そして・・・・・・ 「相、殺・・・?」 同質・同量、そして逆回転の力をぶつける事によってのみ出来ること。 一護の剣撃は相殺され、風が生まれた。 そして、二人とも無傷。 一護は呟く。 「何故だ・・・!」 噛み締める唇からは血が流れ、赤い筋が生まれた。 「何故・・・」 一護は俯き、きつく目を閉じる。 浦原はそれを無言で見つめ、彼の声を聞いた。 一護は搾り出すように言葉を紡ぐ。 「何故俺を連れて行って下さらなかったのですか!・・・浦原様―――・・・!」 崩れ落ち、悲痛な叫びと共に一護は涙を流した。 |