「キミが、大切だったから・・・」



その声はひどく穏やかで、優しくて。

そして、ひどく悲しげなものだった。




















夢の残滓7

















「うらはら、さま・・・?」

涙で濡れた瞳のまま一護は浦原を見上げる。

「アタシのせいでキミの未来を壊したくなかった。
・・・キミは強い。キミは賢い。
そのキミに約束されたものをアタシが奪って良いはずがない。」
「何を・・・」
「アタシは―――アタシの我侭にキミを巻き込みたくなかったんス。」

浦原はそれを言い終えると弱々しく笑って見せた。

「・・・・・・」

一護は答えない。

「黒崎サン・・・?」
「・・・っ」

呼びかけると一護が何かを呟いた。

「え?」

訊き直そうと浦原が顔を近づけると・・・



「ふざけるなっ!!」

一護は突然立ち上がって叫んだ。

「何がキミのためだ!!俺はそんなの望んでいない!
俺は・・・俺は貴方といられればそれで良かった!!それだけで、良かったんです!!」

「黒崎サン・・・」

「貴方が何も言わずに尸魂界を去られたとき、俺がどう思ったかお分かりですか!?
どこを探しても貴方はいなくて、不安に押しつぶされそうになって。
自室を覗けばそこは真っ暗。貴方の気配は微塵もなくて俺は思いましたよ・・・!
・・・捨てられた。貴方に捨てられたと!!そう、思ったんです!!」

一護は苦しそうに顔をしかめて続ける。

「今さら言っても遅いのはわかっています!
月日はどうすることも出来ない!
それでも!
あのとき、俺もお供させて頂きたかった!
俺は―――――貴方と共に生きたかった・・・!」

一護の目からは再び涙がこぼれ出し、幾筋も頬を伝う。
キラキラと光を反射して輝くそれはどんな宝石よりも美しく尊いモノのようだった。




「アタシは、なんて事をしでかしたのでしょうね・・・」

一護の頬に手を添えて浦原が呟く。

「キミのためだと言いながら、結局は自分のことしか考えていなかった。」

その手を頭の方に滑らせ、一護の体を抱きしめた。

「遅くなってしまいましたが、今からでも構いませんか?」
「え・・・?」

抱きしめられたまま、一護は浦原の顔を見る。
目を細め、笑っているのか泣いているのかわからない表情。

浦原が口を開く。

「一緒に生きてください。アタシと、此処で。」

一護の目が驚きに見開かれた。

「それは・・・」
「キミに会って再確認してしまった。
アタシはキミを愛してるんです。キミを、手放したくないんです・・・」

強く強く、浦原は一護を抱きしめる。


「一護サン・・・」

一護は目を瞑る。





「承知しました。」

そうして、一護は主の背に腕を回した。























ハッピーエンドでございます。











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