一人で戦闘に駆り出させるのは“私が強いから”ではなく“私に消えて欲しいから”
そんなに簡単に消えてやるつもりなど無かったけれど、今度はその手できましたか。
散々恩恵に与あずかっておいて、ねぇ?
これでキミともお別れですか。
それじゃあね。
もうサヨナラだ。
二度と会うことも無いでしょう。
















夢の残滓3















浦原喜助
右の者 尸魂界永久追放の刑に処す

たったそれだけ。
罪状すら伝えられぬそれは、しかし誰もがこう思った。

“中央にとって彼は危険だったから”

何事にも優れ、全てを兼ね備えた人物。
それが浦原喜助という男であった。
局長と隊長を兼任するようになってからは、さらにその優秀さを広く示すこととなる。
しかし、それゆえに中央四十六室は彼を危険視するようになった。

扱いきれぬ・と。

戦場で殺せぬのなら此処から追い出すしかない。
そうして遂に下された、罪状すら明確にされぬ『永久追放』。
絶対の権力からの絶対の命令だった。
















その知らせを聞いたとき、一護は全身の血が音を立てて引いていくのを感じた。
思考も放棄し、無我夢中で主を探し回る。
十二番隊の隊舎、技術開発局、お気に入りの桜が咲く丘・・・
そして最後に、自分達が住まう屋敷。

「浦原様!何処にいらっしゃるのですか!?」

無駄に広い屋敷が今はとてつもなく厭わしい。
観音開きの扉を、襖を、障子を。
開けては室内を確かめ、暗い室内に一護は眉をしかめる。

あの方は何処に。

嫌な考えだけが浮かび、脳を侵食する。
いつも側にいたのに、今はいない。
何処にいるのだ!?
不安で押し潰されそうになる。

「浦原様!浦原様!!返事をしてください!!」

一護は叫ぶ。

「浦原様ぁ!!!!!」


主は何処いづこ

















「浦原様!!」

勢いよく扉を開ける。
目に映るのは暗い室内。
執務机に座る影はなく、きちんと片付けられていた。


わかっていた。
わかっていたのだ。
尸魂界ここに彼の気配が無いことぐらい。
でも、そんなことは無いと自分に言い聞かせていた。
目を背けていたかった。

しかし、それももう終わり。
明かりの灯らぬ主の部屋。
それが最終宣告。
望みの全てを打ち砕いた。

(・・・あぁ、捨てられたのか。)

一護は目を伏せる。
涙など流れない。


太陽が沈む。
訪れたのは、闇。






















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