私の下に就くのに黒崎一護ほど適任な人物はいない。
もっといい人がいると言うけれど、キミは自分を軽んじている。
その実力は彼を育て上げた私が一番よく知っているのだ。
今だってホラ。
着任してからまだ一週間なのに、キミはこんなにも優秀。
だからね。
この先、私が此処からいなくなれば跡を継ぐのはきっとキミ。
















夢の残滓2















「浦原様。この霊子変換機についてなのですが・・・」

一護がクリップで挟まれた書類を捲りつつ浦原に歩み寄る。

副局長兼副隊長に就任した後しばらくの間は、一護も他の局員や隊員同様、
時と場合により浦原のことを“局長”と“隊長”で呼び分けていた。
しかし「いつも通り呼んでくださって構いませんよ。」と主に言われ、
今ではほとんどの場合この呼び方で通すようになっている。


「何かあったんスか?」

浦原は手を止め、一護の方に振り返った。
一護は浦原の後ろにある物体―――形状は義魂丸のようだ―――に一瞥をくれたあと、
何事もなかったように話を続ける。

「はい。実験の結果が出たのでお知らせに。
穿界門と結合させるためには、やはり通常より強力な符で覆う必要があるかと・・・」

浦原は一護からレポートを受け取る。

「やっぱりもっと強い符を作らないといけませんかねぇ。」

ページを捲っては実験で得られたデータを確かめていく。
一護はそんな浦原の様子を気にしつつ自身の考えを述べた。

「あの、俺に結合符の製作を任せてくださいませんか?」
「キミに?」

浦原が顔を上げて一護を見据える。
未だ顔つきは幼さが残るものの、その瞳は深い知性の光を宿し琥珀色に輝いている。

(確かに。彼の実力ならそれも容易い事だろう。)

「わかりました。それでは結合符の製作をキミに一任します。頼みますね?」
「はい!!」

子供の表情で無邪気に笑う。
貴方に認められること、何かを任せてもらえること。
それが俺の喜びなのだと。

(・・・あぁ、そんな笑顔を見せないでくださいな。)

浦原は眩しそうに目を細めた。



















目の前で赤が舞う。
無意識に振った斬魄刀が虚を両断したためだ。

『・・・どうした、喜助。太刀筋が乱れておるぞ。』

リィ・・・ンと紅姫が涼やかな音を立てて抗議する。

「いや、ちょっと白昼夢をね。」
『呑気なものじゃ。返り血なんぞ浴びおってからに。』

言われて自身の羽織を見れば、白い生地に点々と赤いものが。

「・・・ちょっと気を抜き過ぎましたかねぇ。それじゃ、早く終わらせましょうか。」
『かわいい子供も待っておるしな。』
「本人の前で言ったら怒られますよ?」

今は別件で隊舎に残っているオレンジ色の少年を思って言う。

『フフ・・・そうじゃの。』

紅姫は優雅に笑ってから虚を切ることに集中しだした。
こんな事さっさと終わらせて、自分も早くあの子に会いたいのだと。

浦原はそんな彼女を見て呟く。

「・・・いくよ、紅姫。」

浦原が一気に加速する。
背に十二と書かれた白い羽織がヒラリと舞った。






















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