忙しい合間を塗って、現世へと行こうとしていた修兵を

後ろから呼び止める声。振り向けば十一番隊の綾瀬川弓親が立っていた。



「どこに行くの?」



にっこり、問い掛けの形は取っているのだが「理由を言え」と脅迫されているように感じる。

霊力を吸い尽くされたのも記憶に新しく、思わず腰が引けた。



「素直が一番だと思うんだけど…?」



ニッコリからニヤリに笑みが変わっていき、背中を嫌な汗が流れる。

だが、それを気にした風も無く引き下がった弓親は、背後に声を掛けた。



「ほら、行くよ一角」


「おう!」



更に現れた十一番隊の三席、流石におかしいと修兵は感じ始めた。



「俺に何か用なのか?」


「用も何も…現世に行くんでしょ?僕達も行くよ」


「俺らも命令を受けたし、アイツには恩があるからな」


「……は?」



元々キツイ視線が益々悪くなるのを感じるが、構うものか

どう言う事か問い詰めようと思った所で、無視できない霊圧が次々と近付いてくる。



「山本総隊長!?」



総隊長を筆頭に、次々と隊長クラスの人物が揃っていく。

こんな所で隊首会でも開くのかと訊きたくなった。



先程まで目の前にいたのは、席官とは言え三席と五席

だが、瀞霊廷に残っている隊長クラスが全員集まったとなれば無視も出来ない。



「九番隊副隊長・檜左木修兵」


「はっ!」



直接の声掛かりに膝を付く。



「報告は受けておる。東仙の侵入を見過ごした我らの不手際もあり。

また黒崎一護が狙われているとの情報を齎もたらした事によって、今回の事は水に流す事となった。

お主と六番隊・十一番隊の者に、黒崎一護の警護を命じる」


「…承ります」


横で十一番隊の二人と恋次が、同じように膝を付き命令を受け

朽木白哉は膝を付く事は無かったものの、総隊長の言葉に頷き了承した。



「なお、現世に慣れており。又、黒崎一護と親しかった朽木ルキアも同行するように」


「はい!」



地獄蝶を連れて現世への扉を開けながら、思わず後輩で気安い存在の恋次に尋ねる。



「何でバレたんだ?」


「隠密機動からの報告と、元隠密機動・総司令官からの連絡だそうですよ」



瞬神と呼ばれた伝説の人物の登場に、思わず首を傾げる。



「何でたかが元旅禍の事で、そんな人まで出てくるんだ?」


「……」



無言になり青褪めてしまった恋次を不思議そうに見て視線を巡らせれば

六番隊隊長は相変わらず寡黙だし、罪人として扱われたルキアには声を掛け難いし

(さり気なく、朽木隊長が彼女を庇うように立っている事も声を掛けられない要因)

十一番隊には声を掛けたくない。



「本当は十一番隊ウチからも隊長と副隊長が行きたいって言ってたんだけど…」


「あの人達、霊圧コントロール苦手だから。現世で暴れられても困るってさ」



あはは、と笑いながら告げられた内容は…笑えない。

このメンバーでまだ・・救いがあるのだと、修兵と恋次は自分を納得させた。





蛇足として、俺たちを見送る隊長達から

恨みがましい視線が混じっていた事が、心臓に悪かったと後に語っていた…



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