旅禍騒ぎからようやく普段の落ち着きを取り戻した瀞霊廷・護廷十三隊詰所で

檜左木修兵は困惑していた。



九番隊・隊長、東仙要

慕っていた彼の裏切り…(そう呼べるかは判らないまま)

事実を知ってしまった席官達は誰もが戸惑いながら、その事実を受け入れ

ようやく落ち着いてきた所だったのだが……



「…東仙隊長?」



隊長のいなくなってしまった九番隊で副隊長としての責務に追われ

一息をついた所だった。

誰もが忙しくしているのだからと、自分で茶を入れて口にしようとした瞬間

目の前に東仙が現れたのだ。



修兵が驚いても無理は無い。

彼は藍染・市丸の両名と共に尸魂界を去ったのだ。

それなのに目の前に執務机の横で 所在無さげに立ち尽くしている嘗ての隊長。

戸惑うように問いかけた修兵に罪は無いだろう。



「修兵… こんな事を…頼める筋合いでは無いと、判っているんだが…」



口篭り、盲めしいた視線は雄弁に申し訳無さと戸惑いを伝えてくる。



「どうなさったんですか?」



戦いを憂いていた昔のままの東仙に少し安心すると、苦笑を刻んで修兵は問いかけた。

それに背中を押されたのか東仙が語りだす。



「君は旅禍の少年を覚えているだろうか?」


「はぁ…」



どの子供だろうと旅禍を頭に浮かべれば



「萱草色の髪をした少年なんだが……」


「あぁ!いましたね」


「実は…藍染と市丸が……」


「その二人が?」



眉間に深い皺を刻み、東仙は深呼吸して意を決したように告げる。



「その少年に懸想して誘拐計画を立てているんだ

尸魂界を出奔した私がこんな事を頼むのは お門違いだと判っているんだが…

まだ幼いとも言える、あの旅禍の少年が二人の毒牙に掛かるのだけは!」



悲痛な叫びは修兵の思考回路を一瞬奪った。

が・記憶に残る、鮮やかな髪色の少年を思い出し決意する。



「任せてください、彼を危険から遠ざけるよう力を尽くします」



力強い、元部下の言葉に東仙は涙せんばかりに喜び

二人が虚を毎晩のように仕掛けては彼の体力を奪っている事

ストーカーのように様子を伺っている事を話した。



そんな二人を見ている隠密機動の偵察機に気付かないまま……



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