ドレスもタキシードも完成して「大丈夫」と言っていた真咲母さんの言葉を思い出す。

でも、いくら真咲母さんの言葉でも一護はこれを着てくれないと思うんだけどなぁ…

ヌイグルミの身体で首を傾げていれば



「コン?」



風呂上りの一護がオレを見ていた。

ぽたぽたと濡れた髪から雫が落ちている。



「お前こそ何やってんだ!ちゃんと拭けよ!!」



ヌイグルミのままではタオルは持てないのでハンドタオルを持ち出して

頭に乗り上げて拭いてやる。

口では「ヤメロ」と言いながらも、一護は笑いながらオレのする事を許容してくれる。

オレに許された特権みたいで、ちょっと嬉しい。



ほのぼのとした空気を切るように、ドアをノックする音が聞こえ、一護は緊張する。



「一護 ちょっと良いかしら?」



真咲の声に一護は緊張した空気を霧散させた。

ノックしてきた時点で親父では無いと確信できるが

妹のどちらが入ってきても、ヌイグルミと戯れている時点で怪しい決定だろう。



ちなみに母親にはコンの事を説明した事は無いのだが…

多分、知っている。

何故と言われても説明できないが、

真咲はコンが普通に動いて喋っても、確実に驚かないだろうし

むしろ喜ぶような気がする……



そんな息子の複雑な気持ちを知ってか知らずか

真咲は常と同じく、ふんわりとした笑みを浮かべて入ってきた。



「一護、明日はお母さんに付き合ってくれないかしら?」



首を傾げながら、お願いと言われ

断る理由も思い当たらず、快く了承の意を伝える。



「ありがとう♪ じゃ、明日は空けておいてね」



真咲母さんはそう言って部屋を出て行った。

それを見送って尋ねる。



「良いのか?」


「何が?」


「約束とかあったんじゃねーの?」



オレの言葉に微かに目を見張った後、ー護は優しく微笑み ヌイグルミの頭を撫でる。



「お前が心配しなくても大丈夫だよ」



心配するな…って、オレが心配してるのは 真咲母さんの意味ありげな視線なんだ…

ドレス、明日着せるの決定なんだろうなぁ……

慌てふためく明日のー護を思って、宥めるように彼の膝(そこにしか手が届かない)をポムと叩いた。



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