★「シロガネコガネ、それからベリル」には、中編が2本収録されております。

「泣き虫あの子はもういない」web再録
※感情によって瞳の色が銀から金に変化するエレンの話。
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「ベリルの悪魔」書下ろし
※あくまで<Xミス家の執事なエレン(普段は緑眼+メガネ)とリヴァイ少年の話。
以下、本文より一部抜粋。



「ようこそスミス家へ、リヴァイ様。わたくしスミス家の執事を任されております、エレン・イェーガーと申します」

 よく見積ってもまだ二十代半ばくらいにしか見えない眼鏡の男は、そう言ってリヴァイに丁寧な所作で頭を下げた。細身の身体が纏ったブラス・ボタンの燕尾服は、本人が告げた言葉の通り、彼が従僕であることを示している。
 今年で十歳になるリヴァイは彼とその背後に聳える屋敷を見て、これまで育った孤児院とは全く異なる環境に連れて来られたのだと改めて思い知った。
 この国どころか世界でも名の知れた大財閥、スミス家。未だ子もいなければ妻もいない現在の当主、エルヴィン・スミスの血の繋がらない息子に、リヴァイは今日、なったのだ。
「さあ、リヴァイ様。本日はお疲れでしょうから、お部屋にご案内いたします。こちらへ」
 薄い銀フレームの奥で緑色の双眸を細め、エレンは白い手袋に包まれた手でリヴァイを促す。その顔に「どうしてこんな子供が」と蔑むような色は無い。よほど職務に忠実なできた℃キ事なのだろうとリヴァイは思った。
 金髪碧眼と彫りの深い整った顔立ちのエルヴィンとは正反対の、黒髪に青灰色の瞳。それにようやく二桁に達しようとしている年齢の割には鋭すぎる目つき。またこの敷地に足を踏み入れた時から全く喋らない愛想の悪さ。――どこを取ってもリヴァイはこのような『幸運』に相応しくない。同年代の子供より多少頭の回転は速い方だが、世界中探せばリヴァイより優れた子供などごまんといるだろう。
 それなのに、なぜ。エルヴィンは自分をこの大財閥の後継者候補にし、スミス家に仕えるエレンも当然のような顔で受け入れるのか。
(変人当主と主人の決定には絶対な執事、ってことか?)
 眉一つ動かさずリヴァイは自分がこれから世話になる者達に対して暴言を吐く。心の中でのみ呟かれたそれが聞こえたわけではないだろうが、エレンが「リヴァイ様?」と名を呼んで再度促した。
 それに動揺もなく無言の頷き一つで応え、リヴァイは白い手袋が示す方向に歩を進める。
 広い前庭を抜けた先、重厚な両開きの扉におそらくリヴァイは今後も触れることなどないのだろう。そこにリヴァイが近付くだけで、エレンの下に仕えるフットマンと呼ばれる金髪の下級使用人が静かな動作で扉を開くのだから。またフットマン達がいない時にはエレン自らその扉に触れるに違いない。どちらにせよ、つい数時間前まで塗装の剥げた古い木戸をギイギイ言わせながら開けていた子供とは立場も世界も全く異なっていた。
「南側の日当たりの良いお部屋をご用意させていただきましたが、今後お気に召す部屋がございましたら、どうぞわたくしにお申し付けください。すぐに手配いたしますので」
「ああ」
 たった一言。エレンの前で発した最初の言葉だった。
 しかしそれを聞いた瞬間、眼鏡の奥でエレンの双眸が柔らかくなる。
 執事の変化を見たリヴァイは表情を変えないまま内心でいささか驚いた。エレンを『職務に忠実なできた℃キ事』と称したのはつい先程のことだ。それなのにエレンがほんの数瞬だけ見せた笑みには、喜びのような、憐みのような、懐古のような、悲しみのような、幸せのような、仕事には相応しくない複雑な感情が混ざっていた。
「お前は」
 一体何なんだ。そう問おうとしたが、先に執事が口を開く。
「どうか……エレン、とお呼びください。リヴァイ様」
「エレ、ン?」
「はい」
 再び浮かべられる微笑みと、子供のリヴァイには正確に読み取ることのできない複雑な感情の揺れ。なんだこれは、と頭の中で疑問符が巡る。自分は一体この執事にどういう認識のされ方をしているのだろうか。
 孤児院ではあまりにも感情を表に出さずしかめっ面ばかりしていたため、リヴァイは子供どころか大人にまで遠巻きにされていた。子供はただ単純に怖がり、大人は可愛げがないだとか気味が悪いと思っていたのだろう。しかしエレンはこれまでリヴァイを取り巻いていた人間達とは全然違う。出会ったばかりのはずなのに、エレンにとってリヴァイは『特別』な存在であるようだった。
(……、)
 何やら心臓の辺りがムズムズする。初めての感覚に戸惑いつつもリヴァイは表面上何も変わらずに歩き続けた。
 やがて一つの扉の前に辿り着いた。エレンが扉を開き、「どうぞ」とリヴァイを中へいざなう。
 足を踏み入れた最初の感想は「広い」だ。孤児院で十歳までの子供達が雑魚寝をしていた部屋がすっぽり入ってしまう。そこにベッドが一つ。小柄なリヴァイには通常サイズのベッドですら少々大きいのだが、部屋の中央に据えられていたそれはキングサイズと呼ばれるものだった。
「隣にはリヴァイ様専用の書斎がございます。隣の部屋とこちらは中の扉で繋がっておりますので、ご自由に行き来していただけます。また書斎を挟んでもう一つ隣の部屋にはわたくしが寝起きしておりますので、何かありましたらいつでもお呼びください」
 呼び出す際にはこれを鳴らせば良いと続けながらエレンはサイドテーブルの上に置かれた金色の小さなベルを示す。手に取って実際に鳴らしてみれば、チリンと可愛らしい澄んだ音色がした。
そんなに大きな音ではないのだが、おそらく何かと音が発生する日中はそれを鳴らす必要が無いようエレンが気を配っており、そして本来ならばエレンの仕事も終わっているはずの皆が寝静まる時間帯には書斎を挟んだ隣の部屋にまできちんと音が届くのだろう。
 リヴァイが解ったと頷けば、エレンは嬉しそうに一度微笑み、そのまま退出した。
一人になったリヴァイはほっと肩の力を抜き、そして次の瞬間にはエレンがこれを見越して部屋から退出してくれたのではないかと推測した。ただの偶然の可能性もあるが、何となくこのやや不自然な一人の時間はエレンが意図して作ったものではないかと思える。
 エレンが履いていた黒いエナメルのものとは値段がゼロ一個どころか二個は確実に違うだろう履き潰した靴を適当に脱ぎ捨て、リヴァイはベッドに倒れ込む。仰向けになった視界には高い天井と無駄に豪奢なシャンデリア。程よくスプリングのきいた寝心地抜群のベッドの上にいるにもかかわらず、それらを眺めていると違和感にばかり襲われる。目を閉じればすぐにでも安眠できそうだが、この違和感に慣れるには少々時間がかかりそうだ。

* * *

「おはようございます、リヴァイ様。モーニング・ティーをお持ちしました」
 穏やかな声と、ふわりと香る紅茶の匂いで目が覚める。
 ベッドも声も匂いも陽の光も全てが優しい。リヴァイは瞼をうっすらと開き、ここはどこだ、とぼんやりした頭で思った。
「失礼いたします」
 白い絹の手袋に包まれた手がリヴァイの背中にそっと添えられ、起床を助ける。上半身を起こせば、すかさず背もたれとしてクッションが差し込まれた。
 病気になった時でさえこんなにも丁寧に扱われたことはない。寝起きでぼんやりしているためリヴァイはされるがままだが、もし頭がはっきりしている時ならば、拒否するか、立場的に必要なことだと理解した上で渋面を作って受け入れただろう。
 上半身を起こしたリヴァイの前髪を長い指が羽のような軽さでサイドに流す。潔癖症のきらいがあるリヴァイにとって他人にベタベタ触られるのは好ましいことではない。しかしこの指先は汚れ一つない白に包まれており、受け入れることは全く苦ではなかった。それどころか愛しみの籠もった触り方には心地よさすら感じられる。
「どうぞ」
 声と共に差し出された白磁のカップを受け取る。紅茶の詳しい銘柄や産地などは全く知らないが、鼻腔を満たす香りに自然と口元が緩んだ。
 一口含み、ゆっくりと喉を潤す。
「……エレン」
 ただ名前を呼んだだけだ。昨日そう呼んで欲しいと言われたので口にしたにすぎない。しかしそれだけでエレンは微笑む。しかも――
「あー……えっと、おはよう」
「はい、おはようございます。今日は良い天気ですよ」
 最初に自分から挨拶したくせにリヴァイがそれを返した途端、エレンの雰囲気が一気に和らいだ。もし気分が視覚化できるなら、周囲に花が飛んでいるかもしれない。
 リヴァイの行動の何がそんなに嬉しいのだろうと、紅茶を飲みながら内心で首を捻る。飲み終えた頃には頭も徐々に回転し始め、それを見計らったかのようにエレンが次の言葉を発した。
「朝食はこちらと食堂のどちらでお取りになりますか?」
「こっちってのは……ベッドの上ってことか?」
「はい。ご希望とあらばベッドの上で召し上がっていただけるよう手配いたします」
「いや、いい」
 どんなに行儀よく食べたとしても食べカスは皿から零れるものだ。その落下地点がベッドだなんてリヴァイには我慢できない。即行で首を横に振れば、エレンは「食堂にご用意できておりますので、ご案内いたします」と答える。どうやらリヴァイの考えを先読みしていたらしい。もっとも、もしリヴァイがこの部屋での食事を望んだならすぐにその手配をしたのも事実だろうが。
「それでは、お召替えを手伝わせていただきます」
「……着替えくらい自分でできる」
「かしこまりました」
 髪や背中に触れられるのは構わないが、同じ接触であってもこの年になって着替えを手伝われるのは恥ずかしい。眉間に皺を寄せながらリヴァイはエレンの行為を制止し、用意されていた服を手に取る。滑らかな手触りにその値段を想像してリヴァイの動きが止まったが、今着ている寝間着の時にもそうだったので、すぐに復活して着替え始めた。
「エレン、これは?」
「こちらはクラバットでございます」
「クラバット?」
「はい。男性用のスカーフですね。僭越ながら、おつけしても?」
「あ、ああ」
 シャツとズボンを身に着けた後、用途不明の白い布を掲げたリヴァイにエレンはそう説明し、布もといクラバットを受け取る。
 リヴァイの知識の中では、自分くらいの年の金持ちの子供はよくリボンをつけていたように思う。とは言っても、本でチラ見した程度の知識であったが。
 しゅるりと衣擦れの音と共にリヴァイの前に跪いたエレンの手が首の後ろに回り、前に移動する。淀みなくクラバットを巻いた後は最後に軽く指で形を整えて「よくお似合いです」と緑色の双眸でリヴァイを見上げた。
「慣れてるんだな」
「そう思っていただけたのでしたら何よりです」
「違うのか?」
「わたくしがクラバットを巻かせていただいたのはリヴァイ様お一人だけですので」
「そうか」
 確かにエレンの本来の主であるはずのエルヴィンはクラバットやアスコットタイ等ではなく、ポーラー・タイ――ループ・タイとも呼ばれる紐状のネクタイ――であった。
 エレンがクラバットを巻いたのはリヴァイだけ。その事実はほんの少しリヴァイの気分を上昇させる。
「そう、か」
 胸の奥で湧き上がる歓喜の理由も知らず、リヴァイは同じ呟きを繰り返して無意識に口元に弧を描いた。



(中略)



 夢を見る。とても残酷な夢だ。
 物心ついた時から見ているそれは、おそらくリヴァイの人格形成や表情の乏しさの大きな原因になっている。目が覚めると夢の詳細はほとんど忘れてあやふやな輪郭くらいしか残っていないのだが、その余韻は幼い頃からリヴァイの胸に深く訴えかけてきた。
 時々は親しい人々に囲まれている心穏やかな夢もあるのだが、多くは叫びだしたくなるほど痛くて悲しくて悔しくて腹が立ってしょうがなくて、けれど前に進もうと強い決意を胸に宿した夢だ。
 夢の中でリヴァイはいつも強大な何かと戦っている。絶望的なまでの戦力差に大切なものは次々と手のひらから零れ落ち、大声で嘆く暇すら与えられない。
それでも進んで、そして――。
(金色の希望を見つけるんだ)
 顔も名前も判らない。自分との関係や、男か女かすら知らない。本当は知っているはずなのだが、起きた時には忘れてしまう。それでも確かなのは、残酷な夢の中でリヴァイが金色の希望を見つけ、更に力強く前に進み始めるということ。
 おかげで残酷な夢に苛まれながらもリヴァイが挫けることはなかった。眠りが浅い所為か顔色はあまり良くないし、同年代の子供より身体の成長も遅れているように見受けられるが、精神的には折れることのないものを持っている。
 希望があるから大丈夫。言葉にせずともそう思っていたリヴァイは気付けなかった。
 夢の中では多くの命が手のひらから零れ落ちていったと言うのに、どうしてその金色は失われる側に入っていないと言えるのか。


「あ、あ、あああああああああああああああああああああああああ!!!!!」


 喉が裂けて血が出んばかりの絶叫だった。それを聞きつけたエレンが血相を変えて部屋に飛び込んでくる。
「リヴァイ様!」
「えれ、……えれん。えれん、おれは、おれが……ッ」
「落ち着いてください、リヴァイ様。大丈夫です。怖いものなど何もありませんよ。どうか、そう、ゆっくり呼吸して。わたしの心臓の音が聞こえますか。これに耳を澄ませて」
 目を覚ましたリヴァイがベッドの上でエレンの痩身にしがみ付く。どんな夢を見たかなど覚えていない。しかし解ることはある。失われた。今夜、あの希望の色がリヴァイの目の前で失われてしまったのだ。
 所詮は夢。しかしその夢はリヴァイを形作ってきたものであり、夢の中で出会った金色はリヴァイを支えてきたものである。
 深夜だというのにきっちり着込まれた燕尾服を皺くちゃになるまで握り締め、リヴァイはエレンの名前を繰り返し呼び続けた。そのたびにエレンは苦言も呈さずリヴァイの頭を撫で、背中を撫で、血の通った温かな身体で抱きしめてくれた。
 しばらくそうしているとリヴァイも徐々に落ち着きを取り戻し、代わりに羞恥心が湧きあがってくる。夜中に悪夢で飛び起きて泣き喚くとは如何なものか、と自分の行動を振り返って頬の辺りが熱くなった。
「え、れ……もう」
「まだ手が冷たいです。もうしばらくこうしていましょう」
 リヴァイが腕を突っぱねるより早くエレンがまだ小さな子供の手を取って告げる。「手が冷たいのは緊張している証ですから、どうか無理はしないでください」懇願するようにエレンはそう続けた。
 体温を確認するためなのか、リヴァイの手を取ったエレンの右手は絹の手袋が外されている。室内の照明に照らされた白い肌は瑞々しく、とても誰かに仕えているような人間の手には見えない。
 リヴァイの視線が手の方に移ったことに気付いたのだろう。エレンはそっと手を離して、「申し訳ありません」と潔癖症のリヴァイに素手で触れたことを謝った。しかしリヴァイは無言で離れていく手を追いかけて掴む。
「リヴァイ様?」
「もう少し、このままで」
「はい」
 長い指がリヴァイの手を握り返した。
 じんわりと伝わってくる体温を感じながらリヴァイはエレンの胸に耳をぴたりとくっ付け、トクトクと響く心音に目を閉じる。エレンが反対側の手でリヴァイの髪をそっと梳いた。
「……夜中にすまなかった」
「いいえ。リヴァイ様が必要としてくださるなら、わたくしはいつでも駆けつけます」
「夢を、見たんだ」
「恐ろしい夢ですか」
「ああ。ずっと昔から見てる」
 夢の話を他人にするのは、実は初めてのことだ。しかもエレンはリヴァイに深夜の絶叫の理由を尋ねていない。だと言うのにリヴァイは何故か話す気になっていた。
「それは……大変でしたでしょう」
「もう慣れた。それに偶に幸せなものも見える。誰かが笑ってる夢とか」
 名前も知らないたくさんの大切な人達。彼らが自分の周りで笑ってくれる夢は幸せなものの一つだ。しかしそれらはいずれ失われる。この手から零れ落ちていく。そのたびにリヴァイは絶望し、けれども諦めずに前を向いた。やがてリヴァイは金色の希望を見つけ、それと共に歩み始める。
「でも」
 エレンの胸に顔を押し付け、もう皺くちゃでどうにもならない燕尾服に更なる皺を増やしながらリヴァイは声を掠れさせた。
「なくなった」
「無くなった?」
 オウム返しに問うエレンの腕の中でリヴァイはこくりと頷く。
「消えちまった。せっかく見つけたのに」
「何が無くなってしまったんですか」
「金色の、希望だ」
 リヴァイがそう告げた瞬間、自分を抱きしめる熱がぴくりと震えた。「エレン?」と顔を上げて覗き込めば、緑色の双眸が眼鏡の向こう側で揺れている。
「エレン、どうした」
「何でもありません。何でもありませんよ、リヴァイ様」
 瞬き一つでその揺らぎは落ち着き、いつもの淡い笑みが戻ってくる。そうしてエレンはリヴァイの視界を塞ぐように両腕で少し強めに抱きしめてきた。
「夢の中でその金色はリヴァイ様を置いて逝ってしまったんですね」
「ああ」
「悲しかったですか」
「ああ」
「苦しかった?」
「ああ」
「泣いてしまいましたか」
「たぶん」
 反射的にそう答えた後、リヴァイは僅かに逡巡して「いや」と己の言葉を否定する。そして、
「死ぬほど泣いた」
 夢の中の自分の感情を、そのぼやけた輪郭を、覚えている限り吐き出した。
「すごく、後悔した。何をかは知らねえ。でも自分を殺してやりたいとすら思った。同時に、いなくなったそいつを思い切りなじった。嘘つき野郎って。……ああ、そうだ。確か一緒にいるって約束してたんだ。でも消えたから……。あれ? 消えたんだっけ? ……違う。消えたんじゃない。あいつは、おれ、の、せいで……おれ、が」
「リヴァイ様、もういいです。その話はやめましょう。さあ、まだ夜も深い。お休みになってください」
 あと少しでリヴァイは何かを思い出そうとしていた。しかしそれをぶった切る形でエレンがリヴァイをベッドに寝かせる。
「エレン?」
「ご不安でしたら一晩中わたくしが傍におります。だからどうぞ安心してお休みください」
「ずっと?」
「ええ。ずっとです」
 まだまだ幼い身体は眠りを欲しており、エレンの柔らかな声とぬくもりを感じたことで、徐々に落ち着きを見せていた。おかげでベッドに横になったリヴァイの瞼は早くも閉じかけている。
 ベッドサイドの灯りを絞って暗くなった室内にエレンの声が小さく響く。
「約束しましょう。ずっとあなたの傍にいます。だからどうか、もう嘆かないでください」
「え、れん」

「今度こそあなたを置いて逝ったりはしない。そのためにオレは■■になったんだから」

(エレン……?)
 彼が何を言ったのか聞き取れない。しかしそれを尋ねる前にリヴァイの意識は眠りへと落ちていった。