そして彼は微笑んだ VS石田雨竜





「ホラ。これでいいだろう。」

そう言ってメガネミシンこと石田雨竜が放って投げたのはライオンのヌイグルミ――オレの体だ。

「投げるな。」

もっと丁寧に扱えと非難しながらオレはそれを受け取る。
オレが入っている体の持ち主は、現在、某ゲタ帽子の所にお出かけ中だ。
なにやら急用という事で、今の状態。
人間よりも死神で移動した方が速いからな。
ちなみに帰りが遅い場合は問答無用で迎えに行く所存であったりする。

ということで、オレは橙色の頭髪を掻きながら中身の抜けたヌイグルミの出来上がり具合を確かめた。
少し離れた所にはどうだと言わんばかりの石田。
メガネがきらりと光ったのは見間違いと言うことにしておくのが賢明だろう。
そうしてしばらく無言で色々と見ていたオレだが、俯き具合だった顔を上げて無表情のまま言い放ってやった。

「ヘタクソ。」
「なっ!?」

メガネを直そうと手をやっていた格好のまま、石田が大口を開けて固まる。

「なに、この縫い目。こんな雑なので良いと思ってんのか?
それに綿の詰め具合もなぁ・・・ちょっと入れすぎ。これじゃァ硬い。
テメーそれで本当に手芸部の部長なのか?・・・・・・はっ!笑えるな。」

オレがそう言い切ったところでようやく石田も解凍したようだ。
あらためてメガネを直してからフッと笑い、こちらを馬鹿にするように見据えてくる。

「それを見てヘタクソと言えるなんて、君はよっぽど見る目が無いんじゃないかな?
でもまぁ・・・そうだね。僕の道具を貸してあげるから自分でやって見ると良い。
君の上手と言うものを是非とも見せてもらおうじゃないか。」

少しばかり早口だ。
こりゃァかなり腹立ってんのかな。どうでもいいけど。
とにかくオレは渡された裁縫道具とヌイグルミを両手に抱えて小さく溜息を零した。

「おや。まさかあれだけ言っておいて出来ないと言うつもりかい?」
「ったく。やるよ。やりゃーいいんだろ。」

さっきのは訂正だ。
“かなり”じゃない。コイツ、ものすごく腹立ててやがる。
本当の事を言われると怒るってのは、結構誰にでも当てはまるモンなんだな。

そう思いつつ、オレは石田の見ている前で手直しを始めた。
















「ま、こんなもんか。」

10分後。
オレは出来上がったヌイグルミを脇に置き、広げていた裁縫道具を元に戻して石田に返した。

「おい。これ返すから。」
「・・・あ、あぁ。」

どうやらボーっとしていたようだ。
ワンテンポ遅れて石田はそれを受け取った。
と、気づけば近づいてくる良く知った霊圧。
なかなかにタイミングのいいヤツだな。

「一護、お帰りー。」
「ただいま・・・って、おお。ちゃんと直ってンじゃん。
スゲーな。そこらで売ってるヤツより綺麗になってねぇか?」
「だろー?どうだ、これがオレ様のスーパーミラクルボディだぜ!」


そう言ってオレは一護に微笑み、それからこっそりと石田のほうを向いて嘲笑ったのだった。








こちらは素敵なアイデアを下さった写楽様へ。
なんか、コンの方が石田より裁縫上手かったりするんですけど・・・(汗)
人形(自分の体)だからか?
なのに石田に直してもらっていたのは、きっと一護がコンの裁縫の上手さを知らないまま石田に頼んじゃったんでしょうね。
(ということにしておきましょう/笑)



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