ゲンセヘノキカン 2
聞こえた声に、足が止まった。
「一護ちゃん、ちょう待ったって。」 「・・・ギ、ン・・・?」 呼ばれて振り返れば、視線の先に三つの人影。 一つは山本総隊長、もう一つは雀部副隊長。 そして残る一つは、市丸ギンだった。 「え、お前なんでこんな所に・・・」 この場にいる全員の代弁であるかのように一護が呟く。 問いかけられたギンは一番隊の主従と共に数多の視線を受けながら、いつも通りのキツネ顔でにこりと笑った。 「ボクの刑罰が決まったんよ。せやから此処に来た。」 「は?何言ってんだよ。極刑だなんつー悪趣味な冗談は却下だぜ。双極は俺が壊しちまったんだから。」 「ちゃうちゃう。」 笑った顔を更に嬉しそうに歪めて、ギンは顔の前で手を振る仕草をする。 そして訝しむ皆を前にして解答を告げた。 「この度、ボクに与えられた刑は期限付きの追放。死神代行黒崎一護と共に現世に降りてそのお手伝いをすることなんよ。一護ちゃんが断らん限り、一護ちゃんが死んで本当の死神になるまでずぅっとな。」 「・・・・・・・・・・・・マジ?」 「マジ、やで。」 一護の台詞に肯定で返して、ギンは同意を求めるように山本へと首を巡らせる。 山本は「うむ。」と頷いてギンの言ったことが嘘ではないことを証明すると、続いて一護に視線を向け、その名を呼んだ。 「黒崎一護、」 「はい。」 威厳のある声に、自然と背筋が伸びる。 山本を正面に見据えて応えると、護廷十三隊の統括者は薄く開いた目の隙間から一護を射った。 「市丸の言ったことは事実じゃ。三番隊隊長としての地位を一時的に剥奪し、尸魂界から追放する。そしてお主と共に現世で虚の討伐に当たり、また同時にお主とお主の中の崩玉の守護をすることが市丸に科せられた罰じゃ。」 そう言い、山本は好々爺の如く、にこりと笑った。 驚きに目を見開く一護へと向かって。 「一護ちゃん、これからよろしゅうな。」 近づいて来たギンに間近で微笑まれる。 それでハッとした一護が山本を見詰め直すと、未だ好々爺然としたままの彼の人が一度だけ頷いた。 「・・・あ、ありがとうございます!」 「なに、礼を言われることなどしておらんよ。儂らは市丸のしたことに対して相応の罰を与えただけじゃ。それに、礼を言うのは儂らの方じゃろう。・・・礼を言うぞ。黒崎一護。お主のおかげでこの地は救われた。―――また会おう。その時を楽しみに待っておるからな。」 「・・・はい。」 微笑み返し、一護は山本に背を向けた。 前にいるのは織姫、チャド、雨竜、夜一、そしてギン。 皆、笑っている。 四人と一匹に頷いて、一護は満面の笑みを浮かべた。 「帰ろうぜ!俺達の街へ!!」 |