イクツカノアトカタヅケ 1











反逆の徒・藍染が捕縛されてから一週間が経った。
中央四十六室は相変わらず全く機能していなかったが――そう簡単に新メンバーも決まってはくれないらしい――、代わりに護廷十三隊やら王族やらが動いてその業務をこなしている。
藍染達への処罰をどうするかというのもそんな業務の一つに入っており、現在、細かい事は審議中だと言う話が一護の耳にも届いていた。

(言っちゃ何だが、どうせ死罪かその辺だろ。)
『まぁそうだな。四十六室全滅させたし。・・・東仙は考える余地も有りそうだが。』
(日本で言う所の精神が〜とか何とか?言葉巧みに藍染に操られてましたってな。)
『そう言うこと。だが実際はキツネの証言がかなり大きな鍵になるだろーよ。』

そう零して白い彼は小さな苦笑を付け加えた。
一護も同意を返し、それから遠くに視線を飛ばす。
今いる部屋の窓からは藍染達が拘禁されている建物が見えた。
白を基調としたその建物には、白い彼がキツネと称した一護の知り合いもいる。
市丸ギンが。


藍染達を捕らえたあの日。
一応の雑事が片付いて上位の死神が双極の丘を去ろうとした時、山本がギンの方を向いて告げたのだ。
あそこにいる市丸ギンも重要参考人として捕えよ、と。
その時既に一護は別件(崩玉を使用し、虚の力を使った事)についてきちんと話をしなくてはいけないと言う事で、隊舎へ帰る山本に同行する事が決定していた。
だから山本のすぐ傍にいた一護はその発言を聞いてすぐに声を荒げたのだ。

「総隊長!?あいつは藍染の仲間なんかじゃ・・・!」
「黙れ童。お前の言うことには主観が含まれ過ぎておる。公正な判断のためには真実を知らねばならんのじゃよ。理解せい。・・・それに、」

一護とは対照的に、山本は淡々と続ける。

「お前は自分の感情のみで市丸に己の罪を償う機会まで奪うつもりか?」
「・・・っ!」

その台詞に息を呑んだ。
ギンを見遣れば、彼は困ったように微笑んでおり、一護が如何思おうとも、自分自身がこれからどうすべきなのか全て決めてしまっているようだった。
脳内からも『そう言うことらしいぜ?』と伺うような、言い聞かせるような相棒の声が響いて、一護はようやく握り締めていた両拳を解く。
そして此方を見詰める知り合いに笑い返した。

「自分の言いたい事、全部言ってスッキリして来いよ。・・・現世で待っててやるからさ、ギン。」





「アイツ・・・大丈夫だよな。」
『さあなァ。やろうとしてた事がアレだし、お前と再会しなけりゃ藍染の言いなりになってたのも確実・・・。楽観視はハッキリ言って無理だぜ。』
「容赦無ェなホント。」
『事実を告げたまでさ。・・・でもま、お前もあの時色々やらかしときながら結局は問診と精密検査だけで済んだんだ。キツネに関しても最悪の事態くらいは避けられるんじゃねえ?』

フォローの言葉に「だといいけど。」と漏らして、一護は溜息を一つ。
しかしその後すぐ、ぐだぐだ思い悩んでも仕方が無い、なるようにしかならないのだ、と思い直して窓から視線を外した。
外れた視線は反対側の扉へと向けられる。
その直後、訝しげに琥珀の双眸が狭められた。
近づいて来るのは織姫の霊圧。
十一番隊の者達ではないことに多少の安堵を覚えるが、彼女の焦った気配が気に掛かる。
やがてパタパタという足音まで聞こえるようになり、見据えた先の扉が勢い良く開かれた。

「黒崎くん!朽木さんがいなくなっちゃった!!」






















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