アネトオトウト 2
「「「く、空鶴って女ァ!!?」」」
「・・・そんなに驚くモンか?」 『知らなかったらな。』 織姫・雨竜・チャドの驚き様に一護がポツリ。 それに対し、白い彼がそういうものだと返す。 話し方等から男性かと思われる夜一の知り合いであること、また「空鶴」という名前からも 三人の中では無意識のうちに「志波空鶴=男」の図式が成り立ってしまっていたのだろう。 「・・・なんだ?そのガキどもは?」 大声を出した少年少女達に今更ながら気づいた・という感じに空鶴が視線を向ける。 空鶴の視線に促されるように、未だ部屋に足を踏み入れていなかった夜一は「実はの、空鶴。」と口を開きつつ 彼女の元へと歩みを進めた。 「今日はおぬしに頼みがあって来たのじゃ。」 「だろうな。お前がウチ来る時は大概そうじゃねぇか。」 微苦笑を浮かべて、空鶴。 それから夜一が自分の傍で足を止めるとスッと目を細めて声のトーンを抑える。 「面倒事か。」 「恐らくは。」 夜一も静かに返す。 空鶴は夜一を含め複数の視線を感じながら一度ゆっくりと瞬きをすると「ハッ」と笑って顔を上げた。 「久しぶりだな、このやりとりも・・・いいぜ。話せよ。面倒事は大好きだぜ。」 「・・・成程。話は大体わかった。」 夜一の話を聴き終わったあと、空鶴は煙管片手にふうと紫煙を吐き出した。 「いいだろう。引き受けてやる。」 「本当か!」 「あァ。」 空鶴の了承を得て夜一の声には喜色が混じり、 その空鶴はというと「浦原もかんでるんじゃア断るに断れねえしな。」と言いつつ腰を上げる。 (・・・浦原って意外と便利。) 空鶴の言った台詞に一護が感想を少し。 それを呆れながら相棒が聞く。 『便利とか言うなよ。一応お前を好いてる相手だぞ。』 (あははー) 『笑って誤魔化すな。』 一護の乾いた笑いにそう返し、白い彼は溜息を一つ。 その間にも立ち上がった空鶴は一護達から見て部屋の右側へと向かう。 「ただし――・・・」 歩きつつ、そう言って空鶴は夜一の背後にいる一護達を一瞥。 「おれはあんたのことは信用してるが、そのガキどもまで信用したワケじゃねえ。 見張りの意味も込めて、おれの手下を一人つけさせてもらう。異存はねぇな?」 「無論だ。」 「手下・・・?」 夜一は元から予想していたという様に頷き、対照に後ろの四人はそれぞれ首を捻る。 「あァ。まあ手下っつってもおれの弟だ。まだ糞ガキで使えたモンぁねぇがな。」 そう言って空鶴は襖の前に立った。 (・・・マジ?) 『うわっ。』 空鶴の「弟」と言う言葉。 そして一応見知った気配を感じ、一護はこっそり眉根を寄せる。 もし自分の感覚と予想が正解の場合、此度のルキア救出のための一行にあの人物がついて来ることになるのだから。 「おい!用意できたか!」 襖に手をかけ、空鶴が問う・・・否、むしろ怒鳴る。 「ちょっ・・・まっ・・・」 その向こうからは焦った声。 なにやらドタバタと騒がしい音まで聞こえてくる。 「あけるぜ!行儀良くしろよ!」 「お・・・おう!オッケーねえちゃん!!」 空鶴が張りのある声で確認し、返って来た返事にガラッと勢い良く襖を開いた。 現れたのは――― 「は・・・初めまして!志波岩鷲と申します!以後お見知りおきを!」 正座し、両拳を畳につけたままニッコリ笑顔の人物を見て、一護が「げっ」と声を漏らす。 互いの姿を確認。 四人と一匹、襖の向こうにいた人物。その間で一瞬空気の流れが止まった。 「あああ〜〜〜〜〜〜〜っ!!!!」 「うるせえよ、イノシシ原人。」 叫ぶ岩鷲の声に耳を塞ぎ、やっぱりかと眉間の皺を増やして一護が呻いた。 +オマケ+ 『わーい。石波使いが仲間になった。チャラッチャ〜ン。』 (同じ調子で言うのは止めようぜ。なんか怖い。) どうやら白い彼は「石波使い」こと岩鷲をとことん嫌う姿勢のようである。 |