アンタは藍染惣右介の元副官で。
藍染は――まぁ言ってしまえば――俺たちの敵で。

だからこうなることくらい簡単に予想できたはずなんだけどな・・・












センケツトサイカイ 1











「ホ・・・ホントに僕たちも通っていいのか・・・?」

白道門の通行を許可された一行。
門番であるジダン坊に勝ったのは一護だけなのだが、他の三人と一匹も同じく通って良いと言われ、 雨竜が戸惑いながら訊いていた。

するとジダン坊は「ああ・・・」と言い、

「オラはおたづのリーダーに負げた!おたづを止める資格はねえだ!」

と。

その発言に雨竜は一瞬言葉に詰まり、それから後ろにいた一護をビシッと指差しながら叫んだ。

「黒崎が僕たちのリーダーだって!?冗談じゃない!」
「何ムキになってんだよお前・・・」
(誰がリーダーだとかンなもん軽く流せばいいのに。)

指を差された一護の方は熱い雨竜とは逆に随分と冷めた様子で呟く。



「黒崎っていうだか、おえ・・・」

雨竜の台詞から一護の姓を聞き取ったジダン坊が一護本人にそう問うた。
一方、話しかけられた一護は雨竜の背中にやっていた視線を斜め上・・・ジダン坊の方にあわせて「ああ。」と頷く。

「黒崎一護ってんだ。」
「ほぅ・・・」

一護の答えにジダン坊は目をパチクリまばたかせると少し驚いたような表情で口を開いた。

「いちごか・・・ずいぶんとまあ、めんこい名前だなや・・・」
「うるせえよ!!一等賞の一に守護神の護だ!めんこくねぇ!!」

(何でこういつもいつも・・・!)
『まぁ普通はその漢字思いつかねぇよな。』

外でも中でも叫けぶ一護に、相棒はそう言いながら苦笑するだけだった。



















門に触れながらジダン坊が一護を見つめる。

「・・・気ぃつげろや、一護。 おえが何のためにごの門をくぐるのか知んねえが、ごん中は強ええ連中ばっかだど!」

「わかってるさ。」

それを強い瞳で見返す一護。
ジダン坊は見上げてくるその視線をしばらく無言で受けていたが、やがて「そうが・・・」と呟き、軽く目を瞑った。

「・・・イヤ。わがっでんならいいだ・・・ほれ、今門開げるがらのいでろ。」

ジダン坊はその巨体を屈めて門の下に指を差し込む。

「腰抜がすなよ〜〜一気にいぐど〜〜〜・・・  ぬ゛ う゛ ん!!!」



ゴ・・・ッ



ジダン坊の声と共に巨大な門が持ち上がる。

「ごぉぉぉぉおおおおおお!!!」

雄たけびと共に体のバネを使ってジダン坊が一気に立ち上がり―――



ゴォォォンッ!!



そうして、門が開ききった。

「「「「う・・・おおおおおおおっ!!!」」」」

「す・・・すげえ・・・!」
「こんなのが持ち上がっちゃうなんて・・・」

口からは驚きと感嘆の言葉しか出ない。
完全に持ち上げられた白道門を見上げ、一護たちは改めてジダン坊の剛力の凄さを実感してしまった。





(・・・・・・あれ?)

門が開いたことで殺気石の効力が部分的に消えたためだろうか。
瀞霊廷内からどこか覚えのある霊圧を感じ、一護はハッとして目を瞬かせる。
加えて視界の端・・・斜め上のジダン坊の顔がさっと青ざめ、その視線は丁度その霊圧の方向を向いていた。
一護がそちらの方に視線をやると―――




微風に揺れる銀糸。
透けるような肌と糸目の笑顔。
そして黒い死覇装に白い隊長羽織。




「・・・あ。」

目を見開き一護が小さく驚きを口にする。
その声をかき消すかのようにジダン坊が震える声でそこにいた人物の名を呼んだ。

「さ・・・三番隊隊長・・・・・・市丸ギン・・・」






















「あァ・・・こらあかん。」

ギンが口を開いたのと同時。
門を支えるジダン坊の左腕が勢いよく吹っ飛んだ。

(今のは・・・)

すぐに気を取り直した一護が心の中でだけ呟く。

『斬魄刀・神鎗・・・』
(瞬時に伸びる刃が遠く離れた目標物を貫く・・・まさに神のやりだな。)

ギンの一連の――そして一瞬の――動作をしっかりと目で捉えていた一護がそう感想を述べる。

見えていたはずなのにジダン坊を助けようと動かなかったのはギンの斬魄刀の能力を知るためだ。
一護が聞いていたのはその名前だけであって能力までは白い彼自身も知らなかったのである。
ちなみに白い彼も全ての斬魄刀の能力を知っているということでは無いだけで、 一部の斬魄刀についてはその使用者・形状・能力等細かく知っているものもある。
知識に妙な偏りが生じているのだ。

それはともかく。

一護の視線の先ではギンが刀の柄から手を離し、ジダン坊の無くなった左腕の部分を見上げてニィっと笑っていた。

「あかんなぁ・・・門番は門開けるためにいてんのとちゃうやろ?」

噴水のように左肩から噴出す血液は雨のように降り注ぎ、辺りを真っ赤に染め上げる。
血雨を浴びながら笑みを浮かべているギンと片腕を失いながらもなんとか門を支え続けるジダン坊を見比べ、 一護と夜一を除く一行は息を呑み、そして何が起こったのかわからないままただ唖然とするばかり。

「おー・・・片腕でも門を支えられんねや?サスガ尸魂界一の豪傑。 ・・・・・・けどやっぱり、門番としたら失格や。」
「・・・!!」

ギンの台詞と何か得体の知れない気配にジダン坊はぐっと言葉に詰まる。
しかし下を向いていた顔を上げギンの方に視線を向けると、 痛みのために大量の脂汗を流しながらもしっかりとした口調で言った。

「負げだ門番が門を開げるのはあだりめえのこどだべ!!」
「――――――何を言うてんねや?」

返されたのは笑顔と、そして身も凍るような冷たい声。

「わかってへんねんな。負けた門番は門なんか開けへんよ。門番が"負ける"ゆうのは・・・」

『一護!』
(おう!)

「"死ぬ"ゆう意味やぞ。」

白い彼の声に一護が応えたのとギンが台詞を言い切ったのはほぼ同時。
そしてギンの抜いた刃がジダン坊の方へ向けられようとした時―――



ギィン・・・!!



鋭い剣同士の打ち合う音が辺りに響き渡った。

「な・・・」

笑みの形を僅かに崩したギンの目の前には不敵な顔の少年。

「キミ、は・・・」

ギンの呟きに一護はフッと笑う。











「久しぶり・・・・・・・・・ギン。」






















白一護さんの正体を暴いてみよう!その一。


「白一護さんは物知りだが知識に偏りがある。」

実はこれ、白一護がどのようにして生まれたかに関係しているのです。

そのうち明かせるといいなぁ・・・でも一護は訊かないしねぇ・・・

いっそのこと秘密のままにしておこうかな(オイ)












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