穿界門を潜り抜けた先は、三方を気体のような液体のような、
そして時に固体のような様相を示す壁がそびえ立つ場所だった。
ただ前方にだけ壁がなく、遠くに出口らしきものが見える。 そして、足元には骨のような何か。・・・骨そのものかも知れないが。 「ここが・・・」 「・・・断界・・・!」 織姫の呟きを続けるように、一護。 「さぁ!呆けるな!走れ!!拘流の壁が追ってくるぞ!!」 先頭にいた夜一が叫ぶ。 それを合図に一同は一斉に走り出した。 ヒッシノシッソウ 1
「ほ・・・ッホントに壁が追いかけてくるぞ!僕たちが走りぬけた所がどんどん崩れてきてる!」
「振り返る暇があるなら一歩でも進め!拘流にのまれればお終いじゃぞ!!」 後方に視線を遣りながら走る雨竜に夜一から叱責が飛ぶ。 先頭を行く夜一のすぐ後ろを走っていた一護はその雨竜の声にチラリと後ろを窺って息を呑んだ。 (話には聞いてたけど・・・生・拘流。スゲーな・・・) 一護達が走り去った所を次々と埋め尽くし、時に横からも塊となって落ちてくる拘流。 それに衣服の端すら絡め取られないように気を張りながらひたすら走る。 (・・・石田の服、ちょっと危なくねえか?) 『ヒラヒラしてるしな・・・』 自分よりも何歩分か後ろを走る雨竜の衣装に目を遣り、一護が口に出さず呟く。 と、いきなり真横の壁が大きく崩れた。 「・・・ッ!?」 「うわぁ!!」 「きゃ・・・」 一護は眼を見開き、壁に近かった雨竜と織姫からは悲鳴。 崩れた拘流の壁は地面に衝突して跳ね返り、それがさらに一護たちを襲う。 そして、跳ね返った拘流の一部がついに――― 「・・・ッ!石田!後ろだ!!」 「え?うわっ!?」 一護が叫ぶも既に遅く、拘流は雨竜のマントを絡め取り、そのまま彼の体ごと勢いよく引き寄せる。 「馬鹿が!ヘンな服着てくるからだ!!」 そう言って一護は足を止め振り返った。 先を行く夜一から声がかかる。 「一護!斬魄刀は使うな!拘流は霊体を絡め取る!斬魄刀を振るえば、それごとおぬしも捕らわれるぞ!!」 「わかってるよ、夜一さん!」 一護の左手人差し指に小さな光球。 それを雨竜のマントに向けて最小限の言葉を紡ぐ。 「破道の四『白雷』」 向けられた指先から細い光の筋が伸び、拘流に絡め取られたマントを一瞬で切り裂いた。 夜一と雨竜から驚く気配。 それに構うことなく、すぐさま一護が声を上げる。 「チャド!石田を頼む!」 「ム。」 返事と共に、一護の言葉の意味をしっかりと理解したチャドが雨竜を肩に担ぎそのまま走り出す。 目を白黒させる雨竜。 一護はチャドと並走し、横目でニッと笑いかける。 「さすがチャド。サンキュー。」 「いや。・・・・・・一護、今のは?」 「鬼道。一桁台だから結構簡単なやつだぜ。」 「・・・そうか。」 「お・・・降ろしてくれ茶渡くん!自分で走れるから!」 自身の状態にハッとした雨竜がチャドに担がれたまま叫ぶ。 女性である織姫がすぐ近くで走っているのに対し、自分はなんと言う格好を・と恥ているようだ。 「もういいから!降ろ・・・」 急に雨竜の声が止んだ。 (何だ・・・?) 『嫌な予感がする。』 白い彼が呟くのと同時。 雨竜が再び口を開いた。 「何か来てるぞ・・・!」 |