空気が振動し、大虚の霊圧がチリチリと肌を焼く。
「虚閃を放つ気か?なぁ・・・メノス。」 目の前の巨体を見上げて一護が不敵に笑った。 ウゴキダシタモノ 6
メノスの口元に光球が灯り、それを視認して足を止める。
キュン・・・と高い音の、しかし巨大な力の奔流が一護に向かって放たれた。 一護は刃に左手を添えてそれを受ける。 そのまま弾き返そうと足と腕に力を込めてその場で踏ん張った。 (やべ・・・ちょっと引きずり出されるかも。) メノスの攻撃を受け止めたことによって一護の抑えていた霊力が少しずつ外に漏れ出していく。 『構わねぇだろ。そのまま霊圧上げてあのデカブツを両断しちまえ!』 (・・・そうだな。) そう返し、一護は己の霊力を抑え付けているのを意識的に少し緩めた。 上がっていく一護の霊圧にキィィィンと甲高い音を立てて斬月が共鳴する。 「こンくらいか。」 呟き、斬月を大きく振り上げた。 剣圧がメノスを駆け上り、その体を両断する。 白い仮面の横スレスレを走ったその傷跡を見て一護の口元が弧を描いた。 (上出来。倒さずに追い返すのみ・・・ってな。) 一護を中心として辺りには霊圧による突風か起こり、 それは雨竜やルキア達の、そして一護の髪と衣装を乱暴に掻き乱していく。 縛道でろくに動けぬ体でその突風を受けながら、ルキアが呆然として口を開いた。 「こんな、こんな事が・・・。 一護め・・・メノスを両断してしまいおった・・・!!」 空気を震わすような叫び声を上げながらメノスがヒビに体を滑り込ませて向こう側へと帰っていく。 それを見届けて一護はその場に倒れこんだ。 「黒崎!?」 倒れた一護を見て、雨竜が慌てて駆け寄ってくる。 「ったく・・・霊力の微調整なんて慣れねぇことするもんじゃねぇな・・・体に負荷がかかり過ぎる。」 雨竜が走ってくるのを見ながら一護はポツリと零した。 『お疲れさん。』 (まぁね・・・全開ならまだ楽なんだけど。ここんトコ、今後の課題かな。) もっと上手く調節出来るようになんねぇと・と呟いて、それから一護はやって来た人物に笑いかける。 「黒崎!大丈夫か!?」 「おう。・・・って、なに泣きそうな顔してんだよ。」 「そ、そんな顔してないっ!・・・まったく、君はそんな状態でも減らず口を叩くんだな!」 「ははっ・・・それだけ元気ってことだろ。」 八の字眉毛の表情を見られまいと雨竜が顔を背けて憤慨し、それを見て一護は声に出して笑っていた。 「石田。後でゼッテー殴るけど、テメーも俺を殴るのか?」 「それだけ元気ならね。」 雨竜は一護を見て、ずれた眼鏡を直しながら笑った。 その翌日。 「つまるところ、喧嘩慣れしてねぇヤツが俺に一発食らわせようなんて無理な話なんだよなぁ。」 「やっぱり死神は嫌いだッ!」 握った拳を見つめてしみじみと呟く一護と、彼に殴られ地に伏している雨竜が某所に居たとか居なかったとか。 「安心しろ。手加減はしてある。」 「・・・訂正。死神は嫌いだが君はもっと嫌いだ。」 雨竜が見上げた空座町の空は憎らしいほど青かった。 |