『今週の蟹座は絶好調なんだってな。』
(じゃあ俺は今週絶不調か。) 『・・・・・・・・・』 今週は「ぶらり霊場突撃の旅」略して「ぶら霊」の生放送がある。 ロケ地は空座町。 だから家族も学校の奴らもみんな浮かれてやがる。 それのどこが“絶好調”だ。 占いなんて当たりゃしねぇ・・・ スイヨウビノダイメイワク 1
水曜日、午後7時31分。
廃病院へ向かう道の途中。 一護の目の前には“あの”ポーズをとる友人達がいた。 加えて後ろには、同じく胸の前で腕を交差させる父親と妹の片割れ。 この状況に一護の眉間の皴はいつもの3割増である。 (・・・頭イテェ。) とりあえず、水色たちに「来てんじゃん!!」とつっこまれつつも皆で一緒に歩く。 学校では行かないと言っていた一護だが、家族が行きたいと言うのだから話は別。 仕方なく父親と遊子についていく形となった。 これにはもちろん夏梨も一緒だ。 撮影―――もとい心霊番組に関して本人は全く興味などないらしいのだが。 (夏梨のヤツ、霊力高いからなぁ・・・虚も視えてたし。) それだけではない。 死神すら視えているのかもしれないのだ。 (やっぱ俺のことも視えて・・・) 「黒崎くん!」 後ろからかけられた声に一護は振り返る。 「井上・・・どうした?」 いつもより元気のない織姫に気づき、首をかしげる一護。 それに困ったように笑って、織姫は少し言いにくそうに話し出す。 「あの・・・こないだはゴメンね・・・」 「・・・?何が?」 一護にとって特に思い当たることはないのだが・・・ 「たつきちゃんに聞いたの。黒崎くんこういう番組キライだって・・・」 (・・・あぁ。教室に入った時にやられたヤツのことか。) どうやら、先週一護の目の前で織姫があのポーズを取ったことについての謝罪のようだ。 (律儀だなぁ・・・) 好感の持てる性格に一護はしかめっ面を直して答えた。 「いーって。そんなの全然気にしてねぇし。」 前を歩く友人たち―――啓吾と水色を見やると、 ちょうど二人で「ボハハハハーッ!!」と言っており、一護は苦笑して続ける。 「ケイゴとか水色なんか、俺が大キライなの知っててアレだしな。」 「でも・・・来たんだね。なんで?」 「遊子と親父が行きたがってたからな・・・二人だけで行け・なんて言えねぇし。」 止まっていた一護に織姫が追いつき、二人は並んで歩き出す。 「優しいんだね。黒崎くんは。」 「何でよ?フツウだろ。」 一護の返答に織姫は驚きを覚えて彼を見た。 「・・・うん。そうだね・・・ふつうだ。」 それが彼のふつう。 家族思いの、優しい優しい彼のふつう。 「ふつうだね・・・」 とても、素敵だね。 織姫はふわりと微笑んだ。 |