6年前。
あの日は雨が降っていた。












アノヒトガシンダヒ 1











16-JUNE



「ルキア。俺、明日学校休むから。」
「・・・?どうしたのだ、一護。」

黒崎家、一護の部屋。
三日月が街を淡く照らし出す夜。
風呂上りの一護が発したセリフにルキアが疑問で返した。

明日は何かあるのだろうか。
そういえば、先程までなにやら楽しそうに家族会議をしていた。
それと関係しているのだろうか。

訊かれた一護はルキアに背を向けたまま、月を見上げて静かに答える。

「命日なんだ・・・おふくろの。」
「!?」

ルキアの目が驚愕に見開かれた。
そうして、失敗したと思う気持ちとそれでも知りたいと思う気持ちがルキアの中で渦巻く。



月を背景にして一護が振り返る。

「明日は、おふくろが・・・・・・“殺された日”だ。」

本人は何でも無いような顔を作っているつもりなのだろう。
けれどもその思いにそぐわず、苦しげに顰められた双眸にルキアの姿が映っていた。


















17-JUNE



梅雨にしては珍しく晴れた空の下、一護は家族と共に墓参りに来ていた。
母の、である。

父はいつもの―――いや、いつも以上のテンションの高さでふざけ、妹に怒られている。
それを横目に見やり、「6月だってのに暑いなァ。今日は・・・」と空を見上げると、 そこにあるのは梅雨が明けたかのような白い雲と青い空。

「同じ6月17日なのに、エライ違いだよな・・・」

一護の脳裏をよぎるのはあの日の光景。
雨と河原と電車の音、そして・・・





「あれ、先客がいる。」

夏梨の声にふと我に返った。
今日は平日である。
だから同じ墓参りの人に出会うのは珍しいのだが・・・
そう思い、一護は妹達が見ている方向に視線を向ける。
居たのは、こちらを向いて手を振るワンピース姿の少女。

(なんでいるんすかー!!!)

なんと今は学校にいるはずのルキアが目の前に。
一護の顔色が一気に悪くなる。

(・・・あぁ。何しに来てんだよ、アイツは。)

「お兄ちゃん・・・?」
「中学ン時の友達だ!ちょいと話してくるから、オマエらは先に行っといてくれ!」

妹達にそう言い残し、一護はルキアをつれて走り出した。









木々に囲まれた歩道で一護は足を止める。
そうしてルキアに向き直り、

「何でついて来たんだ?虚なら俺一人でも対処できるぞ。」

憮然とした表情でそう告げた。
そんな彼にルキアは苦笑で返す。

「わかっている。此処には、ただ私が来たかっただけだ。」
「?」

一護は疑問符を浮かべた。
ルキアが此処に来たかった理由とやらに思い当たらない。

彼女は一護の疑問を解消するように続ける。

「姿形は・・・」

そう言ってルキアが自身の胸に手を当て、一護を見据えた。

「・・・これでも、私は100歳を越えている。 そんな輩がいまさら学校へ行くこともなかろう?それならおぬしといる方が良いと思ってな。」
「なんだそりゃ。」
「別に構わんだろう。これは私の自由だ。」

そう言って、ルキアが歩き出す。
しばらくすると視界が開け、眼下には整然と並べられた墓石。
そしてそこには家族の姿が・・・

「ほれ。そろそろ家族のもとへ行った方が良いのではないか?」

一護の方に振り返って見せる表情は大人びているようで、しかし十代の少女達となんら変わらないものだった。






















遂にやってきましたグランドフィッシャー編。

2話完結でございます。

1の方はそんな事ないのですが、2の方は一護が凶悪になっております。

対グランドフィッシャー戦によりブラック一護降臨中です。

血やグロいものが苦手な方、一護はかわいいんだと思っていらっしゃる方は読むのをお控えください。












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