「ピッチャー、ガーッと振りかぶって・・・ギャッと投げた!
球はゴバーッとヤバい方向へ!!」
朝の住宅街に元気な子供の声が響き渡る。 「バッター4番、花刈ジン太。 かっこいいバックスイングから―――・・・」 『浦原商店』と書かれた店の前。 髪を逆立てた男の子―――ジン太が箒をバットに見立てて遊んでいる。 それとは対照的に、近くには黒髪を二つに結わえた女の子―――ウルルが大人しく店の前を掃除していた。 彼らは二人ともこの浦原商店の店員である。 そしてそこを訪ねる人物が一人。 ぐん!とジン太が持つ箒を取り上げる。 「相変わらずだなチビすけ。店長はいるか?」 「・・・まいど。」 昨夜一護に話していた通り浦原商店を訪れた、現在彼の部屋に居候中の死神、朽木ルキアであった。 トウソウトツイセキ 1
ガラッ
「むっ。こらジン太、まだ開店時間には早い――・・・」 扉が開き、中にいたテッサイがジン太を咎める。 「仕方ねーだろ!どうしてもあけろってウルセーんだから!」 そう言うジン太の隣にいる人物を見て、テッサイは抱えていた荷物を降ろし彼らに近づく。 「朽木殿でしたか。少々お待を。今、店長を起こしてまいります故。」 ルキアはこの浦原商店のお得意様である。 多少時間が早くとも、そこは何とかしてもらえるのだ。 しかし何はともあれ、店主の浦原がいなくては何も売ることが出来ない。 ゆえにテッサイがその彼を起こしに行こうとした時、なんとも間延びした声が掛けられた。 「ザーンネンでしたー。今日はもう起きてるよンv」 欠伸をしつつ店の奥から現れたのは店主・浦原喜助。 目をこすりつつ店の従業員三人に朝の挨拶を、 ルキアには「イラッシャイマセ。」と言って、カラコロと下駄を鳴らして歩む。 「ちょーど昨日新しいのを尸魂界から仕入れてきたトコっスよ。 さ・今日は何をお求めで?」 ルキアは記換神機のスペア燃料を1本と内魄固定剤を60本注文。 「お支払いはカードで?」 そう問う浦原にルキアは「いや、コレだ。」と言い、携帯電話を差し出した。 今まで倒してきた虚にかけられていた賞金―――追加給金で支払うためだ。 「フィッシュボーンD、追加給金0。ヘキサポダス、追加給金0。アシッドワイヤー、追加給金0――・・・」 浦原が虚たちに掛けられた賞金を調べて行く。 どいつもこいつも小物だと言う中、ある一匹に目がとまった。 「お。こいつは中々じゃないっスか?シューリーカー、追加給金5000。」 シューリーカー。一護に倒されるまで死神を二人も喰った虚である。 「へ――・・・。朽木サンから力をもらったって言う少年・・・確か黒崎サンでしたっけ? その子、結構やるみたいっスね。」 浦原の言葉にルキアは肩をすくめる。 「まあな。そうでないと私が困る。」 「ハハ・・・そうっスね。」 浦原は知らない。 ルキアの力の喪失が、一護にその力を渡した為ではないという事を。 彼女は一護との約束を守るため、浦原には自分の力を彼に渡したと言ってあるのだ。 「そういえば先刻も言いましたけど、アチラさんから新しいものが届いていましてね? 朽木サンはウチのお得意様ですから、今回は特別にお試し・なんてどうっスか?」 「お試し?一体何なのだ?」 はっきりと言わない浦原にルキアが訝むなか、浦原は「ウルルー!持ってきてーv」と声をかける。 ウルルが布に包まれた片手に収まる程度のものを持ってくると、浦原はそれを受け取り、 「ソウル*キャンディ・・・つまり義魂丸ですよン。代わりとなる魂の性格が新しくなったそうで・・・。 朽木さんのかわりに働いてる死神君にいいんじゃないっスか?」 そう言って、ルキアにそれを差し出す。 (一護は自分で死神になれるのだが・・・ここで断るのも不自然であろう。) ルキアはそう思い、義魂丸を受け取る。 「すまぬな。遠慮なく貰っておこう。・・・では。失礼する。」 「またの御越しを。」 そうしてルキアは浦原商店を後にした。 |