D.C.―――da capo
その意味は『初めに戻る』 「・・・・・・え?」 目に入ったその光景に俺は唖然とした。 天井の四角い電灯に照らされた部屋。 引き出しつきの棚、窓際のベッド。 台の上に乗せたテレビとその反対側にある勉強机。 ここは――― 「俺の・・・部屋?」 現世にある、黒崎家の俺の・・・黒崎一護の部屋。 どうして俺はこんな所にいるんだ? 思い出せ! 確か俺は・・・・・・・・・ 「っ・・・」 息を呑む。 最後の記憶は、あの人物の台詞だった。 "旅禍の少年。人間にしては、君は実に面白かった" 翻る白い羽織。 その背の「五」という黒い文字。 見下す瞳。 そして、閉じてゆく俺の視界。 ―――藍染惣右介。 「・・・なんで、こんなトコにいるんだよ。俺は、俺は・・・」 ルキアを助けるために尸魂界へ行って、いろんな人々と出会って。 そして藍染に斬られて。 "崩玉"を奪われて。 どうしようもない悔しさとか悲しさとか、そういうものに唇を噛んで。 なのに。それなのに――― ここは俺の自室。 尸魂界ではなく現世だ。 身に纏う服は空座高校の男子冬用制服で、前髪が記憶よりも幾分短くなっている。 まさか・・・? いや、そんなことあるはずがない。 嫌な予感に汗が一筋頬を伝い、俺は必死で頭に浮かんだ予想を消し去ろうとする。 その時、視界の端を横切る黒い影が――― 「なっ!・・・黒揚羽・・・!?」 ヒラヒラと部屋の中を舞うのは漆黒の羽を持った黒い揚羽蝶。 強まる、嫌な予感。 より強固になっていく、俺の予想。 腕は下ろしたまま、ぎゅっと拳を握った。 そして、"あの時"と同じように机の方へと視線をやる。 いたのは、小柄な人影。 漆黒の着物――死覇装を纏い、腰には剣・・・斬魄刀だ。 肩よりも少し長く伸びた黒髪がその人物の動きにあわせてふわりと揺れる。 ルキア―――・・・! 心の中でだけ、その名を叫んだ。 護られて、助けようとして。 結局、悲しい思いばかりさせてしまった・・・俺の運命を変えた人。 その人が、今、俺の目の前に。 記憶と寸分たがわぬ情景に混乱と悲しみと、そして幾ばくかの喜びが渦巻く。 これはなんだ――? 俺に、何をしろと言うのだ。 そうして、繰り返される運命が始まった。 |